《連載:2024衆院選 課題を追う》(4) 子育て支援に格差 自治体間競争、疲弊も
「子どもの遊び場以外にもたくさんの子育て支援があり、物価高の中で本当にありがたい」 雨天の18日、茨城県日立市の子ども向け屋内遊戯施設「Hiタッチらんど・ハレニコ!」に0歳の長男と来場した宮崎風佳さん(29)は笑顔を見せた。 施設は市が2019年に整備した。北関東最大級の規模を誇るが、料金は1時間半で子ども100円、同伴者200円。コロナ禍明けの昨年度は過去最多の13万7000人超が利用した。 市の子育て支援はほかに、小中学校給食無償▽18歳まで医療費実質無料▽第2子以降の保育料無料▽出産祝い金▽産前・産後無料ヘルパー派遣▽ランドセル無料-など多岐にわたる。 まちの活力維持を見据えた人口減少対策として、15年度から特に重点を置いている。20~39歳女性の年間の減少幅は近年300人台と鈍化し、0歳児の7年後の市内定着率は昨年度98.9%と上昇傾向にある。市長公室参事の飛田誠さん(53)は「成果が出つつある」とする。 人口減少が進む中、県内で子育て支援に注力する自治体が増える一方、支援が少ない自治体との格差が出始めている。 小中学校の給食無償化は44市町村のうち36%の16市町が実施。給食費の昨年度1年間の平均月額は、県内の公立小が4766円、公立中が5241円となっている。 また18歳までの医療費実質無料(外来、入院どちらも)は44市町村のうち25%の11市町村が実施。無料化は医療福祉費支給制度(マル福)に加え、自己負担分を自治体が支援することで実現している。 県内在住で元保育士の主婦(36)は「住む所で違いがあるのは不公平」と指摘。自身の住む自治体では、公共施設の建設に比重があるとし、「子どもを遊ばせる所が少ないし、産後ケアも手薄。もっと子育て支援に力を入れてほしい」と話す。 茨城大人文社会科学部准教授で行政学が専門の川島佑介さん(40)は、子育て支援に関し「自治体間の競争が過熱している」と分析。少子高齢化を踏まえ「各自治体は生き残りを迫られている」と強調する。 さらに、財政的に厳しい「体力のない自治体」は、すでに競争で疲弊しているところもあると説明。こうした要因により、自治体間で福祉に大きな格差が出ることは「あってはならない」と懸念を示す。 対策の一つとして「国が主導し、福祉を拡充する必要がある」と指摘。控除の拡大や一律の現金給付などを例に挙げ「所得制限がなく、国全体の枠組みで行う普遍的な取り組みであるべき」と主張する。 県内で子育て支援に取り組む認定NPO法人代表理事の平野弥生さん(46)も「県全体で見れば支援は行き届いていない。地域間格差が子育ての格差につながってはならない」と指摘。 保護者の意見を吸い上げ「国がしっかりメニューを整えてほしい」と、国主導の手厚い支援を求めた。
茨城新聞社