広島ファンが巨人・大竹にブーイングを浴びせなかった理由
マツダスタジアムに「ジャイアンツのピッチャー大竹」のアナウンスがあってもブーイングは、起こらなかった。しかし、逆に拍手も「お帰りなさい!」の暖かい声もない。刺激的なサインカードなどが出されることはなかった。最近話題のカープ女子たちも、静かなもの。端から、彼女たちも、キャラクター的にいいオジサンのイメージで、イケメンタイプではない大竹への興味も薄かったようである。 ■FA移籍の選手へのブーイングは新井だけ 独立採算の経営形態から年俸のアップに限界があり、これまで他球団からのFAの草狩場となっているのが、カープの実情で、古くは、川口和久、江藤智が巨人へ、金本知憲、新井貴浩が阪神、そしてまた大竹が巨人へとFAで移籍した。私は、これまで、彼らの移籍後の広島凱旋となる試合をずっと取材してきたが、広島のファンも、それらの球団事情を理解しているのか、たいていの場合、暖かく迎え入れ、大ブーイングの洗礼を浴びせたのは、阪神の新井の登場のときだけだった。 金本は「俺のときでさえ、拍手はあった。新井は、よほど嫌われるようなことをしたんでしょう」と冗談交じりに言っていたが、新井の場合は、涙の退団会見などをした経緯があって、「泣くくらいなら広島に残れよ」というようなファンの複雑な感情があったのかもしれない。 ■故障から復活した苦労人で素朴な人柄の大竹 大竹の素朴は人柄は、ファンからも好感を持たれていた。また右肩の故障に悩み2010年、2011年の2シーズンは、まともに投げれず、そういう地獄から復活してきたという苦労人のストーリーをファンも知っていて、この日は、ブーイングの洗礼を浴びせることはなかったのかもしれない。 だが、試合となると話は別である。チームメイトからも好かれていたが、多くの選手は「残留するんでしょう」と考えていた。それだけに裏切られた思いもある。長所も短所も知り尽くした相手。問題は、シュートにどう対応するか。そこを見極めながら早いカウントからでも好球必打が大竹攻略に基本である。それでも5回までは、エルドレッドの一発だけに抑え込まれていた。長所と短所を知っているのは大竹も同じだ。しかも、二回には大竹の10勝の穴を埋めるために起用されているルーキーの九里が、その大竹にタイムリーまで打たれた。