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サービスステーションを軸とした成長戦略 埼玉の地で「愛車の町医者的な存在」へ

提供:出光興産株式会社

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株式会社志村 代表取締役社長 高橋秀明さん(右)
出光興産株式会社 梶田実さん(左)

地域の人々の暮らしを支えてきた出光興産のサービスステーション(SS)は、より多様で幅広いサービスを展開する新たな拠点へと進化させる「スマートよろずや構想」を掲げています。この構想を顧客の満足を広げていくことで具現化するのが、埼玉県内でSSを中心としたビジネスを展開する株式会社志村です。同社を率いる高橋秀明代表取締役社長と、出光興産関東第二支店の梶田実さんが、地域を支える事業のいまとこれからを語り合いました。

逆風をものともしない、SS業を軸とした経営

株式会社志村 代表取締役社長 高橋秀明さん

──志村の創業者・志村武一郎さんは、もともと本田技研工業(ホンダ)に勤務していたそうですね。

高橋 そうです。志木市に代々続く志村家の長男だったため、もし転勤辞令が下りたとき、この地を離れていいのかと考えあぐねていたとか。そんななか、取引先の出光興産の方から「ガソリンスタンドをやってみては?」と提案され、起業を決意したそうです。

それが1970年のことですが、同じタイミングでホンダ創業者の本田宗一郎さんから「ホンダのカーディーラーもやってほしい」と請われ、SSとカーディーラーを隣同士で経営する現在の形が出来上がりました。

──高橋社長は大学卒業後、出光興産に入社した後、志村の社員となったとか。

高橋 出光興産で出会った妻が創業者の娘だった縁もあり、義理の兄に熱心に誘われて2000年に志村に入社しました。当時の店舗数は4店でしたが徐々に増えていき、今では2024年5月にオープンした「シムラス北朝霞SS」を入れて全13店舗となっています。業績も好調で、出光興産の全国優秀表彰では毎年表彰されています。また、1994年にスタートした車検サービスは順調に増え続け、7200台を突破。2014年に取り組み始めた自動車保険も右肩上がりに成長しています。

──ガソリン需要が減り、SSにとっては厳しい昨今、店舗数も契約台数も右肩上がりというのはそうはないことですよね。

高橋 SSが一番多かったのは1994年ごろで、当時は全国におよそ6万カ所あったSSも、今では3万を切り、数が減っているのは事実です。ただ、われわれの場合は逆に増えているので、やり方次第ではないかと思っています。給油に来てくださるお客さまがいるのだから、給油と相性の良い車検、車検と相性の良い自動車保険などと少しずつ広げていって、一人のお客さまからいろいろなものを任せていただく。お客さまにとっても一カ所で済ますことができるのは便利ですし、車検や保険は満足すれば継続してお願いしてくださるケースも多々あります。そういうお客さまをさらに増やしていきたいです。

何より、お客さまにお声がけをしていることが良い方向に作用していると思います。給油の際、お客さまのお名前を呼びながらあいさつをしたり、メンテナンスのタイミングをご提案したりする。こうしたSS業のオペレーションを日々積み重ねて、お客さまから信頼を得ることが、車検や保険の契約数増加にもつながっていると思います。

根底にあるのは、偉大な経営者たちから受け継がれた経営理念

──信頼関係を築くだけでは、車検や保険の契約に至るのは難しいのではないでしょうか?

高橋 もちろん、お客さまのニーズをくみ取りながら、私たちの会社ならこんなメリットがあります、ということをお伝えするのも大切です。たとえば車検なら、陸運局指定工場でプロの整備士が行うこと、事前見積もりの徹底といった安心面や、ガソリン割引特典などのお得さを伝えることで、多くの方にご利用いただいています。

──志村さんは「窓口ひとつでトータルカーライフサポート」とうたっていますが、実際には事業内容をどこまで広げていく予定なのでしょうか?

高橋 われわれのビジョンは「新シムラス満足連鎖 2026」に描いています。これは、2016年に10年後を見据えて立ち上げたものです。私は特約販売店の次世代経営者を対象として出光興産が定期的に開催している「出光経営カレッジ」の1期生なんですが、その研修で「ビジョンは絵にした方がいい」と学んだのが役立っています。

給油に始まり、オイルやタイヤの交換、洗車やコーティングなどを行う「愛車の町医者」的な存在となり、さらに町医者ではできない手術を総合病院で行うように、センターでの車検・修理につなげていく。ここまでは他のSSでもよく見られますが、当社では自動車保険を扱ったり、そこからつながりのできた保険会社さんと提携してレンタカーを提供したり、さらにはそのクルマを中古車販売したり、出光興産の「オートフラット」を取り入れ、カーリース事業をしたり......というところまで行っています。その先は、保険つながりで火災保険を経て、お客さまのライフサポートまでできれば、EV化が進んでも対応できるのではないかという考えです。この構想を描いた当時から時代は変わってきているので、さらなる進化へ向けて、そろそろ調整が必要ですね。

株式会社志村HPより

──このように事業を広げていく中で、大切にしていることは何でしょうか?

