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「日本一実社会と近い学校」を目指す、HR高等学院の先進的な取組みとは

提供:HR高等学院

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取材に応じてくれたHR高等学院共同設立者の山本将裕氏と同校の特別顧問で東京学芸大学教授の金子嘉宏氏

 2024年度の通信制高校への進学者は29万118人。過去最多を更新、今や高校生の10人に1人は通信制高校に進学していることになる。

 この潮流の中で大きな注目を集めているのが、2025年4月に開校予定の通信制高校サポート校「HR高等学院」。企業との連携などを通じたリアルな社会での課題解決を実践的に学ぶことで、生徒が自律的に考え、自らの人生を動かす力を育成するという新しい教育機関だ。

 HR高等学院ではどのような教育を行い、生徒たちはどう成長していくのか。共同設立者であるHR高等学院 共同設立者/RePlayce代表取締役CEOの山本将裕氏と、同校の特別顧問であり、STEAM教育や探究学習の研究者として知られる東京学芸大学教授(教育インキュベーションセンター長)の金子嘉宏氏に話を聞いた。

リアルな社会とつながり、生きる楽しみを見つける

--まず、HR高等学院がどのような学校なのかご紹介いただけますか。

 山本氏:HR高等学院は、NTTドコモの新規事業プログラム「docomo STARTUP」からスピンアウトして、今年設立した会社「RePlayce」が、起業家の成田修造さんを共同設立者に迎えて設立した通信制高校サポート校です。RePlayceでは、これまでも中高生向けキャリア探究サービス「はたらく部」(2023年にキャリア教育アワードを受賞)を企画運営しており、「今の教育のあり方をアップデートする」をミッションに活動しています。2025年春開校する「HR高等学院」の名称には、人間の可能性を信じ、日本の未来をつくる人材開発(Human Resource)と、「はたらく」(HataRaku)を通じて自分を輝かせ、人生を楽しむ人たちを育てるという2つの意味が込められています。

 特別顧問には、進学実績で全米トップ10に数えられる通信制高校・スタンフォードオンラインハイスクールの星友啓校長と、STEAM教育や探究学習の研究者である東京学芸大学の金子嘉宏教授に参画していただいています。

--通信制高校に通う生徒数は9年連続で増加し、全国に約300ある通信制高校に通う生徒の学習から進路までを支援する「サポート校」も増えてきています。HR高等学院もそのひとつですが、他校と比べてどういった特長があるのでしょうか。

 山本氏:HR高等学院には3つの大きな特長があります。

 1つ目は、企業との連携による探究的な学びを提供するプログラムです。このプログラムでは、PBL(Project Based Learning=プロジェクトベース学習)を通じて、生徒たちは実際に企業などが抱える課題に取り組むことで、学びながらリアルな社会での課題解決スキルを習得します。

 2つ目は、キャリア探究です。生徒が将来を見据えたキャリア形成のために、あらゆる業種業態で働く社会人との月2回の1on1での対話から、ロールモデルを見つける機会を提供していきます。これにより、生徒は自分の将来を具体的にイメージしながらキャリアを考えることができます。

 3つ目は、業界のトップランナーとの交流の機会です。起業家、大企業の変革リーダー、SNSで活躍するインフルエンサーなど、社会の最前線で活躍する「かっこいい大人」との交流を通じて、生徒に「自分もできるかもしれない」というマインドセットを醸成し、新しい挑戦や学びを楽しめる力を育んでいきます。

業界のトップランナーとの交流の機会を創出する

--これまでの一斉授業型の教育では「勉強って面白い」「もっと知りたい」と思えなかった子たちにも、自分から学びに向かっていく動機づけが期待できそうですね。

 金子氏:そう思います。通信制高校を選ぶ生徒が増えている背景には、従来の一斉授業や画一化されたカリキュラムにフィットしない子供たちなどからの個別最適化のニーズの高まりが大きいと考えています。この点でHR高等学院は、さらに一歩踏み込んだ設計にしています。

 一般的に個別最適化といえば、文部科学省によって定められた学習指導要領を前提に、生徒にあった勉強方法を提供する「指導の個別化」ととらえられることが多いのですが、HR高等学院では、学習指導要領の枠にとらわれず、生徒が興味をもった分野をとことん追求できる環境を整えています。

