メガネをかけると目の前に大画面が広がる「ARグラス」を知っているだろうか?スマートフォンやゲーム機、PCを接続すれば、自宅でも外出先でも移動中でも大型TVのような映像を手軽に体験できる注目のガジェットだ。ARグラスはどんな場所でも臨場感あふれる映画館に変えてしまうのである。
ARグラスを日本でも販売しているRokidは2014年7月に創業した拡張現実、人工知能、ロボットの研究と製品開発を専門とした企業で、先進的な製品を次々と市場に送り出している。現在は日本を含む世界80カ国以上に製品を展開しており、累計販売台数は50万セット以上、100万人以上のユーザー数を誇っている。またラスベガスで毎年開催される世界最大のテックショー「CES(Consumer Electronics Show)」でイノベーションアワードを3年連続で受賞、さらに特許の数も数多く保持している。
2023年5月に発売された「Rokid Max」は75gという軽量が特徴のARグラスである。スピーカーも内蔵されており、グラスをかけると目の前に巨大なスクリーンが現われ迫力あるコンテンツを体験できる。またAndroid TVデバイス「Rokid Station」を接続すれば、スマートフォンなどを接続することなくNetflixなどの動画配信サービスの利用も可能である。
「どんな場所でも大画面」山根康宏氏がRokid Maxをレビュー
Rokid Maxは前述したように本体重量はわずか75gであり、普通のメガネのような感覚で使うことができると感じた。パッケージにはRokid Max本体とUSB-Cケーブル、交換用のノーズパッドが付属する。持ち運び用の携帯ケースもあるため、旅行などに持っていく時も便利だ。
わずか75gの洗練されたボディでも215インチの画面表示を可能に
Rokid Maxのディスプレイは解像度が1920 x 1080ドットと高く、映像の表示はもちろんのこと細かい文字も見やすく表示してくれる。またリフレッシュレートも60~120Hzと速く、ゲームプレイにも十分対応できるほか、より滑らかな映像体験を可能にする。さらに輝度は600ニトと明るい。Rokid Maxをかけると目の前のグラスを通して見える景色に重なるように映像などを見ることができるわけだ。
そして遮光カバーを前部に取り付けると視界が遮られ、より高い没入感に浸ることができる。表示サイズは「目の前6メートル、215型」で、実際に大型TVを見ているような感覚で使うことができる。Rokid Maxでいくつか映画視聴を体験してみたが、気が付けば映画に見入ってしまい時間が経つのを忘れるほどだった。
ツルの右側下部にはディスプレイの明るさ調整と音量調整ボタンを備えており、片手で楽に調節できる。スピーカーはオープン型であり密閉型のように外の音をシャットダウンはできないが、映画や動画を楽しむ分には十分、音量も満足のいくものだった。まためがねのグラス部分の上には視度調整ダイヤルもある。ARグラスの中には別途視度を合わせるレンズの購入が必要な製品もあるが、Rokid Maxは本体だけで0.00D ~ -6.00Dの間の視度調整が可能だ。さらにマイクも内蔵しているため、スマートフォンを接続中に通話用途にも使える。
Rokid Maxとスマートフォンの接続は、ツルの端の端子に付属のUSB-Cケーブルを使って接続するだけだ。USB-C搭載など一定の条件を満たした Androidスマートフォンや、iPhone 15シリーズに対応する。長時間使用したい場合は別売のRokid Hubをスマートフォンに装着することで、スマートフォンの充電とRokid Maxへの接続が同時にできる。ノートPCなどもUSB-Cで外部ディスプレイ接続が可能であれば同様に付属ケーブルで利用が可能で、リモートワーク用途にも活用できる。
ITジャーナリストならではの知識を織り交ぜながら体験する山根氏
また、ゲーム機との接続はSteam Deck、ROG Allyはそのままケーブル接続で使うことができる。Nintendo SwitchはRokid Hubの使用が必要だ。また他のゲーム機などは別売のHDMI to USB-Cアダプターを使う必要があるものもあるので、購入時にRokidの対応機種一覧を確認しよう。
さて、Rokid Maxに「Rokid Station」※1を接続すると、それだけで動画配信などエンタメコンテンツを楽しむことができる。Rokid Stationは手のひらにすっぽりと納まる形状で、重量は148gと比較的軽量であり、5000mAhバッテリーも搭載しているので充電ケーブルをつなぐことなく連続5時間の利用も可能だ。また、本製品はGoogle社にARグラスで初めて公式認証されたAR版Android TV製品であり、NetflixやYouTubeなど、メジャーな動画配信サービスを利用できる。Rokid MaxとRokid Stationを組み合わせると、TVが無くともどこでも好きな映画やアニメを楽しめるというわけだ。
※1...要Wi-Fi接続
「今使ってる他社製品よりも軽い」軽さに魅了された山根氏
エンタメ業界のエキスパートが"ARグラス"を初体験、感じた魅力とは
それではRokid Maxを使うとどれくらいエンタメ体験は変わるのだろうか。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究を行っているジャーナリストの数土直志(すど ただし)氏に実際にRokid Maxを使ってもらい、迫力の映像を体験してもらった。
左:数土直志氏/右:山根康宏氏
――ARグラスを使われたのは初めてとのことですが、Rokid Maxを使ってみて率直な感想はいかがですか?
