味噌や豆腐や納豆などの原料として日本で使われる食用大豆の7割は米国から輸入されている。食品用として日本に出回っているものは全て高品質なIP大豆(他の品種や農作物と混ざらないよう分別生産流通管理された大豆)で、大豆消費大国・日本の食卓を支えている。世界90ヵ国で活動しているアメリカ大豆輸出協会(USSEC)は日本の業界団体との連携強化や消費者向けの動画発信など新しいアプローチを進めている。
安心を求める消費者の声にこたえる...納豆連とUSSECがオンライン情報交換会
米国は世界第2位の大豆生産国だ。生産のために森林伐採を行わず、CO2排出削減にも寄与しつつ、生物多様性や環境保全に注力したサステナブルな農法を取り入れている。近年の「食の安心・安全」やトレーサビリティ、SDGs(持続可能な開発目標)の達成などのニーズに応えるために徹底管理のもと生産・流通されている。非遺伝子組み換え大豆(Non-GMO)の安定供給も、広大な面積と最新鋭の穀物輸送インフラをもつ米国だから実現できている。
全国納豆協同組合連合会(納豆連)と米国の大豆生産者やサプライヤーが情報交換をする「NATTO INDUSTRY MEETING SESSION 2」が2021年12月14日にオンラインで開催された。米国産大豆の安定供給に向けた取り組みや今後の見通しなどを共有し、相互理解を促進することが目的だ。
2021年12月14日にオンラインで開催された「NATTO INDUSTRY MEETING SESSION 2」
USSECの食品担当部長を務めるウィル・マクネア氏は、150以上の2020年産大豆の品種サンプルが掲載されているデータベースの使用法を解説した。世界中の投資家・貿易会社・バイヤーなどの意見をふまえ構築したデータベースで、日本語以外に英語・フランス語・韓国語・中国語と多言語に対応している。検索区分も複数あり、用途別として味噌・納豆・豆乳・醤油・豆腐を設定できる。生産方法では有機やNon-GMOで情報を絞り込める。「たんぱく質を40%以上含む、Non-GMOの大粒の大豆」といった検索も可能だ。
データベースで気になった大豆が見つかった場合に連絡をとりやすいようサプライヤー情報も完備。取り扱い品種に加え、認証や荷姿、営業担当の情報も確認できる。
Specialty Soya and Grains Alliance(SSGA)のリック・ブランデンバーガー氏は、米国の食品大豆業界の現状や品種開発、IP作物の指定制度について発信した。
米国での食品大豆への需要は、2022年度生産分を含め堅調に推移。またバイオ燃料でのニーズ拡大にともない、搾油大豆の引き合いも高まっている。現在ノースダコタ州では、2つの主要な搾油工場が建設中だ。同州は米国で第4位の大豆生産地。同氏によると、主要産地で生産された大豆の約50%が、これらの工場で使われることになるという。
育種(品種改良)については「農業生産性、納豆への適性の2つを焦点に、民間企業や大学などが主体となり進めている。やり方として、複数組織で連携して取り組む手法、1組織が独自の育種プログラムを推進する手法などがある。こうしたものが組み合わさるなかで、今後も新たな品種が定期的に業界に生まれてくるのでは」と述べた。
SSGAが2021年12月に発表した米国産IP作物の指定制度は「プレミアムな作物であり、履歴がはっきりと分かる」といったことを示す品質保証プログラムだ。具体的には、生産・加工・パッケージング・流通に至るまでの履歴管理を実施することで、作物の品質の高さや一貫性を示し、消費者の安心を求める声に応えたい考え。SSGAは、この制度が産業全体に広がることで、食品のトレーサビリティに弾みがつくとみている。
IPハンドリング証明書の発行の流れ
日本側からは、納豆連の小杉悟副会長と相沢勝也副会長が、納豆輸出の現状や機能性研究報告、ビデオ放映を行った。小杉副会長は、コロナ禍で納豆需要が高止まりする一方、穀物相場の高騰、海上物流のひっ迫、円安ドル高などが製造コストの上昇要因としてのしかかってきていると指摘した。
納豆の輸出は在留邦人や日系人向けがメインだが輸出量は徐々に増加している。直近では、1752トン(2017年)から3260トン(2021年推計)と約1.8倍に増えた。輸出先でみると、2020年まで米国向けが最大となっていたが、2021年推計では中国が前年から約1.9倍増え1242トンとなり米国を抜く見通し。健康を切り口にした期待、中国の医食同源の考え方などが影響しているのではと解説した。
大豆が集団失踪したら...「サステナブルな食」について考えるコミカルミステリー動画
日本の若い世代向けへの発信コンテンツとしてUSSECは、コミカルミステリー短編ドラマ「大豆集団失踪事件」を2021年12月15日に公開した。YouTubeで視聴できる。難事件を次々と解決する敏腕探偵と商売敵の刑事が繰り広げるショートミステリー動画だ。2人のもとには行方不明事件の話が舞い込んでくる。今回の行方不明者はなんと「大豆」。コミカルにテンポよく、そして斜め上の方向に展開していくユニークなストーリーとなっている。
コミカルミステリー短編ドラマ「大豆集団失踪事件」をYou Tubeで配信中
日本の食用大豆のうちの7割は、SSAP(アメリカ大豆サステナビリティ認証プロトコル)という認証制度を通じて日本の食卓に届けられているサステナブルなアメリカ大豆である。身近にありながら、意外と知らない大豆。日本の若者に世界一サステナブルな農法で生産されているアメリカ大豆を紹介し、「サステナブルな食」について考えるきっかけとなるような動画をめざし作成された。
2013年にスタートしたSSAPは、アメリカ大豆がサステナブルな農法で生産管理されていることを認証する制度だ。連邦政府の法規制に基づき土地やエネルギーの有効活用、土壌保全、CO2削減、労働環境の継続的改善の4つの基準をクリアした大豆を使った商品は認証マークを付けられる。認証マークは農家の取り組みを可視化し、企業のトレーサビリティー推進につながる。
USSEC公式サイトではサステナブルな大豆レシピ動画も発信
USSEC公式サイトでは大豆とサステナビリティをより結び付けて考えてもらえるような広報キャンペーンを展開し、さまざまな情報発信を行っている。大豆シンポジウムの告知や大豆レシピ動画など、サステナビリティを中核に置いた内容にこのほどリニューアルする。
数字で見るアメリカ産大豆のサステナビリティを公式サイトで発信
従来の食用や油用・工業用の情報を網羅しつつ、SSAP認証製品の情報発信も新たに開始。各企業の商品ページにリンクし、売り場での購買につながるよう消費者へのPRも強化する。
アメリカ大豆についてわかりやすく解説した動画「大豆のおはなし」の2話では、「大豆のサステナビリティが求められる理由とSSAP認証取得方法」を説明、また大豆を使用したサステナブルレシピ動画を70品以上掲載予定など、画像や動画を多く活用し、一般消費者向けにも親しみやすいサイトを目指す。