<私の恩人>ケイコ先生、福山雅治の言葉が転機の支えに
だからこそ、06年に浪曲の初舞台を踏んで、舞台に出るたびに、司会の方から「あの『電波少年』でおなじみの、東大卒のケイコ先生です!!」みたいなことを言われるのが、本当に嫌だったんです。…今から思うと、忸怩(じくじ)たる思いもあるんですが。 ただ、同時に、いかに皆さんにとって浪曲がメジャーではないかも、舞台に立つたびに痛感していました。とても、とても、生意気な言い方になるかもしれませんが、自分を観に来てくださって、初めて浪曲を観たとおっしゃる方もいる。それはそれで、意味のあることではないのか…。相反する2つの気持ちの間で揺れている時に、福山さんからメールをもらったんです。シンプルな言葉かもしれませんが、その時の自分にとって、これ以上ない言葉でした。 実は、来年3月5日にニューヨークで浪曲の公演をさせていただくことになったんです。史上初の英語浪曲も作って披露させていただくんですけど、すべては浪曲を多くの方に知っていただくため。スタートは福山さんの言葉でした。 恩返しということがあるならば、あの言葉をくださった福山さんに「言葉をかけた値打ちがあった」と思っていただくことをし続けることだと思っています。 (聞き手・文/中西正男/株式会社KOZOクリエイターズ) ■春野恵子(はるの・けいこ) 7月22日生まれ。東京都出身。本名・唐木恵子。東京大学教育学部卒業後、出版社に勤務するものの、女優を目指して退社。日本テレビ系「進ぬ!電波少年」の企画「電波少年的東大一直線」でブレークし、女優としてフジテレビ系ドラマ「救命病棟24時」などでも活躍。03年に女流浪曲師の第一人者・春野百合子に師事し、春野恵子となる。「咲くやこの花賞」(大衆芸能部門)などを受賞。浪曲師になって10年目の今年、米ニューヨーク公演を企画し、2014年3月5日にNYジャネット会館での公演が決定した。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年大阪府枚方市生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能記者に転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」に出演中。