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来春の東京開催決定! モータースポーツの未来形「フォーミュラE」をNAGASEがサポートする理由

提供:長瀬産業

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「Gen3」に進化した今季のフォーミュラEのマシン。市街地サーキット専用というコンセプトで、戦闘機にインスパイアされたデルタウイングデザインを採用している

2024年春、東京都内で本格的な公道レース「フォーミュラE」が開催される。

東京都はかねてから電気自動車の最高峰たるレースを誘致していたが、6月20日、FIA(国際自動車連盟)が総会において、シリーズ第7戦「東京E-Prix」として3月30日の開催を決定した。レースの舞台は江東区の東京ビッグサイト周辺となる予定だ。日本での公道レースは2020年に島根県でのカートレース開催実績があるが、FIAが認める世界的なレースの開催は日本初となる。

先頭に立って誘致を推し進めてきた小池百合子都知事は、「東京都は、CO2を排出しない環境先進都市『ゼロエミッション東京』の実現に向け、ゼロエミッションビークルの普及拡大をはじめ、あらゆる分野で行動を加速させています。(中略)大会は、ゼロエミッションビークルの普及に弾みをつけると同時に、東京の魅力を世界に発信し、国際的なプレゼンスを高める絶好の機会ともなります」とコメント。開催決定を喜ぶとともに、次世代自動車普及への期待を表明した。

昨年の「ロンドンE-Prix」でのワンシーン。市街地コースで戦われるフォーミュラEでは、普通のレースにはない思わぬ光景と出会える (C)Getty Images

フォーミュラEは化石燃料を使用せず、電動パワートレインを搭載するフォーミュラカーによって、市街地コースで争われるレースだ。2014年に開幕し、2020年からはF1やWRC(世界ラリー選手権)、WEC(世界耐久選手権)などと同様に、FIAが主催する世界最高峰の選手権として位置づけられている。開催地は世界中の大都市で、過去にはニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、北京、ソウルなどでも行われた。

開幕初年度はワンメイク(全チーム同一車両)だったが、2年目から現在に至るまでモーターやギアボックスなどパワートレインの独自開発が認められている (C)Lou Johnson / Spacesuit Media

リニューアルで速くなった新型マシン

モーター音のみが静かに響く独特なレースは、開幕当初こそファンに「迫力がない」「遅い」と揶揄されがちだったが、その後徐々にマシンが進化。今シーズンからは「Gen3」と呼ばれる新型マシンが導入され、シャシーやタイヤが見直されたほかモーターの出力が増加し、最高速度は一世代前「Gen2」の280km/hから322km/h(理論値)に向上。コースレイアウトも関係するので単純比較はできないが、現代のF1の最高速度が360km/h超とされることを考えれば、フォーミュラEもレースの本質である「スピード」を存分に楽しめるようになったといえる。

 

また選手権初期はジャック・ビルヌーブやフェリペ・マッサ、ヤルノ・トゥルーリなど元F1ドライバーによる「華を添える」ような参戦も目立ったが、現在は競技性の向上に伴い、将来的にはF1を狙う有望な若手も参戦するようになった。2021年にフォーミュラEのチャンピオンとなったニック・デ・フリースが、後にF1のシートを手に入れたのはその好例だろう。

排気管がなく爆音とは無縁のフォーミュラE。コースサイドには独特の高周波音が響き渡る (C)Lou Johnson / Spacesuit Media

特筆すべきは「Gen3」が時代が求めるサステナビリティを追求した初のフォーミュラカーであること。モノが生まれてから廃棄されるまでの一連の流れでCO2排出をとらえる「ライフサイクルCO2」という考え方に沿って、車体を構成するすべてのパーツにおいて、セカンドライフとエンドオブライフへの明確な道筋が示されている。

