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新型コロナウイルスに負けない!元気いっぱい、かわさきの子どもたち

提供:川崎市

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感染対策を踏まえた毎日の学校生活。子どもたちに「元気な日常」が戻りつつある

令和2年6月の学校再開以降、各校では新型コロナウイルス感染防止対策を行いながら、「withコロナ」の日常をスタート。子どもたちは去年までとは異なる生活様式のもと、授業、休み時間、給食、放課後、学校行事などで、新たな過ごし方や楽しみ方を見つけ始めている。川崎市川崎区にある川崎市立東門前(ひがしもんぜん)小学校で、"子どもたちの今"を見つめた。

子どもたちの歓声と笑顔で学校が生き返る

「厄除けのお大師さま」として親しまれる川崎大師・平間寺のすぐ近くにある東門前小学校。横浜や東京都心へのアクセスも良いことから、近年は大規模マンションが立ち並び、多くの子育て世代が移り住んでくる人気の地域でもある。

東門前小の児童数は969名(2020年10月時点)で、1学年あたり4~5クラスの編成。川崎市の児童数は、少ない小学校で160~230名ほどなので、東門前小がかなりの大型校であることが分かる。ある教職員は「学校の一斉臨時休業期間を経て、大勢の子どもたちが元気に登校してきたときは、学校が息を吹き返したと感じ、うれしくなりました」と、ほほ笑む。

東門前小は、京浜急行電鉄大師線・東門前駅の目の前

子どもたちは臨時休業の時期を振り返って、「すごく学校に来たかった!」「今は鬼ごっことか、みんなと遊べて楽しい!」「友達と会いたかった」「給食をずっと楽しみにしていた!」「校庭で思いきり運動がしたかったから、学校にまた来られてうれしい!」と笑顔全開で話してくれた。

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「withコロナ」の学校生活

東門前小では、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、子どもたちの安全・安心をどのように守っているのだろうか。

まずは、マスク着用、手洗い・うがい、机の間隔を空けるといった基本を徹底させている。体育の授業では、密にならない運動種目を取り入れる、リレーのバトンの代わりに、運動会の応援などでよく見られる房飾り(ポンポン)をつくる材料となるポリエチレン製のテープを用いるといった工夫をする。音楽の授業では、リコーダー練習などでマスクを外さなければならないときには、横や後ろを向かないというルールを新たに設定している。

保護者たちもPTA活動の一環で、子どもたちが帰った放課後に、机や椅子など、よく手を触れそうな場所すべてを消毒するといったサポートを行ってきた(学校再開時~10月でいったん終了)。子どもたち自身も、身体に直接触れる鬼ごっこを避け、ポリエチレン製のテープをしっぽのように衣服に挟み込み、それを取り合う「しっぽ鬼」で遊ぶなど、創意工夫を楽しんでいるようだ。

校庭で体育の授業を行う際はマスクを外して良いが、一定の距離を必ず取る

筒井愛子校長は、子どもたちに日々、教えられることが多いと語る。「始めは不安そうにしていた子どもたちも、今はみんな前向きに、元気に、学校生活を楽しもうとしています。先日、1年生のある担任教師が『給食前に机を拭いたり手指を消毒したりすることを、子どもたちは結構楽しんでやっています。子どもは楽しみを見つける天才ですね』と報告してくれました。大人ですら、ちょっと面倒だなと思うようなことも、"いつもとちょっと違う出来事"として、楽しみに変えてしまう...子どもたちをみならわなくてはと感心したエピソードです」

給食前には子どもたち一人ひとりの机と手を、各担任が消毒

前を向くことの大切さを伝えたい

学年の終わりと始まりが交差する年度末を挟んだ大切な3カ月間、学校生活を奪われた子どもたち。その臨時休業期間中、校長や教職員は、児童の「感染防止対策、授業数減による学習の進め方、心のケア」に関する話し合いに多くの時間を費やした。

特に心のケアについては、児童の見守りや学校の相談窓口の役割も担う児童支援コーディネーター(CO)が率先して対応。「もしも感染してしまったら」という場面想定から、子どもたちが抱く不安や差別防止なども含めて教職員間で考える機会を設け、対応策を検討・共有した。