数土氏:軽量で装着しやすく、かけた瞬間に目の前に大画面が広がるのは驚きです。めがねの形状なので顔を動かしても常に目の前に映像が表示されるため、高い没入感も得られると感じました。遮光カバーをつけると目の前の映像に完全に見入ってしまったほどです。
――通常のモニターやTVと比べて異なる部分はありますか?
数土氏:TVで映像を見ているとどうしても花瓶だったり壁だったり、余計なものが目に入ってしまいます。また外出先で映画を見ようと思っても大きい画面のTVを準備することはなかなかできません。Rokid Maxなら目の前には映像しか表示されないため、視野に邪魔なものが一切写り込みません。そしてどんな場所でも大きな画面を使えるのが便利ですね。
移動中などスマートフォンやタブレットで動画を見ようとすると、片手でデバイスを持つため腕が疲れてしまうことがあります。電車の中や飛行機の中では他の人からの視線が気になることもあり、せっかく動画を見ようとしても気を使って見ることができないこともあります。Rokid Maxなら表示される映像は自分だけしか視聴することができないので、気を遣う必要が無いのが良いと思いました。
この日、初めてARグラスを体験した数土氏。実際に映画を観てみた感想を伺った
――215型の大きな表示サイズはどうですか?
数土氏:これはぜひ実際に体験してほしいと思いました。臨場感溢れる大きな映像が目の前に広がり、リビングルームでTVを見たり、スマートフォンの画面で動画を見たりするのとは明らかに感覚が異なります。これはまるで映画館で映画を見ているような感覚でした。電車の中でRokid Maxを使ったら降りる駅を乗り過ごしてしまうのではないかと思ってしまうほど、映像の世界に引き込まれそうです。一方で表示されるサイズは人によってはもっと近くに、あるいは遠くにと思うことがあるかもしれません。今後は表示距離を変更する機能も実装してほしいと思います。
アニメ視聴の新たな形に?今後の展開に期待大
――アニメ視聴との相性はいかがでしょうか?
数土氏:Rokid Maxは本体が軽くスマートフォンとの接続もケーブル1本で、手軽に使うことができるにもかかわらず高い没入感が得られます。映画館でアニメを見たい人や、毎晩深夜アニメを見たい人など、アニメファンにも活用できる製品だと思います。特に映画作品を観る場合、付属の暗転用カバーを装着することでまるで映画館のスクリーンで見ているかのような雰囲気になり、TVと比べてより作品に没頭できるのではないでしょうか。
――PCとの接続もできますが、使い勝手はどうですか?
数土氏:外部ディスプレイとして仕事にも使えますし、PCでの動画視聴も楽しめるので便利な機能ですね。キーボードやマウス操作が必要なので遮光カバーは装着せずに使ったほうがいいかもしれません。最初はこの新しい感覚になれなかったのですが、1時間も使えばすぐになれるでしょう。
――ARグラスを体験して、どのように感じましたか?
数土氏:画面のクリアさ、本体の軽さ、映像表示自然さなど、新しい映像体験でした。「テクノロジーもここまで来ているのか」と改めて実感することができました。映像やアニメ好きな方にはARグラスをぜひ実際に体験してほしいと思います。