【新旧比較】スズキのSUVはエスクード&S-CROSSからフロンクスにどう飛躍したのか?スタイルからインテリアからまとめて比較!
今年2024年秋発売のフロンクスがスズキホームページでティザー公開され、ひとびとの興味を惹いている。 従来のエスクード、S-CROSSと比べたら、単なる後継車と片付けられない飛躍的進化が見えてきた。 入手できたフロンクスの情報とこれら2車をできるかぎり比較していく。 TEXT:MotorFan編集部 PHOTO:中野幸次/スズキ/MotorFan編集部国内ブランニュー・フロンクスと最終エスクード&S-CROSSを内外比較 【他の写真を見る】フロンクスの、最終エスクード、S-CROSSとの相違点 7月 25日に詳細が公開されたフロンクス(日本仕様)は、インドのマルチ・スズキから輸入されるSUVで、国内スズキラインナップ上の商品としては、最近販売終了になったエスクードの後継になる。 初代、2代目エスクードはラダーフレーム付きのボディをまとい、特に初代はシティランナバウトを謳う割に造りは副変速機付きパートタイム4駆を備えたオフロード志向のクルマだった。3代目はビルトインフレームのモノコックボディ&フルタイム4駆に宗旨替え。スタイリングも都会的になり、「エスクード」と呼ぶのにとまどいを覚えるほどの変わりようを演じた。 生産をマルチ・スズキに移し、インドからの輸入車扱いになったのが先代モデルとなる4代目最終エスクードだ。ついぞフルモノコック化、フルタイム4駆も後輪駆動ベースから前輪駆動ベースに・・・まるで1988年時点からいまのFFベース・モノコックSUV全盛時代を見据えていたかのように、代を進めるごとに少しずつライトSUV色を濃くしてきた。その到達点が4代目で、「起承転結」をまさに地で行く変遷をたどっている。 「結」の後のエスクードをどうするか? 心機一転、スズキはエスクードとSX-4 S-CROSS(以下「S-CROSS」)をインド製フロンクスに1本化、登録車ライトSUVをクロスビーとの2台体制で進める作戦に出た。 というわけで、「フロンクス」そのものはまぎれもなくニューブランドだが、ここでは最終エスクードとS-CROSSを「旧型フロンクス」に位置付け、新旧比較をしていく。 ●サイズ まずサイズ。3車の車両サイズは次のとおりだ。 フロンクスの写真を単体で見ると信じられないのだが、実はサイドから見ても斜めから見ても、いちばん大きそうな見てくれを持つフロンクスがいちばん全長が短い。 実寸が最もワイドなのがS-CROSS。エスクード、フロンクスの順で10mm刻みで痩せているが、全長同様、写真で見る限りはフロンクスがいちばん幅広に見え、全高に至ってはフロンクスがいちばん低い・・・要するに、全長が最も短くても高さが最も低いから寸法差以上にワイドに見えるのだろう。 見落としてはいけないのが3車中いちばん小さい4.8mの最小回転半径だ。これは4mを切る全長と195幅&16インチ径タイヤの合わせ技によるものだ。Uターンに駐車場での切り返し・・・初心者ばかりでなく、ベテランドライバーにだってより小さくまわれるほうがいいに決まっている。たとい1回とて、切り返しがあるなしの違いは大きい。 ●スタイリング 外形デザインを比べると、2015年10月に出た最終エスクードがFFベースのフルモノコックに転じたことで、結局は同じブラットホームを持つ同年2月に先行のS-CROSSにすり寄ることになったため、市場ではエスクードのイメージに霞がかかり、S-CROSSの車両キャラクターもぼやけて見えるようになっていた。デザイン、サイズ、メカニズム・・・両車比べれば違いはわかるものの、いざどちらかを買おうとしたとき、他方に対して注文書にハンコを押させるほどの決定打があるわけでもなく、品揃えにスズキの狙いがいまひとつ理解しかねるところがあった。 フロンクスを見ると、2020年代にうねるSUV市場の波に乗り切れなかったエスクード、エントリーモデルのかさ上げ版(?)にとどまっていたS-CROSS・・・これら2車とはまったく別のクルマに仕立てたかったことがスタイリングからうかがえる。 フロントフェイスは、フードを水平に近づけ、メインのライトは(良し悪しはともかく)バンパー両端に配置。スモールやターンシグナルは水平フード直下に置いている。最近増えた手法だがスズキ車で初だ。 ウエストラインの後ろ上がり、Jの字を描きながらルーフに向かっているクォーターガラスにS-CROSSの名残りがあるし、波打ったリヤピラー下半分がそのままリヤボディに流れる処理は他車や先代スイフトでも用いられている。 リヤ正面では腰高感が目につく。リヤハッチ開口部下端が「何ゆえにこれほどまで?」