「やり切りました」″熱男″ 松田宣浩に直撃「お世話になったチームへの恩返しの気持ちはある?」
「引退試合のスピーチでは、ずっと涙をこらえてました(笑)」
「もともと40歳まで現役でいることが目標でした。今年5月、ジャイアンツのユニフォームを着て30代を終えたとき、今まで経験したことがなかったような達成感と充実感を覚えたんです。毎年何人もの選手がユニフォームを脱ぐ。そのうちの少なくない人数が『もっとできたんじゃないか』という悔いを残して引退する。でも、僕にはそれが全くありません。大好きな野球にこんなに長い間のめり込めた自分を褒めてあげたいです。やり切りました。もう1年やってくれって言われても、『お腹いっぱいだからもういいや』って答えていたと思います(笑)」 【画像】目力がハンパない…!今も"熱い闘志"みなぎる「松田宣浩」 誰よりも全力、いつもユニフォームは泥だらけ。そんなスタイルを貫き通してきた″熱男″はこの日、綺麗に仕立てられた濃紺のスーツを身に纏(まと)い、FRIDAY記者の目を真っすぐ見ながら静かに、噛みしめるように自らの野球人生を振り返った。 松田宣浩(40)は’06年、大学生・社会人ドラフトの希望入団枠制度でソフトバンク入り。小久保裕紀(52)の後釜として期待がかかった。 「当時、いちばんキツいって言われていた亜細亜大の練習を辛く感じたことはなかったんですが、ホークスの1年目は苦しかった。体力的な問題ではなくて、レベルの高さを思い知らされてショックやったね。キャンプで最初に対戦した三瀬さん(幸司・47)のストレートを見た時の衝撃たるや……同期入団の本多雄一(39)と『こんな速いの打てんわ』って話したのをよく覚えています」 プロの速球に対応する――。1年目の松田の悩みを解決したのは、当時の二軍監督・秋山幸二(61)の一言だった。 「『バットを寝かそうか』って。僕はそれまでずっと、バットを立てて打っていた。フォームを変えるのには勇気が必要でしたが、その決断ができたことが僕の野球人生の大きなポイントだったと思います」 ルーキーの頃から全力プレーは変わらなかったが、チームのムードメーカーとしての役割は″託された″ものだった。 「初めて全試合出場をした’11年のオフに、メジャー挑戦を決めていた川﨑さん(宗則・42)が『元気に明るくやるのはマッチに任せた!』って言ってくれたんです。あの日、僕はチームのために、″明るい松田宣浩″という役割を全うしようと決意しました」 松田はチームへの貢献を何よりも優先した。だからこそ、「全試合出場」にこだわりを見せた。 「’15~’19年に5年連続で全試合出場することができました。全試合出場を続けるためにずっと同じことをやり続けました。自主トレのメニュー、キャンプでの調整方法、体のケアも全てです。何年何月何日になにをしていたか聞かれたら、ほぼ正確に答えられます。プロ生活で放った301本のホームランも、1832本のヒットも大事な数字ではあるけれど、個人成績の向上は、チームのために試合に出続けることよりずっと下の位置づけです」 昨年オフに巨人への移籍を決断したのも、出場機会を求めてのこと。 「お世話にはなったけれど、ソフトバンクで野球人生を終えたいという気持ちは全くありませんでした。試合に出られるなら、どこへでも行きたかった。当時の原辰徳監督(65)が『君を戦力として考えている』と言ってくれて、素直に嬉しかったです。でも、結果で恩返しができなかったのは申し訳なかった……」 出場機会を求めての移籍だったが、巨人での1年の大半を二軍で過ごした松田。その目に、未来を担う巨人の若武者はどう映ったのだろうか。 「ジャイアンツの選手はみんなスマートに練習する印象ですね。そんな中、浅野翔吾(19)と出会えたのは運命だと思います。21歳離れているけれど、同期入団で、僕も彼も右バッター。ドラ1のエリートでありながら、エネルギッシュに、一生懸命練習している姿を見ていて、本当に楽しかった。未来の巨人を、そして球界を引っ張っていってほしいです。翔吾には、『三拍子じゃダメだよ。走攻守、プラス元気の四拍子揃った選手にならないといけないよ』って伝えました。ホント、メッチャ頑張ってほしい(笑)」 若手への愛情に溢れたその目を見ると、指導者としての″熱男″の姿を期待せずにはいられない。 「ホークスや巨人のユニフォームをもう一度着たいという思いは、常に持っています。それがいつになるか、コーチなのか、監督なのかはまだわからないけれど、お世話になったチームへ恩返しがしたい。今じゃないな、とも思っていますが、日本代表のメンバーとして国を背負うことも大好きだったので、侍ジャパンを率いてみたいという気持ちもあります」 現在は現役時代よりもスケジュールに余裕を持たせ、これまで支えてくれた家族と過ごす時間を増やしているという。 「プロとしてのキャリアはもう終わったので、今は松田宣浩の第2部を面白くするため、妻や息子と作戦会議の日々です。ファンの方には、40代、50代とどんどん変身していく僕の姿を見ていてほしい。期待していてください!」 現役時代よりも落ち着いた語り口の松田だが、その目には変わらず熱い闘志が漲(みなぎ)っていた。″熱男″は必ず帰ってくる。 『FRIDAY』2023年12月8・15日号より
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