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誰もが参加できる芸術祭「ぎふ美術展」

展覧会(彫刻部門)の風景

 今年8月13日(土)から28日(日)まで岐阜県美術館で「清流の国ぎふ芸術祭 第4回ぎふ美術展」が開催される。誰でも応募可能で、毎回、国内の美術分野の第一人者が審査員を務めることから、県内外の幅広い年齢層から約1,000点の作品が集まる。
 「ぎふ美術展」は、応募資格に制限がないため、美術に関心のある人なら誰でも応募できる(応募料の締め切りは7月15日(金)。1人各部門1点につき2,000円)。年齢も性別も障がいの有無にも関係なく応募できるとあって、気兼ねすることなくチャレンジしやすい人気の美術展だ。

審査会(工芸部門)の風景

各分野の第一人者が審査

 「ぎふ美術展」の審査員には、日本画、洋画、彫刻、工芸、書、写真、自由表現の各分野の第一人者が揃う。第4回の審査員は次の14名(50音順)。
 【日本画部門】齋正機氏/日本画家・両口屋是清美術顧問、千住博氏/日本画家・日本芸術院会員
 【洋画部門】奥谷博氏/洋画家・日本芸術院会員、椹木野衣氏/美術批評家・多摩美術大学教授
 【彫刻部門】建畠晢氏/多摩美術大学学長・埼玉県立近代美術館館長、吉野毅氏/彫刻家・日本芸術院会員
 ※「吉」の正字表記は、上「土」+下「口」
 【工芸部門】田嶋悦子氏/陶芸家・大阪芸術大学教授、宮田亮平氏/金工作家・文化庁 前長官
 【書】髙木聖雨氏/書家・日本芸術院会員・大東文化大学名誉教授、鍋島稲子氏/台東区立書道博物館主任研究員・東京国立博物館客員研究員
 【写真部門】土田ヒロミ氏/写真家・金津創作の森美術館館長、光田由里氏/美術評論家・多摩美術大学教授
 【自由表現部門】立島惠氏/佐藤美術館学芸部長、山本豊津氏/東京画廊代表
ぎふ美術展の公式ホームページ(後掲URL参照)には、各審査員からの応援メッセージが寄せられている。

作品講評会(自由表現部門)の風景

全国でも珍しい「自由表現部門」

 「ぎふ美術展」には、全国でも珍しい「自由表現部門」という新たな分野がある。多様化する表現の存在を認め、斬新な表現の作品をジャンルにとらわれず応募できるようになった。従来の分野を超えて、個性豊かな作品が集まっている。
 昨年第3回展で、最優秀賞である"ぎふ美術展賞"を受賞した作品「あいにきたよ」(作:北川ひとみ氏)は、樹脂粘土に色を練り込み、長い時間をかけ、全て手作業で制作した精密な作品。半立体でしかできない「はみ出る」という構図が評価を得ていた。優秀賞の「ランダムアート」(作:中村龍美氏)は、表計算ソフトExcelの機能を駆使して輪郭や色付けをする独特な描き方で「だまし絵」的な表現の作品。審査員をあっと言わせる、ユニークな手法を審査員も待ち望んでいる。

作品講評会(洋画部門)の風景

目の前で繰り広げられる作品講評会・対談

 ぎふ美術展の魅力の一つに、公開で行われる作品講評会がある。入賞作品の前で、審査員がマイクを手に一人ひとりに語りかけるように評価ポイントを話す。入場者は"審査員と芸術作品を鑑賞するという同じ時間、空間"を共有することができ、それさえもアート体験のような貴重で刺激的な体験となる。このような作品講評会によって、これまでの既成概念による芸術の敷居の高さを下げ、様式にこだわらないより自由で開かれた美術展となっている。
 また、審査員同士の対談(=クロストーク)も、多くの入場者が楽しみにしている企画だ。例えば、昨年「絵はやっかいなものだ」をテーマにトークを繰り広げた洋画部門の審査員、遠藤彰子氏(洋画家・武蔵野美術大学名誉教授・二紀会理事)と笠井誠一氏(洋画家・愛知県立芸術大学名誉教授・立軌会同人)との対談では、若き時代から現在までのお互いの作品を振り返りながら、絵を描き続ける難しさと魅力を率直に語り合った。
審査員による作品講評会も対談も、芸術の裾野を広げる魅力的な仕掛けだ。

審査会(彫刻部門)の風景

「今」を乗り越える芸術の力は、未来につながる

 昨年8月、新型コロナウイルス感染症が広がる中での開催となった第3回ぎふ美術展は、DX化による「3Dバーチャル美術展」、関連プログラム(作品講評会・対談)の動画をWebで公開するなどの方策で、実際に会場に足を運ぶ人だけではなく、インターネットを使い美術展を鑑賞する人を含め、総勢1万4千名が来場するという大成功を収めた。コロナ禍で不安や焦燥感といった空気が世の中を覆う中、芸術は癒しや希望を与えてくれる必要な存在だと改めて実感した人も多いのではないか。
 困難な「今」を乗り越える芸術の力はいつの時代も、我々を未来へと導く。誰もが参加できる美術展だからこそ、一人でも多くの人にチャレンジし、鑑賞することで芸術の力を肌で感じてもらいたい。ウィズコロナ、アフターコロナの時代を生きるヒントに出会えるかもしれない。