岸田首相、国賓待遇の訪米で得た「本当の成果」と求められる「見返り」
国賓待遇の岸田首相
日米首脳会談や日米比首脳会談などのイベントをこなし、14日午後に帰国した岸田文雄首相。様々な形で報じられたが、日本にとっての「本当の成果」とはなんだったのか。改めて検証しよう。 【写真】日米で「給料格差」がつきすぎてしまったヤバい仕事の分野 今回、岸田首相は「国賓待遇」だった。 国賓待遇とは、政府が公式に招待する外国賓客のうち、最も格式高く接遇することをいう。アメリカの場合であれば、大統領が安全保障や経済などで重視する国の首脳を最大級の格式で迎えることである。これまでのバイデン政権下での国賓待遇として、フランスのマクロン大統領、韓国の尹大統領、インドのモディ首相、オーストラリアのアルバニージー首相の前例があり、岸田首相で5人目だ。これまでの日本の首相では、1987年5月の中曽根康弘首相、1999年5月の小渕恵三首相、2006年6月の小泉純一郎首相、2015年5月の安倍晋三首相が国賓待遇で訪米しており、今回の岸田首相は安倍首相以来9年ぶりで5人目である。それだけに、日本側の気合いは十分だった。外務省も綿密な準備の上で今回の訪米が行われた。岸田首相は、首脳会談後の記者会見で、「同盟国の中国」と言ってしまうという、あってはいけないミスがあったものの、議会演説や晩餐会ではユーモアを交えた英語スピーチで、評判はよかった。もともと、バイデン大統領も岸田首相も、事務方で積み上げて首脳会談を行うタイプなので、サプライズは期待できないが、その一方手堅く演出や見せ方はまずまずだった。
日本が得たものと「見返り」
今回の日米首脳会談では、安全保障に力点が置かれていた。中国の報道官が激しく反発する一方で、台湾からは称賛の声が出た。これだけで、総論としては今回の日米首脳会談には意味があったといってもいい。中身を見ていくと、日本側が得た要件として、(1)マイクロソフト社が日本に約4400億円の投資表明、(2)日本人宇宙飛行士が米国人以外で初めて月面着陸できる機会提供、(3)尖閣諸島について日米安全保障条約第5条の適用対象と明言、(4)北朝鮮との会談を望む岸田総理の姿勢を支持、といった4項目が主に挙げられていた。 もっとも、日本がタダでこれらを得られるわけはない。筆者はそれらの「見返り」として、三つほどの要件を考えていた。 一つは、ウクライナについて日本が経済支援することだ。バイデン政権の軍事支援が議会で阻まれている中、日本が非軍事の支援を行い、アメリカを間接的に助けるというもの。二つ目は、日本が北朝鮮との関係正常化に乗り出すことにより、極東アジアの安全保障でのアメリカの負担を減らすことだ。ただし、これには拉致問題の完全解決が前提かつ必要条件である。北朝鮮に対し、拉致問題と関係正常化は前者の完全解決がまず必要だが、外務省の中には、関係正常化に前のめりの人もいる。岸田首相は拉致問題にこれまで関わって来なかったので、拉致問題の完全解決を置き去りにして、数名の拉致被害者帰国という成果のみで関係正常化に走る可能性もあるわけだ。