たとえばボディワークに使用される炭素繊維は、すべて新しい用途に再利用される。また、タイヤの原料の26%に天然ゴムと再生繊維が使用され、レース後に完全にリサイクルされる。フォーミュラEはすなわち、レースはもちろん自動車産業が直面する「サステナブル」や「カーボンニュートラル」といったテーマに合致する未来志向のレースなのだ。

F1など内燃機関を駆動力とするマシンに必須のサイドポッド(空気取り込み口)がない特徴的なボディは、「Gen2」に比べ小型軽量化された (C)Jamie Sheldrick / Spacesuit Media

率先してサステナビリティに取り組む価値

2023年の参戦チームは11。自動車メーカーでは日産をはじめ、ポルシェ、ジャガー、マセラティ、DSオートモービルズ、マヒンドラ(インド)、NIO(中国)が参加。その他、アンドレッティやマクラーレンなど老舗レーシングチームも参戦している。

今季はすでに全16レースを終え、「アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラ・イー(Avalanche Andretti Formula E)」のジェイク・デニスがチャンピオンとなった。チームの母体となる「アンドレッティ・オートスポーツ」はインディカーなどで輝かしい実績を持つアメリカの名門チームだ。

フォーミュラE参戦3シーズン目、残り2戦にしてランキングトップのジェイク・デニス。イギリス出身の28歳だ (C)Jamie Sheldrick / Spacesuit Media

長瀬産業を中核とするNAGASEグループは今季、フォーミュラEの趣旨に賛同し、サステナブルなチーム運営に力を入れるアバランチ・アンドレッティとスポンサーシップを締結した。アバランチ・アンドレッティはその活動において、レースはもちろん、工場やロジスティクスなどあらゆる面でサステナビリティへの取り組みを徹底させている。NAGASEもまた、主たる事業領域であるケミカルや食品素材業界でサステナブルな素材によるものづくりを提案し、2050年までにGHG(温室効果ガス)排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラル宣言を掲げている。

鋭角なデザインのフェアリング(ボディカバー)には「NAGASE」のパートナーシップの証が描かれる (C)Wiebke Langebeck / Spacesuit Media

率先してサステナビリティに取り組む価値

NAGASEとアバランチ・アンドレッティが、現代における企業の姿勢として共に追求するサステナビリティの重要性について、アバランチ・アンドレッティのチームプリンシパル、ロジャー・グリフィス氏は以下のように語る。

「カーレースは長年、環境への影響を軽視してきましたが、こうした状況はもはや許容されないと思います。自動車は、環境汚染や資源の消費に少なからず影響を与える要因の一つです。私たちが率先して長い間目を向けられていなかった課題に取り組むことは、とても重要だと考えます」

フォーミュラEはサステナビリティにおいて最進化形といえるレースだが、参戦チームではレギュレーション以上の取り組みがなされている。アバランチ・アンドレッティの場合、2014年にフォーミュラEに参戦するチームを結成したところから取り組みを本格化。2021年に環境マネジメントシステム規格ISO14001(自社の活動による環境への負荷を最小限にするように定めた国際規格)を取得し、2022年にはFIA環境認証プログラムで最高レベルの3つ星を獲得している。

「これらはすべて、フォーミュラEチームが、チームの母体である『アンドレッティ・オートスポーツ』のなかで先陣を切って実践してきたことです。これらの価値観がNAGASEとも一致したのは意義あることで、今後もチーム一丸となって取り組んでいきます」

ジェイク・デニス(左)とアンドレ・ロッテラー、2人のドライバーとアバランチ・アンドレッティチームのメンバーたち (C)Wiebke Langebeck / Spacesuit Media

もはや「レースは特別」が許される時代ではない。むしろゼロエミッション社会実現のトリガーとして、未来志向の取り組みを実践する場となっている。そんな背景から世界各地で開催されるフォーミュラEが、来春いよいよ「東京E-Prix」として開催される。日本初のフォーミュラEにして、日本初の本格的公道レース。コースやチケットなど、大会概要の発表を楽しみに待ちたい。