Yahoo!ニュース

中部電力×三菱商事 暮らし全般サービスDXに挑む

提供:三菱商事

最終更新:

今回、座談会にご参加頂いた中部電力ミライズコネクトの皆さま。写真右から秋山光輝さん、平岡武志さん、平野恵梨さん、関貴之さん。

共働き世帯の増加や高齢化などで暮らしのニーズの多様化が進むなか、デジタル技術によって個々人に最適な暮らし全般のサービスを提供する新会社が誕生した。中部電力ミライズと三菱商事が共同出資で設立した「中部電力ミライズコネクト」だ。設立から1年、そのビジョンや課題などについてAERA編集長の片桐圭子が聞いた。

――中部電力ミライズコネクトは何をするために設立されたのでしょうか。

秋山:事業基盤は地域のエネルギーを支えてきた中部電力の顧客基盤です。人口減少やエネルギーシフトが起きていくなかで、電力会社の事業環境の変化も生じている。将来の成長をどう取り込んでいくか。地域の顧客に役立つことを何かもっと提供できないか。三菱商事と組むことでより加速度的にサービスを作って提供できないか、というところから、このパートナーシップは生まれています。電気・ガスを提供する関係を起点・基盤として、地域に住む方々に寄り添い、より快適に、幸せな人生を歩んでいけるような暮らし全般のサービスを提供していきたい。社名のコネクトには我が社のそうした思いを強く込めています。まだ手探り状態ですが、顧客についてもっと知る基盤を整えるところから始めています。

――暮らし全般サービスはすでに他社でもやっていそうですが、どう差別化するのでしょうか。

秋山:中部電力の顧客データを活用します。中部電力は地元での知名度も高く信頼も厚い。その名前が社名に入っているので、信頼を得やすいと考えます。いろいろなサービスを提供して使ってもらい、そこからフィードバックされたデータを蓄積、IoT技術などを使って見える化し、さらに必要な分析を加えることで潜在的なニーズも見えてくる。そうした検証サイクルを何度も繰り返しながら顧客のニーズを着実に具現化させていくことで、いま必要なサービスだけでなく、5年後、10年後に必要なものを先回りしてご提案させていただく。すでに、ライフデザインサービスや保険商品の仲介など金融関連サービスは始めていますが、顧客に寄り添い、ライフイベントに合わせて、家計の見直しや資産形成に最適なご提案をしていく。それによって、中部電力や中部電力ミライズの付加価値にもつながっていくものを提供していきたいですね。

暮らしの多様化・高度化が進むなかで、中部電力ミライズコネクトが取り組むのは、地域の高齢者の見守りや子育て支援、食や健康などをテーマに、家族の絆やつながりを育むサービスだ。DX(デジタルトランスフォーメーション)をキーワードに、最新のデジタル技術を駆使して顧客に生涯寄り添う。目指すは「新しいサービスとDX・マーケティングとの融合」。設立時に重点分野に掲げた「金融」「見守り」「リテール(小売り)」のうち、「見守り」「リテール」サービスを2022年春からスタートさせる。

――「DX・マーケティングとの融合」とは具体的にどういうことですか。

平岡:我々がいま目指しているのは、電気・ガスの使用を通じてフィードバックされた情報から、デジタル技術によって、顧客が必要としているニーズを探り、ライフイベントに応じた最適なサービスの構築・提案をするというものです。中部電力ミライズでは、電気・ガス契約者に、家庭向けWEB会員サービス「カテエネ」を提供しています。会員は使用量の見える化やポイント付与、会員限定の優待が受けられる。我々はここから得られる情報と家庭の電気・ガスの使用量のデータとを掛け合わせて、顧客の状況を理解します。たとえば、子育て世帯や共働き、単身などの世帯情報のほか、使用量の変化に応じて、ライフイベントなどの変化までが、世帯の推計モデルから把握できます。今後、世帯の変化のタイミングでサービスを提案することができれば、課題解決にもつながるのでは、と考えています。

電力使用パターンから高齢者の異変を感知

――春から見守りと買い物代行事業の新サービスがスタートしますね。

関:見守りサービスは、通信機能を持った次世代電力計「スマート メーター」を設置し、見守りたい高齢者宅の電気使用量に異変が生じたときに、離れて暮らす家族などに知らせるサービスです。いつでもスマートフォンのアプリから、高齢者に異変がないかを確認できます。電力メーターは朝起きて電気をつけ、電気ケトルでお湯を沸かす、といったことも感知できます。

――日々の電力使用のパターンから、状況の変化がわかるのですね

関:はい。しかも、カメラやセンサーといった追加の機器の設置もいりません。ですから、高齢者側の心理的なハードルも低い。この見守りサービスを活用して、離れて暮らしているご家族同士のコミュニケーションを促進できるようなサービスも考えています。かなり実証なども進んできていますが、オフィスで考えていても埒があかないことも多いです。実際に使っていただく顧客の声をいかに集めることができるか。「煮詰まったら、顧客の声を聞く」というのが大事ですね。

平岡:マーケティングの側面からも、データだけでは顧客の顔は見えないです。データだと相関関係は見えても、因果関係は生の声を聞かないとわからない。仮説を立てた内容が合っているか、アンケートやインタビューなどでできるだけ顧客の生の声を聞くよう心がけています。

代表取締役社長 秋山光

ネットリテイルサービスはコストコ人気商品から

――買い物代行事業のスタートは会員制倉庫型店「コストコ」から。

平野:専用アプリからご注文いただいた商品をお客様のお宅にお届けする買い物代行サービスですが、コストコでもとくに人気のあるお惣菜や生鮮食品を含めた幅広い商品を取り扱う予定です。どなたでもご利用可能で、メリットとしては人気の商品が買えることや、大きい商品、重い商品なども運ぶ手間がないこと。商品の配送はまずはコストコ岐阜羽島倉庫店から行います。コストコ倉庫店でのお買物の楽しさをご自宅にいながらアプリ上で体験してもらえたらと思います。

――このサービスは中部電力ミライズの顧客限定ですか?

平野:徐々に配送エリアを広げていく予定ですが、配送エリアにお住まいの方ならどなたでもお使いいただけます。ただ、カテエネ会員には、会員限定のクーポンの発行やポイント付与などでメリットを感じてもらえる設計にしていきたいです。

秋山:コストコ買い物代行事業は多くの方に利用していただいてサービスのボリュームを上げていきたいので、使いやすさを重視しています。地域の皆さまの買い物の不便を解消したい。東海地区のほかのスーパーや地元小売店にも事業を広げ、他にはない地域密着型サービスを作っていきたいと考えています。

マーケティング本部 マーケティング部課長(企画・運営統括)平岡武志

※AERA 2022年3月7日号(2022年2月28日発売)掲載