『コタツがない家』かわいすぎるチョーさんが深掘家を救う 小池栄子の作品屈指の名言も
ドラマ『コタツがない家』(日本テレビ系)第9話では、深堀家にて過去最大の戦いが巻き起こる。それが、離婚したくない一家の大黒柱・万里江(小池栄子)と離婚をすることで漫画を完成させたい悠作(吉岡秀隆)との、本作におけるメインイベント。SNSでも22時52分頃からゴングが鳴るとボクシングの試合のポスターを模した画像とともに予告されていたが、これまでにない熱量が迸る激戦となった。 【写真】見ているだけで癒やされる猫のチョーさん 悠作が11年半かかってやっと見つけた、自分が離婚するまでの話という漫画のネタ。万里江、達男(小林薫)、順基(作間龍斗)は悠作にネタを提供しない、つまりは離婚騒動をつまらなくすれば、悠作はネタへの興味を失うだろうと一家一丸となるものの、悠作は相変わらずの歪んだ視点で援軍に入った熊沢(西堀亮)や弟の謙作(豊本明長)までをも漫画のネタとして取り込んでいく。 万策尽きたと諦める達男に、「山神順基」になることを受け入れ始める順基。万里江は離婚に反対する人が一人もいないどころか、自由になる千載一遇のチャンスだと背中を押されることにショックを受けながら、結婚と仕事を両立している自分でいたかっただけではないのかと離婚届に判を押すことを考え始めていた。 万里江がずっと分からずにいたのが、なぜ自分は悠作との離婚を決断できないのか。言い換えれば、悠作のどこに惹かれているのかだ。居酒屋で志織(ホラン千秋)から「旦那さんはどういう存在なんですか?」と聞かれ、万里江は適切な言葉が思い浮かばなかった。ピザを円グラフに例えて、「好き」「大切」「同志」「心配」の4つを合わせ4分の3。残り4分の1が何か――その答えを見つけ、一時は判を押した離婚届をビリビリに破いた後に、万里江は悠作とのラウンドへと向かう。 赤いマフラーを取りながら若干アゴを尖らせた小池栄子の仕草はアントニオ猪木をモチーフにしていることは間違いないが、やはり本作の醍醐味はその丁々発止の会話劇である。あの手この手でどうしても離婚がしたい悠作のジャブに対して、万里江は温存しておいた必殺の右ストレートを繰り出す。 それがワラサ。「私が来年も再来年もあなたとここで一緒に暮らしたいと思う気持ち。略してワラサ」。前段がなければ酔っ払ってると誤解する悠作の気持ちも分からなくもないが、出世魚であるブリを例えにした、結婚当初の好きの気持ちをモジャコだとすれば、ワカシ、イナダと成長していきブリの一歩手前のワラサで止まっているのが今。悠作と思いっきりぶつかったり、絶望したり怒ったり、たくさん泣いたり笑ったりしたこと、全てが万里江のエネルギーになっていた。何にもしないこと、それは世間一般的にはダメでクズであることには変わらないが、志織たちがお似合いだとくっつけようとしていた土門(北村一輝)にはない、悠作だけの取り柄であり、万里江が惹かれた離婚したくない理由と言える。 しかし、それは悠作が漫画を描けなくなることを意味するが、30年後に離婚してもいいじゃないと提案する万里江。「30年後もこうやってあなたと言い争いしてたいの。ぶつかりあいたいの。それが幸せなことだって、やっと気づいたのよ」という万里江のセリフは、本作全体での名言の一つに数えられよう。そして、悠作が根負けする決定打となるのが、すり寄ってきたネコのチョーさん。親権争いの末に、このかわいいチョーさんとも離れ離れになるのはつらい……。というのは建前かもしれないが、そんな寂しそうな顔で悠作は離婚届を丸めてチョーさんのおもちゃに。決戦めしが、達男が釣ってきたワラサの刺身というのもいい。 次週はついに最終回。深堀家の離婚問題も一件落着かと思いきや、ダメ男三人衆が最後の大暴れをすることも予告されている。そして、万里江が結婚式をプロデュースしている酒井ひかる(富田望生)から聞かれた、夫婦円満の秘訣の答えは果たして。
渡辺彰浩