「羽田空港に一番近い私立学校」として、日本の玄関口である大田区本羽田に2024年4月に新規開校する羽田国際高等学校(2025年に中学校開校予定)。開校の背景や教育理念、新年度まで1年を切った現在の状況について、簡野裕一郎校長先生、副教頭兼進路部長を務める土橋由希子先生、中学校設置準備室長 兼子正暢先生に話を聞いた。
時代の変化に対応できる人材を
--前身である蒲田女子高等学校から、羽田国際高等学校として生まれ変わりますが、学校改革と共学化に至った背景について教えてください。
簡野校長:私ども学校法人簡野学園 は2021年に創立80周年を迎えました。創立より掲げてきた建学の精神、教育目標に示されている不易の部分を守りつつ、少子高齢化や科学技術の発達、グローバル化といった社会の変化に柔軟に適切に対応できる人材を育成していかなければならないという思いのもと、次の90年、100年を目指して学園の一貫教育をより充実させていこうというビジョンを策定しております。
これまでも羽田空港が近いという立地を生かし、JAL・ANAグループとの教育連携をはじめ、積極的なグローバル教育を展開してきました。今後もそれらを推し進めていくにあたって、個性の尊重や男女協働といった、誰もが自由で対等に活躍できる社会を構築する取組みが、教育にいっそう求められているという社会背景をふまえ、男女共学化に舵を切りました。また、学園では現在7つの保育園、幼稚園を経営しており600名ほどの在園児がいます。今後は卒園生にも広く本学園の中等教育を提供していきたいと考えています。
--3月にプレ説明会を開催されました。新年度が始まる前に説明会を開催したのは何か意図があったのでしょうか。
簡野校長:昨年(2022年)4月に創立記念式典を行い、そこで羽田国際中学・高等学校の開校計画について発表いたしました。その後、大変ありがたいことに教育関係者のみなさま、早くも受験生の保護者から多くの反響をいただいたこと、新開校に向けて準備を進め議論を重ねていく中で、少しでも早く新しい学校のイメージをお伝えしたいという意図で、先駆けてプレ説明会を行いました。「キックオフミーティング」として"この日がスタート"という新たな決意を込めました。
「学園の一貫教育をより充実させていく」と語る簡野校長
--キックオフミーティングの反響はいかがでしたか。
簡野校長:かなり早い時期での開催でしたが、予想よりはるかに早く200名の予約枠が埋まり、みなさまの関心の高さに驚いているところです。大田区内にお住まいの方や京急沿線の方はもちろん、川崎や横浜方面、千葉、埼玉からご参加の方もいらっしゃいました。女子校のイメージが強いのでは...と心配していましたが、4割近くの男子生徒に来ていただくことができ、本当に嬉しく思っています。
冒頭に、新学園の紹介動画とともに本校の概要を私が説明したのですが、終わった瞬間に拍手が沸き起こりまして。教育内容や新校舎の紹介はもちろん、新しい制服をファッションショー形式でお披露目したことなどを通して、新しい学校のワクワク感を伝えることができたのではないかと感じました。
多様化する社会で求められる「グローカルシンキング」
簡野校長:羽田国際は新しい学校ですがゼロからのスタートではありません。学祖である簡野道明先生が1941年に創立した私学として、80年以上の歴史と受け継がれてきた建学の精神があってこそ今があります。簡野学園には「清・慎・勤」という漢字3文字で表現される学園訓があります。具体的には「心も姿も美しく、思いやりを大切に、目標に向かって自ら行動する」人間の育成というものです。
羽田国際ではこの学園訓を受け継ぎ、その上で先ほど申した不易流行の部分で、新しい時代にあわせた教育コンセプト「グローカル」を掲げています。キャッチコピーは「 "Think Globally, Act Locally" 地球規模で考え、足元から行動しよう」。地球規模の大きな視点「グローバル」と、自己と他者を知り小さなことから実行していく「ローカル」。そして世界と日本。多様化する社会の中で複眼的な思考を育てることを「グローカルシンキング」と名付け、これらを軸に据えた教育を展開していきます。
