苦しむ山口U-18、個の成長でプリンス残留目指す
レノファ山口FC U-18は、残留争いの中でもがきながらも少しずつ歩みを進めている。昨季は初めて昇格して1年目だったプリンスリーグ中国で5位と健闘したが、今季は3年生が7人しかいない世代でもあり、12試合を終えて1勝3分8敗の最下位と苦しんでいる。8月末の第11節で初勝利を挙げた翌週、9月7日の第12節は、立正大淞南高を相手に後半45+6分で同点に追いつく健闘を見せたが、直後に与えたPKを決められて2-3で敗戦。勝点を取りこぼし、厳しい現実を突きつけられた。 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 相手ペースで進んだ前半の終了間際、DF井平幸輝(3年)が蹴った左CKをFW寳迫優弥(1年)が合わせて先制。後半に逆転を許したが、45+6分、相手がクリアし損ねた場面を見逃さず、井平が利き足ではない右足で豪快にたたき込んで同点とした。苦しい試合から勝点を持って帰れると思ったが、喜びは束の間だった。相手がカウンター気味にサイドアタックからクロスを入れたところで、相手FWに前に入られ、接触プレーでPKの判定。これを決められ、後半45+7分に決勝点を奪われて敗戦という悔しい結果に終わった。 就任3年目を迎えた小林慎二監督は「今シーズンは、中心選手がいない中で、いかに一つにまとまるか。苦しい状況が続いているが、今日のゲームは戦う姿勢が出ていたし、最後まで諦めずに一時は同点に追いついた。選手は頑張った。それでも勝負の世界だから、負けは負け。きちんと反省して次につなげようと思う」と前進した点は称えつつ、勝利へのこだわりを求め続ける姿勢を示した。昨季までは、トップ昇格を果たしたFW末永透瑛ら力のある主軸がいたが、今季は下級生の起用も多い状況。チームの総合力が問われている。 夏は、遠征試合だけでなく、強化合宿も敢行。走り込みなどを含む1日3部練習を行い、個の能力の底上げを図った。主将を務めるDF井平は「夏でいろいろな経験をして、ちょっとずつでも強くなってきているのかなと思う。メンタルやフィジカルなど、夏の暑い中でやってきた。ただ、自分たちは、チーム力で戦っているけど、もっと、一人ひとりの個が強くなれば、もっと良いチームになれるんじゃないかと思っている」と個人の見直しを重視。自身もリーダーシップやプレーで違いを見せる部分を追い求めたいと話した。 クラブとしても、プロクラブの育成組織として個の能力は最重要課題と捉えている。小林監督は「チームを強くするところではなく、目標はプロ選手の輩出。そこに向けて選手をどう育てるのか。試合の結果も、プリンスリーグに残ることも大事だけど、必要なプレーを学ぶためにポジションを変えている部分もある」と話した。 昨季の主力だったFW大宮健希(現産業能率大)をCB起用していたのも一つの例だ。立正大淞南戦では、6月にFWからCBへコンバートしているDF鎌田虎之介(2年)を終盤にウイングで起用。「試合に出てチームのためになるなら、どのポジションでもいい。全力を尽くしたい」と話した鎌田は、CBでは見せなかったドリブルで攻撃の起点となり、チームに変化をもたらした。最終ラインで周囲の状況を見ながら運べる能力や、当たり負けしない強さが身につけば、アタッカーに戻ったときには、以前より破壊力を増すはずだ。 中盤でリンクマンとして活躍したMF吉田涼真(1年)ら1年生も、少しずつ試合に慣れてきた。先制点を決めたFW寳迫は「リーグ初得点だったけど、勝利につながらず悔しい。スピードは同じくらいにはできる。でも、まだ当たり負けが多く、ボールを失ってピンチになる場面がある。もっと戦える選手になりたい。学年関係なくチームに貢献できないとトップに昇格できる選手になれない」と頼れるエースへの成長に意欲を示した。個の成長の足し算で、プリンス残留へ。まずは、最下位脱出を目指す。 (取材・文 平野貴也)