幻となった「逆転の報徳」 点差開き、好機に焦り センバツ
◇センバツ高校野球最終日(1日)決勝 ○山梨学院7―3報徳学園(兵庫)● 力のない飛球が三塁手のグラブに収まると、甲子園を大きなため息が包んだ。ほぼ同時に、報徳学園の名物応援歌「アゲアゲホイホイ」の大合唱が終わった。終盤、一瞬だけ顔をのぞかせた「逆転の報徳」は幻となって消えた。 【山梨学院vs報徳学園の熱戦を写真で】 5点を追う八回。1、2番の連打で無死一、二塁の好機を作った。さあ、ここからだ、という期待感が球場を覆う。だが、3番・堀柊那は山梨学院の右腕・林謙吾の初球の123キロ直球を快打できず、併殺崩れの二ゴロ。4番・石野蓮授も128キロ直球を芯で捉えられず、同じく併殺崩れの一ゴロ。この間に1点を返すも、押せ押せムードはしぼんで、続く打者が三邪飛に倒れた。 「(相手は)気持ちのこもった真っすぐが来ていた。外の直球を振り切れなかった」と堀が言えば、石野は「自分が、自分が、となって体が開いてしまった。もっと冷静になれば結果は変わったかなと思う」。終盤で点差は5点。激戦を制してきたとはいえ、焦りは隠せなかった。 さらに、相手右腕は「球速以上に伸びがあり、押されてしまった」(石野)。相手バッテリーにイニングごとに配球を変えられ、狙い球を絞りきれなかったのも攻略できなかった要因だ。 ただ、ここまでの勝ち上がりは目を見張るものがあった。3回戦は東海王者の東邦(愛知)、準々決勝は昨夏の覇者・仙台育英(宮城)を相手に2戦連続タイブレークでサヨナラ勝ちし、準決勝は昨秋の近畿大会決勝で敗れた前回王者・大阪桐蔭を相手に5点差をはね返しての劇的勝利。いかなる劣勢でも、選手たち自身が映画のタイトルから取って決めた合言葉を唱えて、心を落ち着かせた。諦めない姿は「逆転の報徳」が復活した証しだった。 栄冠にはあと一歩届かなかったが、大角健二監督は「(敗戦は)夏に向けて、まだまだやらないといけないなという薬になった」と強調し、試合後に涙を流した石野は「このままじゃ勝てない」と振り絞った。 「良薬は口に苦し」。昨秋と同様、今度はこの負けを成長のきっかけとする。【大東祐紀】