--開校前からすでに始まっているという貴校独自のグローカル教育「WINGSプログラム」について教えてください。
土橋先生:これまでも「国際」を意識したキャリア教育プログラムを展開してきました。中でも週に2時間、全学年全クラスで取り組んでいる授業「WINGS探究」は、キャリアコーディネーターの資格をもつ教員3名を中心に、ネイティブ講師、学年主任が一丸となってオリジナル授業を展開しています。
プログラムの一例ですが、今月コロラド大学の学生が国際交流プログラムで来日することになっています。彼等が知りたいことについて事前にアンケートを行ったところ、日本の食文化、忍者、アニメ...いろいろあがりました。生徒たちはグループに分かれ、留学生に日本のことを伝えるために、まず自分たちで調べて知識を深め、他生徒および先生方に自分たちの企画内容をプレゼンテーションし、たくさんの質問を受けます。先生方や生徒全員からOKがもらえると、アクティビティの準備や、英語で説明する練習をします。日本文化Stageで、茶道を習ったり和菓子を食べたり、自分たちで着物を着付けて写真を撮るというプラン等5つ企画し実施する予定です。
WINGS探究の授業だけでなく、ほかの授業、学校行事、ASP(アフタースクールプログラム)等、学校活動を包括した「WINGSプログラム」を通し、グローカルシンキングを育成していきます。
土橋先生自身もキャリアコーディネーターの資格をもち、WINGSプログラムに力を注いでいる。インタビューを行った日本文化Stageの茶室空間は、学祖道明先生の号である「虚舟」、テーブルのある土間の空間は創立者信衛先生の号である「有竹」と名付けられた
生徒たちは「忍者は英語でなんていうの?」「お茶のたて方を英語で説明するには?」と、一生懸命調べて、ネイティブ講師にアドバイスをもらいながら、どうしたら相手に伝わるか、試行錯誤を繰り返しています。休み時間になっても止めないくらい熱中しています。
兼子先生:まさに身近で留学体験ができる「羽田留学」を推し進めていきたいと。まず羽田国際に寄ってから日本各地に行っていただいたり、最後に本校に寄ってから帰国していただいたり。すぐそこに世界への玄関があるという地の利を生かして、「日本にいながら・羽田にいながら」国際交流ができるというのが本校の強み。そのために英語を頑張るというのが、「生きた学び」につながっていると思います。
「日本にいながら・羽田にいながら国際交流ができる」と、地の利を生かした強みを語る兼子先生
土橋先生:「WINGSプログラム」を学んだ結果、検定にチャレンジしようという生徒は非常に増えました。英語を楽しく使うことで、さらに頑張り、資格にもチャレンジしたいと向上心が湧いてくるのだと思います。さらに、英語だけにとどまらず他の国の言葉にも興味をもって学び、視野を広げてほしいという思いから、第二外国語教育の第一弾として韓国語の授業もスタートしました。
兼子先生:「WINGSプログラム」には「清・慎・勤」3つの翼を手に入れて、世界に羽ばたいてほしいという思いが込められています。新しいスポーツウェアにもWINGSのロゴを入れていますが、学校全体で1つのチームとしてつながっていけたらと思っています。
「WINGS」のロゴが入った新デザインのスポーツウェア。「清・慎・勤」3つの翼を手に入れて、世界に羽ばたく生徒たちを「WINGS」と呼ぶ
--アフタースクールの取組みについても教えてください。
土橋先生:勉強だけではなくて、部活動も含めたアフタースクールプログラムも充実しています。進学講座に加えて、英検、漢検、数検といった検定合格のサポート、ピアノ講座や、華道の師範免許が取得できる講座もあります。今後も生徒の希望にあわせて増やしていく予定です。男子の受け入れにあたって、プロサッカー選手の川島永嗣選手がアンバサダーを務め、グローバルアスリート社との教育連携を結ぶなどの取組みも実現しました。