HR高等学院について詳しくみる

--「枠にとらわれず、興味をとことん追求できる環境」とは、どのようなものでしょう。

 山本氏:たとえば新規事業を創出したり、クリエイティブデザインをやったり、既存の「学校」という枠の外へ連れ出していく。それが我々の目指す教育の主軸です。

 一方で、高校卒業に必須とされる基礎的な教科学習は、将来どのような道に進むにせよ、教養として必要なものです。HR高等学院では、教科学習のプロ人材が動画やアプリなどICTを活用し、これらの教科の学習を効率的に行うことで、社会と関わり、各々の興味の幅を広げたり深めたりするための時間を創出していきます。

 この十分な時間をいかして学校の枠を越え、社会とのリアルな接点を数多くもつことで、生徒たちはさまざまな課題に出会います。そして、「どうしたら◯◯が実現できるのか?」「どのような◯◯でありたいか?」といった自分なりの解決策を創り上げ、実行していくというプロセスを踏んでいくのです。

 金子氏:あるべき姿やありたい姿を具体的に思い描き、問題解決を通して新たな価値を生み出そうとすると、新たな問いが湧いてくるものです。その過程で、ある生徒は化学の基礎知識が不可欠だと感じたり、別の生徒は数学の必要性に迫られたりと、教科学習の重要性に気付くこともあるでしょう。HR高等学院では、知識を得ることと解決策を創ることとの間を行き来するプロセスをとても大事にします。

--課題解決をやっていくうちに「あ、これ勉強しなきゃ」と気付く学び方ですね。

 金子氏:これは決して無駄でも非効率でもなく、むしろ本質的な学びの時間です。なぜなら実社会では、1サイクルで解決するような課題はほぼ存在しないからです。実践的な課題に向きあううえで、こうした試行錯誤を何度も繰り返すことによって、より良い生活や社会のために自ら働きかける力を育んでいけるのです。

「先生」はいない、生徒ひとりひとりに「コーチ」が伴走する

--従来の学校の枠を越え、生徒が自身の興味・関心から社会の課題解決を通じて学んでいくということは、生徒ひとりひとりに合わせたカリキュラムが必要ですね。となると、「先生」の役割も大きく変わってくるのではないでしょうか。

 山本氏:ご指摘のとおり、我々が目指す学びを実現しようとすると、生徒の数だけカリキュラムが生まれます。ただ、生徒だけで自分のカリキュラムは作れませんから、生徒ひとりひとりの学びに応じて伴走する人が必要になります。HR高等学院では、この伴走者を「コーチ」と呼び、1on1で学習支援、興味領域の発見から進路の実現までを全面的にサポートします。

--どのような人が「コーチ」を務めるのでしょうか。

 山本氏:各教科などの学習支援については、卒業に必要な単位を取得するためのサポートをすることはもちろん丁寧に行います。さらに、我々の教育の主軸となる興味関心を見つけたり、課題を設定し解決したり、進路を実現したりするプロセスは、大企業やベンチャーなどさまざまな領域で自分の道を切り開いてきた人材がサポートします。実社会での課題解決に向けた取組みがベースとなるからです。いずれのコーチにも、傾聴力や対話力、ファシリテーションやプレゼンテーションのスキルを兼ね備えた人材を採用しており、さらに十分なトレーニングも行っています。

高校生活を「家と学校の往復」で終わらせない

--生徒たちは一体どのような1日を過ごすのでしょうか。

 山本氏:こちらは時間割のイメージです。午前中は自学自習をベースにした教科学習ですが、先ほど金子先生が話されたように、各教科学習においても、社会への課題意識から「今の自分はこれを何のために学ぶのか」といったことを実感できるようにしたいと考えています。

1週間の時間割のイメージ

 午後は、PBLなどのプロジェクト型学習やキャリア探究に充てます。社会の第一線で活躍する人が登壇したり、企業の現場で働く人が集まったりするイベントにも積極的に参加し、さまざまな大人との対話を通じて視野を広げてもらいます。