と思うほど高いところ、細い横1本線のランプは、上下に薄いリヤガラスの倒れ込みと相まって、レンジローバーイヴォークの雰囲気を彷彿させ、サイド視でも後ろ半分に目をやればリヤオーバーハングが極端に短く、サイドガラス上辺が後ろ下がりになっているところもやはりイヴォークを思わせる。ただしルーフラインはイヴォークほど下がっていない。 細かく見ればひとつひとつの要素は他で見覚えのあるものばかりで目新しくはないのだが、スタイリングはエスクードやS-CROSSと比べるとはるかに現代的になっている。フロンクスはクーペSUVを思想にしたようだが、察するにスズキは、国産車でいえばかつてのC-HR、輸入車勢ならイヴォーグが持つスペシャルティ性をフロンクスに求めたのではないか。やはり旧エスクードやS-CROSSから離れたかったのだと思えてならない。 ●インテリア 内装にも同じ印象がある。 最終エスクードにしろS-CROSSにしろ、登場年月がともに2015年ということを考慮しても、他社の同類SUVに比べておとなしいというか、無個性というか・・・必要なものをお定まりの位置に並べましたといわんばかり、意地悪ないい方をすれば、別に自動車のインテリアデザイナーでなくとも思いつきそうな造形でしかなかった。これは主に計器盤(インパネ)についてなのだが、今回のフロンクスは外観同様、見た目の商品性がぐんと向上している。 最終エスクードはT字型、S-CROSSは横基調のインパネだったが、フロンクスはそのどちらにも属していないところがうまい。 もうひとつ、いまなら薄型モニターをセンター上面の更地に生やすか、助手席からセンターにやってきたパッドに立てかけるように固定する例が多いが、フロンクスでは別の手法を採り、メーターから助手席にかけ、なだらかに下がるバイザーの途中とセンター吹出口の間に設けた斜面部に薄型モニターを配している。デザイナーが意図したかどうかはわからないが、その向こうに空間があるように見せかけて視覚的広さ感を表しているように見えるところがひと味ちがうのだ。これは正面から見たときの話で、斜めから見れば2DINユニットのスペースがあるはずだが、見た目の広さ感を出すには有効だと思う。 インパネを見ても室内全体を見ても、SUV的というよりは、そのままスイフト・・・ではなく、次期スイフトスポーツにあてはめてもよさそうな雰囲気で、実際ハンドルやメーター、シフトレバーや空調パネルなどはスイフトから持ってきたようだが、やはりインテリアにもエスクードやS-CROSSから脱却し、スペシャルティのエッセンスを持ち込みたかったことがうかがえる。 ●パワートレーン S-CROSSはガソリン仕様1本だった。いっぽう、旧エスクードはもともと1.6Lのガソリンエンジンでスタートし、途中ターボ付きの1.4Lガソリンエンジンを加えた後に1.6Lを廃止、その後一旦の販売休止期間をはさみ、最後はハイブリッドモデル1機種で復活した経緯がある。 いまのところフロンクスのパワートレーンはハイブリッドであることが明かされているだけでガソリン車の有無はわからないが、旧エスクードの例からしてハイブリッドひとつの可能性が高い。 最終エスクードをなお最終型のハイブリッド車に定めて3車を比較すると・・・ S-CROSSがガソリン車だけだったので当然だが、フロンクスのパワートレーンの構成は最終エスクードに近い。 エンジンは同じK15Cで、フロンクスの最大トルクがわずかに向上している以外はまったく同じ。 そのいっぽうでハイブリッドシステムは大きく異なっており、エスクードが30ps超のトルクの交流モーターを持つ純ハイブリッドだったのに対し、フロンクスはソリオやスイフト、クロスビーで用いられる、モーター機能付発電機(ISG)にエンジンアシストを任せるマイルドハイブリッドを採択した。エスクードから一転、250kgもそぎ落としてソリオ並みに身軽になったフロンクスなら、ハイブリッドシステムだってマイルドハイブリッドにしても充分事足りるという判断だ(ソリオにも純ハイブリッド車があるが。)。 燃料タンク容量も、さすがに30~32Lのソリオ並みとはいかなかったようだが、エスクード(とS-CROSS)の47Lから、スイフトと同じ37Lに縮小されている。燃費はまだ公表されていない。 フロンクスを、最終エスクードとS-CROSSを勝手に旧フロンクスに仕立て、新旧比較してみた。 エスクードやS-CROSSの既存ユーザーばかりか、このサイズのSUVを検討する他社ユーザーにもずいぶん気になるフロンクスではないだろうか。 海向こうから船でやってきたフロンクスが国内SUV市場に船出するのは2024年秋の予定だ。
MotorFan編集部