「成長する姿まだ見たい」…野球部の寮生活支え15年、部員56人と寝食を共にする舎監は、感謝の気持ちでスタンドに立ち声援を送り続ける
17日の第106回全国高校野球選手権大会3回戦で岡山学芸館を破り、2年連続の8強進出を果たした神村学園ナインに一塁側スタンドから大きな拍手を送る男性がいた。部員56人と寮で寝食を共にする舎監、清水(きよみず)勉さん(71)。「試合を重ね成長する姿をまだ見たい」と期待を寄せる。 【写真】8強入りを決め、笑顔で一塁側スタンドに向かう神村学園ナイン=17日、兵庫県西宮市の甲子園球場
清水さんは、いちき串木野市の寮で生活上の指導に当たる。心がけるのは野球部の方針でもある「凡事徹底」。「野球以外の場面でも当たり前のことを徹底することで気持ちが鍛えられ、逆境をはね返す力になる」と力を込める。 遠征にも同行する。「懸命にプレーしているから」と球場では必ず立って見守る。岡山学芸館戦も約730人の応援団のかたわら、立ち続けた。 1点を勝ち越した4回、早瀬朔投手のタイムリーでさらに加点。スタンドが沸く中、満足そうにうなずいた。「自分たちのペースでプレーできている」 舎監になり15年目。一生懸命練習しても勝てなかったチーム、新型コロナウイルス禍で試合さえできなかった学年…。そんな姿を見るのはつらかったが、「この仕事が大変と感じたことはない」と言い切る。 高校教員などを経て舎監になるまで野球との接点はなく、「甲子園が聖地とされる理由も知らなかった」。懸命な姿を見続け、甲子園で戦えるよう頑張りたいと思う生徒たちの気持ちを肌で感じるようになった。「聖地の意味を教えてくれた生徒たちに感謝している。この先は強豪ぞろい。だが、彼らが成長する姿をまだまだ見たい」。日に焼けた顔に穏やかな笑みを浮かべた。
南日本新聞 | 鹿児島