WBC組5人の先発明暗はなぜ生まれたのか
WBCに出場した5投手が4日、揃って先発。セ・リーグでは、巨人の菅野智之、阪神の藤浪晋太郎の2人、パ・リーグでは、ソフトバンクの千賀滉大、楽天の則本昴大、ロッテの石川歩の3人がマウンドに上がり千賀と則本は直接対決。結果、則本と菅野の2人だけが勝ち投手となり、残り3人に負けがついた。 明暗を分けたのは千賀と則本のマッチアップだった。則本は6回を5安打8奪三振1失点と力投したが、千賀は4回7失点でKO降板した。自己最多失点である。 「千賀がいいピッチングをしていたので我慢強くいこうと思った」(則本) 「今日は投手戦だと思いマウンドに立った。こんな結果になり、自分に情けないですし、野手の皆さんにも申し訳ない」(千賀) 2人のコメントを聞けば、見えない心理戦が2人の中にあったことがわかる。 則本は、WBCでは小久保監督と権藤投手コーチの連携不足から起きた不可解な投手起用の犠牲となり、2次ラウンドのオランダ戦では突然、抑え起用され結果を残せなかった。以降、事実上の“戦力外”とされ、忸怩たる思いでWBCを終え、この日の先発マウンドでは鬱憤をぶつけるかのような気迫に満ち溢れていた。 一方の千賀は2次ラウンドのイスラエル戦、準決勝のアメリカ戦で好投して、メジャースカウトの間でもその名が知られるほど、一気に知名度が上がった。千賀は千賀で大きな自信を抱き先発マウンドに立っていた。 則本は立ち上がりに一死二塁のピンチを迎えたが、柳田を力でねじふせて投ゴロ、同じく侍戦士の内川には鋭いスライダーを落としスイングアウト。圧巻だったのは3回。無死一塁からキューバで4番を打ったデスパイネをストレートで見逃し三振。松田もストレートで押して三振。6回に制球が乱れて1点を失ったが、WBCでの個人的な無念を晴らすピッチングをした。 では、7失点の千賀が悪かったのか? と言えば、そうではない。先制点は、お化けフォークを後ろに逸らした味方のミス(記録は暴投)。ビッグイニングとなった4回も記録はヒットとなったが、嶋のライトへの打球を上林が落球していた。これがなければ茂木の3ランはなかった。不運に尽きる。 ロッテの石川も負け投手にはなったが、打率6割台だった大谷をフルカウントから伝家の宝刀、シンカーでスイングアウトの三振に取るなど、5回を2失点(自責は1)にまとめてゲームは作った。 セ・リーグに目を向けると、WBCの準決勝でメジャーのスター軍団をそろえたアメリカ打線を1失点に抑えた巨人・菅野の安定感が光った。対横浜DeNA戦で7回以外に三者凡退は一度もなく、毎回のように走者を出すなど、やはりWBCの疲れと、中12日調整の難しさなどから調子自体は決して良くなかった。だが、要所で傷口を広げなかった。侍の4番打者、筒香は外の低めにボールを動かしてノーヒットに抑えた。 「やっと始まったかという感じ。今永君も気持ちが入っていたし、彼がマウンドを降りるまではマウンドを守らねばならないと思った。今までやってきたことが生きた。なんとか粘れてよかった」 8回に大量の勝ち越し点をもらった菅野はベンチで喜びを爆発させていた。 ここまでの4人は、勝ち負けはついたが、WBCの悪い方の影響をそこまでは受けず、NPBのマウンドに復帰した。問題はヤクルト戦に先発して負け投手となった藤浪である。