石破首相に課せられる「生活防衛」と「国家防衛」の両立 現役世代は我慢の限界超えているのに…弱すぎる政府の国民負担回避の姿勢
【令和の岐路 10・27衆院選】 世論調査で、衆院選(27日投開票)の政策的課題を尋ねると、「政治とカネ」の問題や、物価高対策、社会保障に話題が集まる。一方、台湾情勢が緊迫する割に、関心が薄れるのが外交・安全保障。中でも、われわれ庶民の懐事情に直結するのが防衛増税の問題だ。 【表でみる】夕刊フジが作成した「落選危機にある大物・著名候補21人のリスト」 ロシアのウクライナ侵攻を機に、岸田文雄前政権は例年5兆円規模だった防衛費を大幅に拡充した。2027年度までに43兆円もの巨費を投下し、財源は所得税・法人税、たばこ税を増税して確保する方針を決めた。 だが、ウクライナ情勢は長らくデフレにあえいでいた日本経済を一転物価高に直面させ、生活苦の国民が続出した。 連載第3回で述べた「社会保障の世代間格差への不満」が一気に噴出したのは、物価高と社会保険料負担増で手取りが減った現役世代の我慢が限界を超えたからだ。もちろん、年金受給者とて物価高に苦しむ。 そんななかで、安易に国民負担をさらに求めることへの違和感は大きいはずだが、石破茂首相は公示日(15日)のNHK番組で、防衛力強化の財源を確保するため、「負担をいただくことは当然考えていかねばならない」と述べ、年末の税制改正の議論で決着させる意向を示した。 確かに、極東情勢は緊迫の度を増している。公示前日、中国が台湾を取り囲んで大規模な軍事演習を実施した。ただ、国民の生活苦が限界に近づくなか、負担を極力回避するかたちでの防衛力強化が求められる。 この点、政府与党の負担回避の姿勢が弱すぎる。 当初、甘利明元幹事長や、萩生田光一政調会長(当時)らの積極財政派主導で、NTT株売却を検討するも、野田聖子元総務相ら〝通信族〟議員の反発で頓挫した。その後、萩生田氏が政治資金の不記載問題で表舞台から遠ざかり、積極財政派の多い旧安倍派議員は石破体制で冷遇された。総裁選で「増税ゼロ」を掲げた茂木敏充幹事長(同)も非主流派に転じた。 さらに、9月26日付の夕刊フジの拙稿で述べたように、国内防衛産業の弱体化で米国製兵器への依存度が増すなど、防衛装備の高コスト構造に政治がメスを入れる気配もない。