 僕らが大切にしたいのは、高校生活を家と学校の往復だけで終わらせないこと。どんどん外の世界に飛び出して、机上の学び以上にさまざまな体験に時間を割き、心から熱中できるものを見つけてほしいと思っています。

--時間割に「次世代教養」というものがありますね。具体的に何を学ぶのでしょうか。

 金子氏:教養とは3つのフェーズに分けられると考えています。まずは古典的教養。これはおもに午前中に学ぶ教科学習を指します。そして、現代的教養とはプログラミングやAI等、学問的には確実に成立してはいないものの、現代において問題解決をするために必要とされているような知識やスキルだと考えています。HR高等学院で学ぶ次世代教養は、今後の社会における課題解決や価値創造に必要なスキルとマインドのことです。

 山本氏:論理的思考力、グループでの共創力、チームビルディング、プレゼンテーション力、あるいはレジリエンス(困難をしなやかに乗り越える力)といったスキルやマインドは、次世代を生きるうえで誰もが身に付けておいてほしいスキルです。自分の好きなこと、興味があることだけを学ぶのではなく、次世代を生きるうえで学ぶべき科目として、次世代教養は必修科目にする予定です。

「やってみれば良いじゃん」失敗と自己決定ができる場所に

--高校生にとってHR高等学院をどのような場所にしていきたいですか。

 山本氏:やりたいことが見つかっている人にはもちろん、この環境を生かしてどんどんそれを深掘りしたり、スケールしたりしてほしいと思います。一方で今、やりたいことが見つからずに悶々としている人や無気力に苛まれている人にとっても、この学校を代え難い居場所にしたいなと考えています。

 実は僕自身、高校までは机に向かって勉強することに意欲が湧かず、授業中は机に伏せてばかりいるような無気力な生徒でした。ところが大学入学後、自分の好きなことに向かっていたら「かっこいい大人」とたくさん出会い、あんなふうに生きたいなって思えるようになったのです。

 これまでの経験を通して確信したのは、たくさんの出会いがあれば人は変われるということ。現代の高校生が、進路相談を親と先生以外にする人は5%しかいないそうです(はたらく部 全国の中高生意識調査より)。だからこそ、HR高等学院では、いろんな大人がひとりひとりの生徒に真剣に向き合ってくれるような場所をつくりたいと思っています。1人でも多くの生徒が「この人に救われた」って思える出会いと体験を生み出したいのです。

 金子氏:失敗を称賛するカルチャーも大事にしていきたいですね。社会の第一線で活躍しているかっこいい大人だって失敗することもあるし、弱音を吐くこともある。でもそこから再起して努力し続けている。そんな大人の背中を追いながら、生徒たちも「新しい挑戦には失敗はつきもの」とらえ、「やってみれば良いじゃん」と応援してくれる人たちがいて、安心して挑戦できる。ここでは、失敗の数もポジティブな経験として高く評価していきたいです。

 山本氏:そして最後にもうひとつ。HR高等学院を「自分で決める」経験がたくさんできる場所にしたいです。経済産業研究所の調査では「人の幸せは自己決定をしたかどうかによる」とされています。この調査も示すとおり、人って自分で決めたことだからこそ頑張れると思うのです。慣れ親しんだ環境から一歩踏み出す勇気や、自分の人生を主体的に、楽しく面白く生きる力は、自己決定が起点になると考えます。単に知識を与えるだけではなく、好奇心や思いをもとに自分で決める経験を提供していきたいです。

--「学校の授業が物足りない」「一斉に詰め込まれるのは嫌だ」といった、現状に不満や挫折感、あるいは窮屈な思いを感じている人でも、この環境に身を置けば「何かやってみようかな」という気持ちになれそうです。自分の人生にワクワクしながら巣立っていく未来の生徒たちの姿が目に浮かびます。

--本日はありがとうございました。

 社会の変化に教育が追いついていない中、HR高等学院のような新しい学びの場には期待が膨らむ。実社会での大人との交流は、双方にとって良い影響があるのではないかと感じる。第一期生たちがどのような成長を見せ、これからの社会でどう活躍するのか、今後が楽しみだ。