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人気時計「ロレアート」に見るジラール・ペルゴの快進撃は伝統と革新に裏打ちされた確かな技術があってこそだ

提供:oomiya

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「ロレアート 42mm」 Ref.81010-11-431-11A 188万1000円/広告ビジュアルに起用されているスタンダードなロレアート。重厚なイメージの一方で、テーパーがかけられたブレスレットなどの採用により優れた装着感を実現している。自社製造の自動巻きムーブメント「キャリバーGP01800」を搭載。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm、厚さ10.68mm。100m防水。

2023年も引き続き人気を博した高級時計のひとつに、「ロレアート」が挙げられる。1791年創業のスイスの老舗ブランド【ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)】の主要コレクションで、日本だけでなく海外でも需要が高まっており注目を浴びている。その人気ぶりの理由を探りながら、ジラール・ペルゴの世界を解き明かす。

ロレアートの人気上昇でジラール・ペルゴの知名度もアップ

まず、ロレアートという腕時計について紹介しよう。初登場は1975年のことで、当時最先端だったクオーツをジラール・ペルゴが自社開発し、搭載するモデルとして世に送り出された。この腕時計は流行していたラグジュアリーとスポーツの要素を兼備した意匠に、クオーツムーブメントの特性を生かしたスリムな設計で受け入れられたのだ。いわゆる"ラグジュアリースポーツウオッチ"にカテゴリーされるモデルで、8角形のベゼルやケースとブレスレットが一体化したデザインを特徴としていた。外装もメカにもジラール・ペルゴが持つ先進技術が注がれたロレアートはその後、H型コマを使った剛性の高いブレスレットへの変更、1995年にはシリーズ初の機械式モデルを輩出するなど、登場の度に進化してきた。

1975年に登場した初代ロレアート。"ラグスポ"として親しまれている"ラグジュアリースポーツウオッチ"のスタイルを纏った最初期のモデルで、エポックメーキングな存在となっている。なおクオーツ腕時計の量産化は1969年にセイコーが達成したが、その翌年にジラール・ペルゴが3万2768ヘルツ振動のクオーツムーブメントを世界で初めて発表した。この周波数が標準規格となって今日に至ることからもわかる通り、ジラール・ペルゴは時代を切り拓いてきたのだ。

そのようなバックグラウンドを持つロレアートはマイナーチェンジを繰り返してきたが、誕生40周年を経た2016年に転機が訪れた。オリジナルと同様のオクタゴンシェイプベゼルや流麗な外装デザイン、クル・ド・パリ装飾の文字盤といったアイコニックなディテールを備え、限定仕様として完全復活を果たしたのだ。これを受けての再評価や"ラグスポ"ブームの再熱もあって、2017年からはレギュラーコレクションとしてラインナップに加わり、2018年にはクロノグラフバージョンも登場するなどバリエーションを拡大。ほとんどのパーツを職人が手作業で仕上げるため年間生産本数は限られているものの、一時は店頭から姿を消してしまうほどの人気ぶりだった。そしてこれに呼応するように、知る人ぞ知るツウ好みのジラール・ペルゴの知名度は上昇してきた。

「ロレアート クロノグラフ 42mm」 Ref.81020-11-131-11A 244万2000円/象徴的なディテールとクロノグラフを見事に融合。通称、"パンダ"と呼ばれる写真のシルバー文字盤が人気カラーだ。ケース&ブレスレットに最高品質の「904Lスチール」を採用。自社製造の自動巻きムーブメント「キャリバーGP03300」を搭載。ステンレススチールケース&ブレスレット。直径42mm、厚さ12.01mm。100m防水。

今回、高級時計市場におけるロレアートの存在感について、ジラール・ペルゴの正規取り扱い店であるoomiya 京都店の岡本店長に話をうかがった。

2022年に移転リニューアルオープンしたoomiya 京都店の店長、岡本さん。四条烏丸の交差点から徒歩3分というアクセスしやすい同店は、リニューアルを機にジラール・ペルゴの正規取り扱いをスタートした。

(oomiya 京都店 岡本店長)「ロレアートをご購入くださるのは30代から50代の方が多い印象です。スマートかつエレガントなため、シーンやファッションを問わずに着用できる腕時計となっており、スーツやシャツの袖口に引っ掛かりにくいように厚みが抑えられています。文字盤はブルーのほかにブラックも人気です。お客様が最も驚かれるのが腕に着けたときで、着け心地の良さに私自身も感動しました。また、安心感のある100m防水も評価されています」

