ドジャース・大谷翔平

　「ドジャース１０－０メッツ」（２１日、ロサンゼルス） 　ドジャースの大谷翔平選手（２９）が２１日（日本時間２２日）、本拠地ドジャースタジアムで行われたメッツ戦の三回に５号２ランを放ってメジャー通算１７６本塁打とし、日本選手最多記録を更新した。前日まで並んでいた松井秀喜氏を追い抜いて偉業を達成。この日は３打数２安打２打点、１四球で打率を・３６８に上げ、首位打者に浮上した。 　かすみがかったロサンゼルスの空を悠然と見上げた。両手に残った確かな手応え。美しい放物線を描く白球が右翼席中段に落ちるのを“確信歩き”で見届けた大谷がゆっくりと一塁へ走り出した。 　「素直にうれしいですし、前回のホームランから（時間が）かかっているので早く打ちたいと思いつつ、今日打てたので、まず安心と喜びがある」 　１２日のパドレス戦の初回に４号を放って以来、８試合、３８打席ぶりの一発。日本選手の頂点に立った心境を柔らかな笑みを浮かべて言葉にした。 　待ち望んだ瞬間は両軍無得点の三回１死一塁の場面だ。カウント０－１から右腕ハウザーの真ん中に入ったスライダーを渾身の力でたたいた。表示された飛距離１２９メートルが短く感じられたほどの豪快弾。敵軍右翼手マルテが本塁方向を見たまま一歩も動かないほど完璧なスイングだった。 　超えたのは「僕が小さい頃から見てきて同じ左打者として憧れの存在」だった松井氏。大谷が思い出すのはピンストライプのユニホームを着たヤンキース時代の姿。「個人的には特別な１本でした」。一塁を回ったところで右手人さし指を掲げ、ナンバーワンを誇示した。 　２１年に日本選手最多の年間４６本塁打を記録。昨季は４４本塁打で日本選手初のキングの称号を手にした。７２５試合で１７６本塁打。４・１２試合に１本ペースで打ち続けているが、大谷は「本塁打だけを狙っているわけではない」と言い切る。「打撃自体は可能性を広げていく作業だと思っている。四球、単打、二塁打、本塁打。その可能性を広げる中で本塁打があるかないかで相手へのプレッシャーが違いますし、来るボールも多少影響する。そういう意味では（本塁打は）長所ではあるので、大事にした」 　大谷の次なる目標は沖縄生まれのロバーツ監督が持つ球団日本選手記録の７本塁打だ。記録更新まで３本。「監督の記録を抜きたい」と笑う。 　ホームランが足踏みした７試合の打撃成績は２４打数９安打、打率・３７５。この日は５号の後に投手強襲安打を放ち、３戦ぶり１１度目のマルチ安打をマーク。７試合連続安打で打率・３６８とし、メジャー７年目で初めて首位打者に浮上した。すべてが規格外。昨季は二刀流で本塁打王を獲得した男が、打者に専念する今季は首位打者を争おうとしている。