志望大学への現役合格を目指す高校生を対象に、大手予備校で初めて「1月開講」に踏み切った河合塾の「高校グリーンコース」。2024年1月に新カリキュラムがスタートしてからまもなく1年を迎えるが、「偏差値や志望大学への合格判定が上がった」「やるべきことを自覚して積極的に取り組む生徒が増えた」など、生徒や講師陣からは変化の手応えを実感する声が聞かれる。大きくブラッシュアップした「高校グリーンコース」の「学力を伸ばす仕組み」について、河合塾大阪校の木村裕靖校舎長に聞いた。
河合塾高校グリーンコースの詳細はこちら「間に合う」「間に合わない」高2の秋冬が分岐点
――毎年4月だった「高校グリーンコース」の開講を、1月に早めた理由を、あらためて教えてください
早期スタートが望ましいことはわかっていても、多くの高校生にとって難しいのが実情です。特に高2生の秋冬は、部活動や文化祭などで忙しく、学校行事から受験モードに素早く切り替えられる人、うまく切り替えられない人、に分かれていきます。大学受験を終えた高校生に行ったアンケートでも、7~8割が「学習時間が足りなかった」「早くスタートできなかった」と振り返っています。
そこで「何とかしなきゃいけないけど、なかなか受験準備に動けていない」という多くの高校生にスムーズに切り替えてもらおうと、高2生、高3生の開講を前学年の「1月開講」に改めました。
この結果、年間で各講座の授業回数が、高2生は6回、高3生は13回(近畿地区の場合)増えています。3年生の夏までに入試に必要な学力の基礎を固め、秋以降、実際の入試レベルの実戦演習にじっくりと取り組む時間を確保しました。また、「学力の伸びを最大化する3つのテスト」によって、「志望大学の現役合格への最短ルート」をつくることができたと考えています。
25年度から大学入学共通テストが「新課程入試」となります。数学や国語の試験時間増加や新教科「情報」の追加により、「思考力・判断力・表現力」を問われることへの準備も重要になっています。これも早期開講の大きな目的です。
――1月開講からまもなく1年。具体的な成果は見えていますか
近畿地区の各校舎での集計ですが、一部の講座では「全統模試」での平均偏差値が、4月開講だった前年の同時期よりもアップしています。例えば、高3生の「京大理系」数学では、対象者の平均偏差値が2.5も上がっています。これは、合格可能性の判定が1ランク高くなる水準です。
受験学習に対する意識の高さといった、数字には見えない変化も強く感じています。河合塾では進路や生活の指導を行うチューター(進学アドバイザー)が定期的に生徒と面談をしますが、1月から受講を始めた生徒たちには、自分のなかで「やるべきこと」が明確にあり、どんな課題にどのように対応しているかをしっかりと話せる人が増えているように感じます。
「早く受験モードに切り替えることで、苦手分野を重点的に学習するなど『意識』を日々の『行動』に変えることができます」と話す木村裕靖校舎長
学力を伸ばす講師陣の「プロフェッショナルとは」
――河合塾ならではの、「学力を伸ばす仕組み」とはどのようなものですか
ベースになるのは、質の高い授業です。河合塾には学生アルバイトの講師はいません。プロの講師が、入試問題を分析しつくして作ったオリジナルのテキストを使い、熱のこもった授業を展開しています。ひとつのテキストは、十数人の講師が関わり、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論をしながら作成されています。「全統模試」の出題も同様です。講師はテキストの解説や出題の意図を徹底的に理解した上で、「わかってもらいたい」「学力を伸ばしてもらいたい」という一念で授業に臨みます。河合塾が守りつづけてきたこだわりですね。
生徒や保護者からは、「先生の熱量のすごさに感動しました」と、お言葉をいただくことも多いです。でも、高圧的な感じではなく、穏やかで優しいタイプの講師が多いと思います。そのためか、授業後、個別に質問している生徒も目立ちますね。
ITを駆使 弱点を見逃さない「チェックテスト」の底力
――新カリキュラムで、学力を最大限に伸ばす仕組みとして構築した「3つのテスト」とは、どのようなものですか
毎回の授業での習得度がわかる「チェックテスト」、スタート学期(1~3月)と1・2学期の学期末に行う「学力診断テスト」、そして、「全統模試」です。
これまで学力をチェックする仕組みはスパンが長く、「全統模試」が中心でした。個々の課題をみつける効果はありますが、より短いタームで習得度を測り、課題をみつけて、素早く改善していこうと、「チェックテスト」「学力診断テスト」を加えました。
「チェックテスト」の難易度は講座レベルで異なりますが、その日の授業に関連した内容から出題され、10分程度でできる内容です。解答はスマホなどで撮影し、生徒専用のホームページを通して提出する仕組みです。多くの生徒は、テキストの内容を振り返りながら「チェックテスト」に取り組み、復習も同時に進めているようです。
