<下剋上で頂へ―’24センバツ・中央学院>第5部・支える/1 寄り添うコーチ陣、厳しさも優しさも /千葉
◇深い理解、あればこそ 監督、コーチらは野球の技術のみならず、それぞれがチームづくりにつながる役割も果たしている。チームが緩んでいればしっかり叱って雰囲気を引き締めるのが、相馬幸樹監督と福嶋翔平部長だ。一方で顧問の中野翼さんや梅沢英一さん、コーチの塚越爽太さんや黒田海揮さん、山本隼さんはそれぞれの視点で部員の心を支えている。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 1年の春にベンチ入りした外野手、水嶋悠(2年)は昨年の春季大会で打球を後ろにそらしてしまい、昨夏はベンチ入りを逃した。野球部寮で寝食を共にするコーチの塚越さんは、そんな水嶋に優しい言葉をあえてかけない。 「水嶋は大好きな野球で失敗したくないタイプ。自分と同じなんです」。一緒にいる時間が長い分、落ち込んでいる様子も分かる。普段は強気に見える水嶋だが、「本当は優しくて心が強いわけではない」と理解していた。 一方の水嶋は「優しい言葉を掛けられると、余計ダメになる」という。元々、内野手だったが、送球がうまくいかず、外野手に。しかし、またしても大会で失敗。守備と同時にバッティングの調子も落ち、ますます、暗くなった。 塚越さんはむしろ、「変わらないとこのままだよ」と厳しい言葉をかけた。 「見返そう」 水嶋は一層、練習に励んだ。バッティングを教わり、長打も出るようになった。昨年の秋季大会は計12盗塁を決めるなど、走塁でも光る活躍を見せた。 話を聞くタイプの塚越さんは「最近、調子はどう」と部員に声をかけ、野球以外にも勉強や趣味、恋愛とさまざまな話をする。 一方、応援団も指導する黒田さんは主力以外の部員と関わる機会が多い。大学時代に約200人の大所帯で野球をしていた経験から、メンバー外の選手の気持ちは分かる。「こうしたらいいのでは、と提案し、歩み寄るようにしている」という。顧問兼コーチで、社会科を教える中野さんの授業を楽しみにする部員も少なくない。 練習には真摯(しんし)に向き合う部員だが、食事やトレーニングでは和気あいあいとした雰囲気になる。相馬監督は「スタッフは非常に仲良く、周りの支援者も含めて明るいチーム。選手たちもそういう環境になじんでいると思います」と話す。 昨秋の県大会予選で四街道に敗北後、部員らはコミュニケーションを増やし、チーム力で快進撃を見せてきた。塚越さんは「甲子園で活躍する姿をいっぱい見たいですね」と目を細める。【林帆南】 ⚾ 第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する中央学院の部員を裏でサポートする人たちの姿を追った。=つづく