「川崎病」の新事実、暑さで発症リスク上昇 知っておくべき“6つの診断基準”とは
川崎病とは?
編集部: 今回紹介した研究テーマにもなった川崎病について教えてください。 山田先生: 川崎病は、1967年に小児科の川崎富作氏が最初に報告した病気です。4歳以下の乳幼児に多く発症し、全身の血管に炎症がおきることで様々な症状が出てきます。「高熱」「眼球結膜充血」「口唇の紅潮やいちご舌」「体の発疹・赤み」「手足の腫れ」「首のリンパ節の腫れ」の6つの症状のうち、5つ以上の症状があれば川崎病と診断されます。また、小さなお子さんではBCGを注射した場所が紅く腫れ上がることも、特徴的な症状の1つです。 川崎病の原因は未だに特定されていません。川崎病にかかった子どもの約3%に、瘤(こぶ)が血管にできることが知られています。もし、心臓に酸素と栄養を運ぶ役目を持つ冠動脈に瘤ができると、回復期に血栓ができて突然死したり、将来的に冠動脈が狭くなって狭心症や心筋梗塞を起こしたりする可能性もあります。ある程度の冠動脈障害を残してしまった場合は、心筋梗塞を予防するために、一生血液が固まりにくい薬を飲み続ける必要があります。
今回の研究内容への受け止めは?
編集部: 東京科学大学の研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。 山田先生: 今回の研究は、気温の上昇が川崎病の発症リスクに影響を与える可能性を示した重要な報告です。1970年に始まった川崎病の全国調査は、昨年秋発表の第27回調査で終了し、季節との関連は月別患者数データで一貫して冬(1月)が最多、夏にやや増加するパターンが従来から知られていました。しかし、コロナ禍の2020年からこの形が崩れ、2022年に8月の患者数が初めて1月を超える現象が見出されました。夏場が川崎病の主舞台になる可能性が出てきたこのタイミングで、月別よりもっと細かい1日平均気温と川崎病入院リスクの関連を分析し、気温の上昇が川崎病の発症リスクに影響を与える可能性を示したのは、大変興味深い研究結果と言えるでしょう。 川崎病の発症は、いまだに子どもたちの主要な健康問題の1つなので、私たち治療者側にとってはもちろん、原因の追求や行政を含めた何らかの予防策へのヒントにつながるのかもしれません。今後、高い気温が川崎病の入院に関連するメカニズムの解明が進むことを期待します。