高橋 志村が起業時に立ち上げた経営理念、「人間尊重」です。これはもともと、出光興産の出光佐三さん、ホンダの本田宗一郎さんのお二人がともに掲げていたもの。仕事を通して社会から尊重される人に成長し、事業を通して人を育てることで、一人一人が社会から尊重される人の集団になれば、その企業も社会から尊重されるというのが、基本的な考え方となります。

創業者の志村武一郎は2023年に亡くなりましたが、本当に良い言葉をたくさん残してくれました。特によく言っていたのが、「売り上げではなくて相手の喜びを求めましょう」という言葉。これはお客さまだけではなく、取引会社さま、従業員とその家族に対しても言えることで、「どのように動いて何をすると喜ばれるかを追い求め、実践していけば、売り上げは後からついていきますよ」と。この話は、何かにつけて引用していますね。

梶田 私は4月から志村さんの担当になったのですが、高橋社長はいつも社員の方にわかりやすくシンプルな言葉でお伝えしていますよね。決して難しい言葉を使わないのでビジョンも経営理念もすごく浸透していて、結果、社員のベクトルが一緒です。いま、自分がなぜこれをしているのかを考え、何につながるかを理解していることにより、しっかりと成果が出ていると思います。

その成果が明確なのが「idemitsuでんき」。出光興産で表彰する全国優秀店の「idemitsuでんき部門」で、志村さんのSSの全てが全国上位にランクインされています(新規開店のSSを除く)。全店が上位ということは、つまり社長の思いやビジョンがスタッフに伝わっていて、全員が同じ方向を向いている成果です。ちゃんと腹落ちしたからこそ、各自で動けているというのをとても実感しましたね。

「スマートよろずや構想」でSSは地域に合わせて変化・進化する

出光興産株式会社 梶田実さん

──出光興産が掲げる「スマートよろずや構想」について、改めてお聞かせください。

梶田 コンセプトは、全国にある出光興産のSSが地域の人の豊かな暮らしをサポートする生活支援基地になること。既存の燃料だけでなく、カーケアサービスだったり電気だったりと、いろいろな取扱いメニューがありますが、出光興産が特販店さんに「これをやってください」と言うより、いろいろなメニューを準備しておいて、特販店さんが独自に展開されているサービスも含めて、各エリアにいるお客さまのニーズに合うものを提供してもらうという形です。お客さまのニーズは時代とともに変わるので、地域に密着している特販店さんに、そのニーズを汲み取ってもらいながら多様なサービスをご提供したいと思います。

さらにもうひとつ思うのは、デジタル全盛の今でも、人とのつながりを大事にしたいということです。先ほど高橋社長がお話ししていたように、名前を呼んであいさつするといったことは、いつの時代においても大切だなと思います。

給油目的で来店した顧客への丁寧な声かけが、その他サービスへの関心につながるケースは多い。

高橋 「スマートよろずや構想」では、出光興産の『Drive On(ドライブオン)』が大きなポイントになると思っています。お得に給油できてカーライフにも役立つアプリですが、これを使えば当社が新しいことを始めるとき、何万もの会員にプッシュ通知で案内できます。たとえばクルマの乗り換えを検討する人に「特選車です」とご案内できますし、クルマのリース契約などにも活用できます。われわれは店舗に来ていただいたお客さまとの直接のやりとりに注力してきましたが、Drive Onは今までと違った層のお客さまにもアプローチできるのが良いですよね。

また、出光興産がトヨタ自動車株式会社と協業で開発する、次世代電池にも期待しています。われわれが取り扱えるようになれば、電気つながりで何か新しいビジネスなども考えたいですね。

直近の目標は「idemitsuでんき」の獲得数を増やすこと

──今後、事業ではどのような展望をお持ちでしょうか?

高橋 始めてからまだ1年もたっていない「idemitsuでんき」の契約数をまずは増やすことですね。目先の目標は、3000件の顧客獲得。今のペースでもこの数に届くのは5年近くかかるので、それを半分の期間で実現しようという話を先日の社員総会でしました。

梶田 社長の言葉を聞いて、社員の皆さんは「このままでは達成できない」「どうすればいいか」といったことを考えていらっしゃると思います。もちろん、われわれも志村さんの目標達成に向けて、しっかりアシストしていきたいですね。

──今までの半分の期間でというと、大きな目標ですね。

高橋 数字だけ見ると、確かに難しく感じるかもしれません。でも、車検や保険と同じで、実は電気は継続率がとても高いです。そういう意味では不可能ではないかなと思います。

理念やビジョンにこだわっているのと同じように、目標に対するこだわりもみんなで大事にしていきたいです。仮にその目標に向かってがんばれていないのなら、「それはなぜなのかを考えてほしい」と伝えています。社員が喜びを感じながら取り組める環境をつくるのはわれわれの仕事なので、数字を求めるだけではなく、年間休日を増やしたり、勤務時間を短くしたりと、求められることを少しずつ実現するように心がけていければと思います。

地域密着事業だからこそ、社員が楽しむことが大事

社長も社員も同じ方向を向き、一丸となって業務にあたっている株式会社志村。そこで実際に現場で活躍する社員の方にもお話を聞いてみました。ご協力いただいたのは、店頭業務をメインとするマネージャーの大内康平さんと、店内業務全般を行うマネージャー代理の金子香代子さんです。

「創業者の方針を受け継いで、お客さまが来店されたら必ずおしぼりをお出ししています。これは、手も心もきれいにしていただけるうえに、会話のきっかけにもなるツール。経費はかかっていると思いますが、絶対にやめることはないでしょうね。ある意味、最も志村らしい業務のひとつ。経営理念である"人間尊重"をまっとうして、お客さまに喜んでいただけることを継続すれば、結果は勝手に付いてくると思っています」(大内さん)

「保険の契約をされているお客さまが事故や故障に見舞われたとき、私たちが入ることで負担が軽減し、"ありがとう"と言われたり頼りにされたりすることにやりがいを感じます。"人間尊重"を実践するために必要なのが、日本一のあいさつをすること。お客さま、取引会社さま、あとはスタッフ間で感謝の気持ちを持って、しっかり名前を呼んであいさつしています。初めは目も合わせてくれなかった方が、続けていくうちに答えてくれて、仲良くなり、常連さんになるなんてことも、よくあるんですよ」(金子さん)