COを務める草刈準也先生が、学校再開当初を振り返る。「臨時休業期間が長かったせいか、特に低学年の児童は学校を軸とした生活リズムをなかなか取り戻すことができませんでした。そのため、子どもの家までお迎えに行くこともありました。高学年は大人と同じように"状況が見える"ため、より一層のケアが必要。修学旅行に行きたいとか運動会がしたいとか、前向きなことを言ってはいけないと感じていたようで、子どもたちと対話を繰り返し、『思ったことを言ってもいいんだよ』という雰囲気をつくっていくことが、私の最初の仕事でした」

昨年度はクラス担任を務めていた草刈先生。今年度は児童支援コーディネーター専任となった

「新しいクラスになじめない」「友達とどう接していいか分からない」「みんなの流れについていけない」といった相談が、登校再開当初は多かったという。「しかし今は、『友達と手をつないで遊びたいけれど、それはできない。もう少し触れ合って遊ぶにはどうしたらいいんだろう』『制限があるなかでどうしたらやりたいことができる?』という、まさに"withコロナ"に即した悩み・相談へと変化してきています。子どもたちと、『一緒に考えてみようよ』という会話が増えました」(草刈先生)

自主性を育むチャンスに

給食の時間、放送クラブ所属の6年生2人が校内放送で、自分たちが考えたクイズを出している。「今日の給食メニューのフルーツポンチには、パイン、みかん、野菜ゼリーと、もう一つ材料が使われています。それはなに?1、ラ・フランス。2、リンゴ。3、桃。答えは...ラ・フランス。これはフランス原産の西洋梨の品種で...」

クイズの出題を始めたわけを2人はこう答える。「みんなに楽しんでもらいたいのが一番の理由です。なんとなくみんなの顔が暗かったので、クイズを出すことでおどろいたり面白がったりして、楽しい気持ちになってくれたらと思って。これからも新型コロナウイルスに負けないように、自分もみんなも楽しくなれるアイデアを出していきたいです」

また、別の6年生3人は「もっといい学校にするために、私たちにできることを考えました」と、バラバラに傘がさしこまれていた傘立てをきれいに整理したことを、筒井校長に報告に来た。
「こうした6年生がいてくれると、学校は落ち着いていきます。大きな学校行事がなくても、6年生が様々な場面で活躍してくれていることがうれしいですね」と、筒井校長。

指先まで丁寧に。低学年の子どもも自発的に手洗いをする

養護教諭の前徳友美先生も、保健室に来る子どもたちから、その成長を感じている。「以前よりも『私の平熱は何度で、それと比べて何度高いか』『朝と比べて、今の体調は』などを詳しく説明できる児童が、高学年・低学年にかかわらず増えました。自分自身の健康に関する認識が少しずつ高まってきているのではないでしょうか。また、マスクを忘れて登校した児童は、まず保健室へ寄り、マスクを着けてから教室に入ることが自然にできています」。"コロナ禍"の影響で図らずも、子どもたちの自主性や自立心が芽生え、育まれているようだ。

多様性を受け入れて未来をつくっていく子どもたち

7つの区で構成され、南北に広がる川崎市。商業施設、緑地、工場、タワーマンション群など、区ごとに特色があり、学術研究機関も多いことなどから、市外からの子育て世代や外国籍の家族の転入も多い市だ。市では、子どもたちがそうした環境下で多様性を受け入れながら、またお互いを認め合いながら人間関係を積み重ねていけるよう、独自の「かわさき教育プラン」を打ち立てている。同プランの基本目標となる「自主・自立」および「共生・協働」の実践手法として、約10年前から市立学校に導入されているのが「かわさき共生*共育プログラム」である。

子どもたちは、学習はもちろん、人間関係づくりを学校で学ぶ

「一言で言えば、人間関係づくりのためのプログラムです。例えば、友達の気持ちを察することの難しさやチームで協力することの大切さを、"声を出さずにチームで助け合うエクササイズ"を通して学びます。年間6時間の学校裁量の時間を活用しながら、自分づくり、友達づくり、仲間づくり――この3つを繰り返し行うことで、集団凝集性を高めていくのです。こんな時期だからこそ、子どもたちには人とのつながりを大切に、前向きに、豊かな時間を過ごしてほしい。かわさきの子どもたち一人ひとりが、元気に笑顔でたくましくこれからを生きていけるよう、私たちも力を尽くします」(筒井校長)

まだ先の見えないコロナ禍ではあるが、日々の不安や戸惑いをなんとか消化していこうと、子どもたちなりに頑張っている。そんな頑張り工夫する姿、そして学校生活を楽しむ姿に、大人も元気をもらい勇気づけられている。

「子どもたちのはじける笑顔に元気をもらっています」と、筒井校長