「ロレアート 42mm」 Ref.81010-11-634-11A 188万1000円/クル・ド・パリ装飾の文字盤をブラックとしたスタイリッシュなバリエーション。メインの仕上げにヘアラインを使いつつ、八角形ベゼルの台座部やブレスレットの中央コマにポリッシュを用いて美しさを際立たせた。自社製造の自動巻きムーブメント「キャリバーGP01800」を搭載。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm、厚さ10.68mm。100m防水。

(oomiya 京都店 岡本店長)「京都府内では当店が唯一のジラール・ペルゴ正規取り扱い店とのことで、ロレアートに関するたくさんのお問い合わせをいただいております。まだ希少ですが、スイス本社の生産体制が強化されていることもあって徐々に入荷が安定してきています。文字盤のカラー、ケースの素材、42mm径もしくは38mm径のサイズ、さらにはクロノグラフを追加したバリエーションなど、複数のモデルを展開しています。まずは製品に触れていただき、ジラール・ペルゴの高度な技術を体感いただきたいです」

京都市営地下鉄・四条駅や阪急京都線・烏丸駅からほど近く、大丸 京都店の真向かいに立地するoomiya 京都店(京都府京都市下京区立売西町72/075-229-6689)。壁面を使った専用コーナーを展開するのはジラール・ペルゴのほかに、チューダー、IWC、パネライ、ブランパン、グランドセイコー、ゼニスで、名実ともに一流のウオッチブランドを正規取り扱いしている。

マスターピースへの畏敬と未来を先取りした技術開発による合作

岡本店長が語るように、ジラール・ペルゴの技術は時計界きっての水準にある。その歴史をひも解くと、1860年代に考案されたスリー・ゴールドブリッジを搭載するトゥールビヨン懐中時計にあたる。この傑作は1889年開催のパリ万国博覧会で金賞を受賞するなど、同ブランドの技術力を世に知らしめたのだ。腕時計としては、1880年にドイツ皇帝・ヴィルヘルム1世からのオーダーを受け、同国海軍の将校用に世界で初めてミリタリーウオッチを発明。1966年には毎時3万6000振動のハイビートウオッチをリリースするなど、前記のクオーツムーブメント(1971年に量産化を達成)の経緯を含めて、数々の開発を社内で行ってきたことに驚かされる。

1860年代に考案され、1889年のパリ万博で金賞を受賞したスリー・ゴールドブリッジを持つ「ラ・エスメラルダ トゥールビヨン」のオリジナル。機能と美観を両立させたキャリバー設計をこの時代に実現していた事実に感嘆させられる。ちなみに現代では、ゴールドブリッジの仕上げに40時間以上を費やすのだという。

装飾性や精度を追求し、ユーザーを楽しませるための工夫もなされたスリー・ゴールドブリッジは、ジラール・ペルゴのシンボリックな機構として歴史のいちページを飾った。これを1980年代に復活させると、1991年には遂に腕時計でも実現。以降も独創的で先進的なタイムピースを求めた結果、2008年にはもうひとつの技術的代表作となるコンスタントフォース・エスケープメントのコンセプトを発表。2013年に「コンスタント エスケープメント L.M.」として市販化され、同年のジュネーブウオッチグランプリで最優秀賞「金の針賞」を受賞した。そしてちょうど10周年となる2023年、ジラール・ペルゴが誇るスリー・ゴールドブリッジとコンスタントフォース・エスケープメントを融合した最新作、「ネオ コンスタント エスケープメント」が完成するに至った。

「ネオ コンスタント エスケープメント」 Ref.93510-21-1930-5CX 1310万1000円/スリー・ゴールドブリッジに通じる意匠と、厚みが人間の髪の毛の1/6という極細シリコン製ブレードを用いる初の脱進機を採用。従来よりも小型化されたうえ、最長7日間に伸びたパワーリザーブの残量を9時位置水平表示で確認できる。自社製造の手巻きムーブメント「キャリバーGP09200」を搭載。チタンケース(シースルーバック)、ラバーストラップ。直径45mm、厚さ14.8mm。30m防水。

なお、コンスタントフォース・エスケープメントのメカニズムは、ジラール・ペルゴの技術者が電車に乗った際、ふと思い付いたことが開発のヒントとなったそうだ。切符の両端を指で支えたときにできる"たわみ"を、行ったり来たりさせて弄んでいたところ、「支点が固定されていれば、たわみに一定以上の力を加えても同じ幅で振幅する」ことに偶然気付く。これを機械式ムーブメントの調速機構に置き換えると、ブレードが持つ"弾性と双安定"の特性を応用すれば、主ゼンマイの巻き上げ具合に関係なく湾曲の運動を繰り返すブレードが均等なトルクをテンプへと伝達する仕組みが構築できる。しかも最新作は、このブレードを非磁性かつ耐久性に優れるとして時計界で導入が進むシリコンで実現したことに世界が驚嘆した。

