<磐城・センバツへの軌跡>Play Hard プロトレーナー須田さん、選手の成長に手応え 「まだまだ強くなる」期待 /福島
第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する磐城ナインを指導してきたプロトレーナーの須田和人さん(54)は、選手たちの成長に手応えを感じてきた。プロ野球選手や五輪代表選手も担当してきた須田さんの厳しい指導に、選手たちは真剣に向き合う。「まだまだ強くなれる」。須田さんの期待は膨らむ。【磯貝映奈】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 「痛い。つりそう!」「これは無理」。顔をゆがめた選手たちが一斉に叫び出す。「日常生活でほとんど使わないけど、動きをよく見て。投げる時、打つ時、こんなふうに筋肉を使うでしょ」。26日午前、磐城高グラウンド。二の腕の裏を鍛えるトレーニングを、自らも体を動かしながら説明する須田さんの話に、選手たちは食い入るような表情で耳を傾け、体を追い込んだ。 須田さんは東海大大学院でトレーニングを研究した後、約10年間、千葉県の高校で体育教員や陸上部顧問を務めた。その後、スポーツトレーナーとしてトップ選手らを担当。木村保監督とは10年以上の付き合いで、木村監督が就任した2015年から月1回、磐城ナインを指導している。 自主性を重んじ、選手たちが話し合って練習メニューを決める磐城高野球部で、厳しく指導する須田さんは選手たちが恐れる存在だ。木村監督も「体だけでなく、メンタルも相当鍛えてもらっている。選手たちにとっては、嫌な日かもしれないけど」と笑う。 須田さんが最も厳しく指導してきたのは「声を出すこと」だ。あいさつや返事だけではなく、チーム内で仲間に指示を出し合ったり、叱咤(しった)激励し合うこと。「1人だけができても仕方ない。できる人ができない人に教えてあげればチーム全体が良くなる」とその意味を説明する。 26日も全ての選手が須田さんの指示を理解できてないうちに、一部の選手がメニューに取り組み始め、須田さんが「何で教えてあげなかったんだ」と注意する場面があった。次のメニューからは、できていない部員に「ほら足上げて!」「最後までしっかりやれ」と声を掛け合うようになった。 「磐城の子たちは、志が高く、私の指示をちゃんと理解して動こうとする姿勢がある」と評価する。特に現在の2年生は、入学当初は須田さんに直接質問することは少なかったが、次第にトレーニングに真剣に向き合い、積極的に質問するようになった。「この代は活躍するんじゃないか」。須田さんの予想通り、ナインはセンバツ出場を決めた。 26日のトレーニング後、グラウンドでは「きつかった」「体が重い」などと、あちこちからつらそうな声が聞こえてきた。それでも間を置かずにバットを振り、キャッチボールを始めた選手たちの姿に、須田さんは「まだまだ強くなれるな」とつぶやいて笑った。