【試乗】タイヤの重さを意識することは稀だけど「この軽量化」は確かに効果あり! 静かで乗り心地がよく運動性も高いブリヂストンの新レグノ「GR-X III」の懐の深さに感動
タイヤに求められるさまざまな要素を高次元でバランス
「タイヤの軽さ」を意識することは少なかろうと思う。 タイヤが求められる性能はさまざまである。乗り心地、静粛性、耐摩耗性、操縦性、グリップ性能。そのグリップにもドライ路面とウエット路面での高さが期待される。クルマと路面の唯一の接点であるタイヤには、走る止まる曲がるの三要素が委ねられているのだ。 【写真】REGNO GR-XⅢのトレッドパターン ただ、硬い柔らかいといった剛性感を意識することはあっても、軽い重いを感じることは稀だ。タイヤの重量は、求められる三要素と深く関係するのである。それを新型ブリヂストン「レグノGR-X III」が教えてくれたような気がした。 レグノはブリヂストンのプレミアムブランドであり、静粛性や乗り心地でとくに定評がある。俊敏なフットワークや頼もしいグリップ性能はポテンザブランドに譲り、ひたすら高級なフィーリーングを突き詰めている。その性能をさらに進化させる手法として、ブリヂストンはとくにタイヤの軽量化を採用したのだ。 タイヤのサイドウォールのゴム厚を薄くした。それにより破断の原因になるポイントをずらすことで解決している。構造体である金属ワイヤー層を2枚重ねから1枚重ねに間引きした。じつはゴムの質量は意外に嵩む。金属ももちろん軽い素材ではない。そのゴムと金属の総量を減らしたことで、サイズによっては約1kgの軽量化を達成しているというから驚きである。 そのほか、トレッドデザインやゴム材の変更など、改良ポイントは多岐に及んでいることで、静粛性が高まった。ブリヂストンの資料によると、荒れた路面での静粛性がGR-X II比で12%、スムースな路面で8%低減しているという。 デジタルな静粛性の差を判断することはできなかったが、音質がマイルドに感じたのは事実。じつは進化させたという乗り心地に関しても、路面に横たわる縄を乗り越えるような小さな段差に対しても、マイルドに感じたのである。
プレミアムタイヤというものを意識させてくれるレグノGR-X III
ハンドリングにも貢献している。ハンドルにしがみつかなければ身体が投げ出されるような激しいスラロームでも、軽快なリズムを刻むことができた。絶対的なグリップ力云々ではなく、リニアな操縦性が心地いい。 スポーツタイヤのようなドキドキするような切れ味ではもちろんないが、どこまで追い込んでも破綻することがなさそうな反応の速さがある。 それはリヤのスタビリティを高めているようで、その点での安心感が強い。 一方、タイヤの重量は乗り心地を稼ぐ手立てのひとつでもある。ゴムの肉厚が振動の吸収材にとして機能することもある。タイヤの軽量化はバネ下重量を抑えることでもありながら、不整路面では多少のバイブレーションを感じたのはそれが理由なのかもしれない。 ともあれ、新型レグノGR-X IIIはプレミアムブランドとしての地位を確立しようとしている。タイヤの性能だけではなく、環境性能にも目が向けられている。ゴムや金属の節約に貢献する軽量化は、サステナビリティやトレーサビリティを満たすのである。 プレミアムタイヤとは、単純な性能だけではなく、存在そのものの価値のことを指すのかもしれない。レグノGR-X IIIはそれを意識させてくれた。
木下隆之