「橋にも寿命がある」 高速道路リニューアル 開通から最大規模の工事の現場に密着…技術が大幅に進歩 かつては1か月かかった作業が今では20分で “働き方改革”の波が現場にも
北海道ならではの過酷な気象条件も
今回の工事対象の千歳川大橋を含む札幌・岩見沢間は1983年に開通。交通量は当時と比べ6倍に増えています。さらに、北海道ならではの過酷な状況も、床版の傷みに密接に関係しているのです。 「積雪寒冷地で、冬場は塩分を多く含んだ凍結防止剤をまく。本州と比べ、北海道の道路は非常に過酷な状況で使われている」(北海道大学 林川 名誉教授)
冬に散布する凍結防止剤は、海水の6倍にも及ぶ塩分濃度になっています。アスファルトのひび割れから床版に塩分が浸透し腐食が進んでしまい、雪が積もらない地域と比べ損傷が激しくなるのです。 これまではその都度手当てしてきましたが、今回、床版そのものを取り替える抜本的な工事を行いました。
働き方改革が工事にも影響
約2か月間にわたる対面通行での工事。利用者からは、こんな声も。 「夜間など、車通りが少ない時にやった方がいい気がする」(高速道路の利用者) 工事の際に通行車線に破片が飛ぶなどすると大事故につながりかねないため、細心の注意を払わねばなりません。 交通量の少ない夜間に作業をすれば、事故の心配や利用者への影響も軽減できますが、こんな背景も。 「いま建設業界でも働き方改革が進んでいる。この工事現場は残業なしで週休2日で工事を進めている」(NEXCO東日本 三膳さん) 2024年4月から、建設業でも時間外労働の規制が強化されました。長時間労働是正のため週休2日を確保できる工期の設定が行われています。
働き方改革を進めるため、さまざまな技術の進歩が後押ししています。 この日は、新しい床版の設置作業。33メートルの区間に1枚約17トンの床版を11枚設置します。 かつては現場でコンクリートを流し込んでいて、固まるまで約1か月かかりました。それが、現在ではどれくらいの時間が必要かというと。 「1枚設置するのに大体20分。昔は現場でコンクリートを打って床版を作っていたが、今は工場で作って持ってきている」(NEXCO東日本 三膳さん) あらかじめ工場で作った床版を輸送することで、工期や労働時間の短縮を可能にしたのです。 性能も進化しました。新しいものは耐久性と防水性が向上し、天候に左右されることなく同じ品質で製造できるメリットもあります。
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