講師はクラス内の学習状況を把握しており、翌週に「みんな、ここの部分ができてなかったよね」とフィードバックできます。チューターもその状況を把握しているため、チューターからも「よく頑張っているね」と個別にほめることもあります。
クラス内だけでなく、全国の河合塾の生徒たちのデータも集計されており、タイムラグはありますが、各講師は全国の分野ごとの正答率など傾向を把握でき、それぞれの問題について、自分のクラスの生徒の理解度を比較しています。「全統模試」だけでなく、日々のテストでもこうした分析ができるのは、今回、大々的に自社開発したシステムの成果です。
「テキストは大勢の講師が議論を重ねて作成しています」。全国ネットワークと膨大なデータ、経験を活かした河合塾の指導体制について話す木村裕靖校舎長
――学期末の「学力診断テスト」は「全統模試」とどう違うのですか
「全統模試」は全国の受験生(2023年度実績 年間受験者数の延べ約266万人)と競い合い、志望大学への合格可能性や必要な学力を測ります。このため、母集団の出来次第で結果が変化します。これに対して、「学力診断テスト」は年間を通じて、共通の指標で自分の学力を測るテストです。長年にわたって蓄積されたデータ、ノウハウで各科目の学習項目について、「この問題が解けたら何ポイント」といったかたちで、配点されています。母集団の状況に左右されないため、前学期との比較で、自身の理解度の変化、学力の伸びが明確にわかる仕組みです。
成功への再現性 先輩たちの膨大な学習軌跡から導く
――「学力診断テスト」はどのように活用されるのですか
チューターは毎学期末に生徒と面談をするのですが、「学力診断テスト」の結果から気づくことも多いですね。弱点克服など課題を共有し、次学期の目標を具体的に話し合うことができます。「次回の『学力診断テスト』ではこのレベルをめざそう。そのためには、『チェックテスト』でこういう問題ができるようにしたいね」といった感じです。毎回の授業の理解度をみる「チェックテスト」の積み重ねが、学期末の「学力診断テスト」の結果につながります。
膨大な入試データを使って指導できることも、河合塾の大きな強みです。過去の合格者がどういう学習をして、どういう推移で合格に至ったかとか、科目ごとでどういう割合で勉強していたか、など。もちろん、生徒個々で異なる面もありますが、再現性がある部分も多いです。ときには、結果が及ばなかった先輩たちのデータを共有し、失敗を避ける参考にしてもらうこともあります。「全統模試」のデータも生徒に直接提供しており、保護者の支持を得ています。
――生徒と並走しながら支援するチューターの役割は大きいですね
生徒1人に対し、相談内容によって職員1人、学生1人のチューターがサポートします。学生チューターは、京都大、大阪大をはじめ医歯薬系も含む関西の数々の難関大学の在学生たちです。年齢も近いし、河合塾OBが多いので、受験体験や学生生活について気軽に相談することができます。
職員チューターは受験生活に加え、志願先の絞り込みなど進路指導も担当します。各大学や学部の最新情報や就職状況などの進路情報を学ぶ「カレッジカウンセラー」という制度もあり、キャリアアドバイザー的なスキルも磨いています。
――大阪校の雰囲気を教えてください
多くの高校のいろいろな志望校の生徒が切磋琢磨(せっさたくま)して学習できる環境が魅力です。自習室も教室型、吹き抜けのテラス型、机に仕切りのあるところ、ないところ、とさまざまなタイプがあり、その日の気分で自由に選べます。500席以上ありますから、空席がない、ということはありませんね。
生徒からは「自宅で勉強していたら、ここまで受験生モードになれなかったかなと思います。学習に必要なものが整った環境で、やるべきことも明確になり、おかげで手ごたえを感じています。1月から通ってよかったです」(大阪大文系志望、大阪府立高校3年、男子)などうれしい声も聞かれます。
梅田に近く、通学に便利な河合塾大阪校。にぎやかな繁華街からは離れ、落ち着いた雰囲気で勉強できる
――高校生、大詰めを迎える受験生にアドバイスをお願いします
長年見ていて感じますが、受験は頑張ればすぐに成績が上がるとは限りませんので、メンタル面でしんどくなることが多いです。かつ、本番が近づくと、周りの人がすごくできるように見えてきて、気持ちが落ち込んだり、勉強が手に付かなかったりすることもあります。それはみんなが通る道。河合塾では講師、チューターとコミュニケーションをとることで、安心して本番に臨めます。しっかりお手伝いしていきます。高1生、高2生は早期準備の大切さを理解して、よいスタートをスピーディーに切ってほしいですね。受験は自らを成長させる機会でもあります。くじけずに頑張ってほしいですね。
提供:学校法人 河合塾