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"感染対策"のはずが死亡事故に。国では1000人以上が犠牲の事件も...知らないと怖い「加湿器」選び

提供:一般社団法人日本空気と水の衛生推進機構

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新型コロナウイルスやインフルエンザといった感染症に特に気をつけたい冬の時期。空気が乾燥した環境を好むウイルスへの対策として有効なのが「加湿器」だ。

湿度を高めることでウイルスの働きが抑えられることに加え、のどや鼻の粘膜の防御機能を保つ効果もあるため、自宅やオフィスでそれぞれ使用しているという人も多いはず。近年では小型の商品も増えており、寒い季節が近づくと、店頭にはさまざまデザインの加湿器が並び始める。

知らず知らずのうちに、"菌"や"カビ"を撒き散らしていることも...

しかし、デザインだけを見て加湿器を購入すると、思わぬ健康面での"リスク"に晒される可能性もある。その主な原因となるのは、加湿器内に発生しやすいカビや、その中で繁殖する雑菌だ。高齢者や赤ちゃんには命の危険すら伴う場合もあり、過去には死亡事故も発生している。

加湿器のタンク内にはバクテリアや雑菌が繁殖しやすい(画像はイメージです)

2017年12月、大分県国東市の老人ホームに入所していた80代の男性2人が、レジオネラ肺炎を発症した。翌年1月には、同じ施設をショートステイで利用した90代の男性がレジオネラ肺炎によって死亡。原因となったレジオネラ菌が検出されたのは、インフルエンザ対策のために施設に設置されていた超音波式加湿器の中だった。

施設側はこの加湿器のタンク内の水を毎日交換していたほか、週に一度はタンク本体もブラシを使って洗浄していたという。にもかかわらず、死亡事故後に行われた調査では、基準値の2万2000倍もの菌が検出された。ほかにも、2007年に新潟県で、60代の男性が超音波式加湿器内のレジオネラ菌が原因となって死亡した事例などが報告されている。

また、レジオネラ菌ではなくとも、カビや雑菌を吸い込むことでアレルギー反応が引き起こされ、加湿器肺炎(過敏性肺炎)を発症することもある。肺炎は未就学児やお年寄りの死亡原因の上位に食い込む疾患であり、そのリスクは決してひとごとではない。

加湿器から飛散した雑菌やカビは肺炎の原因に

さらに、お隣の韓国では、超音波式加湿器のメンテナンスに使用されていた薬品が原因で大規模な事件が発生した例も存在する。

2001年に韓国内で販売が開始された加湿器用殺菌剤「オキシー・サクサク」は、"子どもにも安全"とうたわれ、大型スーパーにも並ぶヒット商品だった。しかし、2006年頃から妊婦や子どもが肺疾患で死亡する例が相次ぎ、2011年には韓国政府がオキシー・サクサクに含まれる化学物質・PHMGを原因と認定。約10年間で450万個以上を売り上げていた同商品に回収命令が出される事態となった。

その後発覚したメーカー側のずさんな対応や隠蔽(いんぺい)疑惑から"家の中のセウォル号事件"と呼ばれるこの事件では、2016年末時点で死者1006人、負傷者4306人の被害申告が政府へ寄せられており、推定死者は2万人にも及ぶとする説もある。

こうした加湿器を巡るトラブルを避けるために重要なポイントとなるのが、加湿器の"選び方"だ。

人気の超音波式はもっとも高リスク。低リスクなのは......

実は、先述した加湿器を巡る死亡事故や事件には、ひとつの共通点がある。それは使用されていた加湿器がいずれも「超音波式加湿器」だったことだ。

超音波式加湿器は、タンクに入れた水を超音波で震わせて噴出させる形式のもので、店頭で見かける機会が一番多いタイプ。デザイン性が高いものも多く、白い蒸気が上がる見た目から"加湿している感"が得られることに加え、本体の値段や電気代が安く抑えられるため人気が高い。しかし、水の粒子が大きいので広がりづらく、部屋全体が加湿されにくいというデメリットがある。

そして何より、もっとも健康被害のリスクが大きいのがこの超音波式であることは見過ごせないポイントだろう。水を溜めておくタンク内は汚れやすい上に、超音波式はタンク内の水を液体のまま空気中に飛ばすため、雑菌やカビが繁殖していた場合はそれらも一緒に飛散してしまうことになる。つまり、超音波式加湿器を使うのであれば、常に清潔な水を用い、タンクの清掃を怠らないことが必須となる。

しかし、大分県での事例からも分かるように、加湿器のタンクは"キレイにしたつもり"でも実際には清潔にしきれないことも多い。さらに、雑菌対策として除菌剤や殺菌剤を使った場合でも、超音波式ではその成分が水とともにそのまま放出されてしまうことになるため、韓国のように有害成分が入っていた場合の危険性も大きくなってしまうのだ。

では一体、どんな加湿器を選べばリスクを減らすことができるのだろうか。

加湿器には3種類のタイプがあり、メリットやデメリットはさまざま。安全性の面ではスチーム式や気化式が◎

加湿器はその加湿方法によって3種類に分けられる。超音波式のほかにはスチーム式と気化式があり、健康面でのリスクを減らすことを考えるならばそのどちらかを選びたい。

スチーム式は文字通り、水を加熱しスチームにして放出するタイプ。60度以上で死滅するレジオネラ菌を始めとしてほとんどの雑菌を取り除くことができるため、より清潔な使用が可能だ。一方で、過剰に加湿してしまうため家具や書籍を傷めやすい、電気代がかさむといったデメリットも持ち合わせている。

気化式は、水を含ませたフィルターにファンで風を当て、水分を含んだ空気を放出させる方式。超音波式に比べて水の粒子が非常に細かく、さらにカット機能のあるフィルターを通すため、雑菌やカビが飛散しにくい。

空気に溶け込むように広がるので加湿されるまでに時間がかかるが、その分長い時間、広範囲を加湿し続けられるのはメリット。スチーム式と違いヒーターを使わないので、吹き出し口が熱くならず、小さな子どもがいる家庭でも安心して使えるのも嬉しいポイントだろう。

タンクの水を除菌できる気化式加湿器も登場

気化式はより安全とは言っても、フィルターに付着した雑菌が風に舞う場合もあるので、タンク内の水やフィルターを清潔に保つことは必須だ。最近では、タンク内の水やフィルターを除菌できるタイプの気化式加湿器も登場し、注目を集めている。

"感染対策のつもり"で設置した加湿器が原因で、体調を崩したり、命の危機に陥ったりしては元も子もない。より安心して寒い季節を過ごすためには、リスクの高い超音波式ではなく、スチーム式や気化式の加湿器を使用したいところ。加湿器が本格的に活躍するシーズンを前に、いま一度使っている加湿器を見直してみてはどうだろうか。