「使っていた車いすを一緒に棺に入れてあげたい…」ヨークシャーテリアの葬儀で飼い主の願いを住職が断ったワケとは
環境省が公開しているパンフレット「ペットの終活ノート」によると、犬の平均寿命は約14.6歳だそう。いつかはやってくる愛犬とのお別れをどのように受けとめればよいのでしょうか。今回は、愛知県岡崎市にある圓福寺住職の小島雅道さんが、ペット供養の際に経験したエピソードとともに、愛犬の最後に私たちができることを紹介します。小島さんは、「車いすのワンちゃんの葬儀をしたこともある」そうで――。 【書影】大切な家族とのお別れを、どう受けとめてどう生きていけばいいのか――。小島雅道 『愛犬が最後にくれた「ありがとう」』 * * * * * * * ◆あの世に車いすはいらない 車いすのワンちゃんの葬儀をしたこともあります。ヨークシャーテリアの18歳のワンちゃんで、とても長生きをしてくれました。 後ろ足に二輪の車がついているタイプの車いすです。正確にいうと、後ろ足用の歩行器のようなものでしょうか。 そのワンちゃんは散歩の途中で交通事故に遭って、後ろ足を失い、車いすになってしまったそうです。それでもこの子は生きたのです。 飼い主さんは自分の不注意のせいだと自分を責めた時期もあったそうですが、足を失っても生き続けてくれているこの子を見て、元気づけられたのだといいます。 普通なら死んでしまうような事故に遭ったにもかかわらず、見事に生き抜いたのです。 足を失っても、どんな状態になっても生きる子は生きるのだということを、この子からも教えてもらいました。
◆出会えたことの尊さ 長生きといえば、今まで見送らせていただいたワンちゃんでもっとも長生きだったのが25歳の、これもまたヨークシャーテリアでした。 どの獣医さんに聞いても、「日本一の長老犬ではないか」と言われたそうです。 この子は白内障になっていて、目はほとんど見えなかったようです。そして、歯も全部抜けていました。ですから、もうボロボロの状態です。 最後の2年間は、ほぼ寝たきりで、立ち上がることもできない状態。飼い主さんもお世話が大変だったと思います。 「それでもこんなに長く生きてくれたのがありがたい」「素晴らしい子に出会えた」と飼い主さんはしみじみとおっしゃっていました。 何が申し上げたいかというと、ワンちゃんや猫ちゃんというのは、早く亡くなったらそれはもちろん悲しいけれど、長生きをしてくれても、思い出がたくさんあるだけにとても悲しいということです。それだけ長い時間を共に過ごしたのですから当然です。 それでも、一緒にいる時間が短くても長くても、この子と出会えたことに対する感謝と、出会えたことの尊さは同じだということをお伝えしています。
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