「ネオ コンスタント エスケープメント」の脱進機部をクローズアップ。ケースバック側にある五番車と2対のガンギ車が、極細のシリコン製ブレードとテンプに動力を伝え、クロノメーターの高精度に調速された回転を輪列に返す。ガンギ車の外側にある3つの歯はブレードと接触することで波形を正しい位相に整える役割を担っている。左右写真を見比べると、切り替えレバーと連動する錨型のシリコン製パーツが上下動し、ブレードの輪(矢印)に収まったピンを介して波を作る。さらにその先端にあるツメレバーによってガンギ車の回転を制御。1振動に20もの動きが詰まった超精密なメカニズムを構成している。

こうした斬新なアイデアを強みに、独自の道を歩むジラール・ペルゴに惹きつけられる時計コレクターは多い。また人気時計ロレアートの存在によるブランドバリューの上昇も相まって、同社のクリエイティブなプロダクトを求める声は年々増加している。それを肌で感じている一人が、oomiya 心斎橋店の田井店長だ。

oomiya 和歌山本店に次いで2010年にオープンしたoomiya 心斎橋店の店長、田井さん。ロレアートやヴィンテージ 1945というジラール・ペルゴのアイコンピースを重宝しつつ、シリコン素材やスケルトンデザインなどモダンな要素を取り入れているブリッジの先見性を次のように評価している。

(oomiya 心斎橋店 田井店長)「oomiya 心斎橋店では2021年にジラール・ペルゴの正規取り扱いを開始し、翌年にブランドの世界観を体感いただけるように常設コーナーをオープンしました。その認知度の高まりを実感しています。ロレアートを指名買いされるお客様も多いですが、より強い個性を求められる方はブリッジコレクションに興味を示されます。ブリッジにはハイエンドなネオ コンスタント エスケープメントもありますが、オリジナリティ溢れるデザインや機能を備えるエントリーモデルもラインナップされています。そのひとつがフリー ブリッジで、ネオブリッジ構造を採用し、シリコンパーツをダイナミックに魅せるスケルトン文字盤をセットした唯一無二の腕時計となっています」

「フリー ブリッジ」 Ref.82000-11-631-FA6A 283万8000円/スケルトン文字盤は多くの面を持つ立体デザインとなっており、センターを横断するように架けたアーチ、6時位置にネオブリッジを配置。複雑なカットが冴えるテン輪などの脱進機関連のパーツに、シリコン素材を使用している。自社製造の自動巻きムーブメント「キャリバーGP01800-1170」を搭載。ステンレススチールケース(シースルーバック)、カーフストラップ。直径44mm、厚さ12.2mm。30m防水。

(oomiya 心斎橋店 田井店長)「立体的な作りの文字盤は仕上げも美しく、未来を感じさせるメカニズムを楽しむことができるめずらしいモデルです。2本目、3本目に所有する趣味時計をお探しの方の胸に響くことでしょう。もちろんこれらの魅力は、スイス随一と言われるマニュファクチュールブランドの伝統や技術があってこそ。そうした背景をじっくり説明させていただき、ご納得いただいたお客様がブリッジを選ばれる傾向にあります」

大阪ミナミの中心部である心斎橋に位置し、有名な御堂筋から1本西に入った南船場エリアに立地するoomiya 心斎橋店(大阪府大阪市中央区南船場4-7-6/06-6251-0077)。ジラール・ペルゴの世界観を演出した専用コーナーを設置。そのほかにIWCやタグ・ホイヤー、ジャガー・ルクルト、H.モーザー、ロジェ・デュブイ、ユリス・ナルダンといった本格派の機械式時計を正規取り扱いしている。

本記事では話題を振りまくロレアートと、伝統と革新を具現化したブリッジに焦点を当てて、ジラール・ペルゴが再び注目されている理由を解説した。ちなみにジラール・ペルゴと日本は縁が深く、同社の時計は激動の幕末期に初めて正規輸入されたスイス時計とされており、古くからのファンも多く、度々登場する日本限定モデルは常に好評を博している。日本とスイス、両国の架け橋となった老舗ブランドのコレクションを国内で触れられるのは、oomiyaに代表される機械式時計に精通した正規店。こうした信頼の置ける店舗に足を運べば、ジラール・ペルゴの奥深き世界を体感できるはずだ。