--進路指導についてはいかがでしょうか。
簡野校長:本校は多くの生徒が推薦入試で大学進学しており、面接やプレゼンテーションなどについても手厚い指導を行っています。一般受験に関しては3年前に特別進学コースを設置し、第一期生は全員希望の難関大学に合格いたしました。今後は男子生徒の入学に備え、理系カリキュラムの充実や指定校枠の取得などの準備を進めているところです。また、幼稚園教諭や保育士を目指す生徒には、本学園が運営する幼児教育専門学校への特別推薦枠での受け入れも可能となっています。
--新校舎の完成も楽しみですね。目玉である「K-Place」での活動について教えてください。
兼子先生:開放感のある空間で、学年の垣根を越えてフレキシブルに学べる新校舎「K-Place」を建設中です。プロジェクト型学習を通し企業から学ぶ場や生徒が集まる自由な学びの場を提供する「コラボStage」、歌う・踊る・合奏するなどの目的で使える防音設備を備えた「パフォーマンスStage」、絵を描く・ものをつくるといった創造をサポートする「クリエイトStage」、調理する・裁縫するといった生活の知恵を学ぶ「ライフStage」、日本の伝統文化を学ぶ和室と土間を備えた「日本文化Stage」があります。
中央には、大きな吹き抜けの階段と図書室があり、個々の学びの場とみんなで学びあう場の両方を兼ね備えた場所が誕生します。屋上には運動スペースを設け、体育やフットサル・ダンス等でも利用予定。メインで使うのは中高生ですが、空いている時間には本学園の園児たちが使うこともあります。幼稚園、保育園が身近にある本校の生徒たちにとって、校内で子供たちの声が響いている環境は当たり前。「うるさいのでは?」と思われるかもしれませんが、わが校の生徒は、園児が騒いでいても集中するべきときは集中しています。幼い子を見守りながら、いろいろなことを学んでほしいと思っています。
生徒たちと一緒に発展し成長していく
--中学受験を控えるご家庭に向けてメッセージをお願いします。
兼子先生:地域から信頼される学校を目指すとともに、大田区や品川区のお子様、川崎や横浜のお子様、幅広いエリアから通っていただけるような多彩な魅力のある学校を目指していますので、ぜひご期待いただきたいです。「羽田国際」の名の通り、多くの国際交流の機会を設けることはもちろん、企業との連携や社会で活躍することをイメージした学習環境を用意しています。また、中学生というのは、反抗期があるなど多感な時期でもあります。家庭と学校で連携してお子様の成長を共有できる密な関係を築いていきたいと思うとともに、やりたいことを見つけて自分の夢に羽ばたいていけるような素地を中学3年間でしっかりと育てていきたいです。
--高校受験を控えるご家庭に向けてメッセージをお願いします。
土橋先生:高校受験をするのは中学3年生、15才ですが、その10年後、つまり25才の自分がどのような人生を送りたいかを考えてほしいと思っています。その自分の未来から逆算した高校3年間を、より良く送れるようにサポートをするのが私たちの役割です。たくさんの成功と失敗を経験して、たくさんの聞く耳をもって、世界基準を知りながら、未来の自分に向かって一歩踏み出してほしいと思います。
--最後に、校長先生からメッセージをお願いします。
簡野校長:現在、開校に向けて万全の準備を進めていますが、開校時が完成形だとは考えておりません。教育内容や課外活動も、生徒たちの声にあわせてこれからどう発展させていくか、みなさんと一緒に「WINGS」として成長していきたいと思っています。小さなことでも良いので「やってみよう」というチャレンジ精神をもった志のある受験生との出会いを楽しみにしています。
--ありがとうございました。
「中学も高校も、これからともに学園をつくっていく第一期生という心構えで受け入れたい」と簡野校長。6月に開催される第1回学校説明会を皮切りに、夏休みに向けて今後も順次学校説明会を開催予定だ。「羽田留学」を体感するべく、お子さんと一緒に説明会に足を運んでみてはいかがだろうか。