食と酒と旅を愛する編集者のツレヅレハナコです。旅先の楽しみといえば、なんといってもその土地ならではの食。けれど、思うように旅ができなくなって1年以上が経ちます。おうちごはんもよいけれど、たまには特別な気分を味わいに「レストラン」へ行ってみたくなるもの。そこで、東京で福岡の旬を味わえる、半蔵門にある福岡県のアンテナレストラン「福扇華(ふくおか)」へ、秋のコースを味わいに伺いました。実は、私の両親の出身地は福岡県。ご縁のある土地の味を堪能できるレストランとあり、食べる前からもうワクワク。料理長にお話を伺い、福岡の食について語りながら、現地へ思いをはせました。
福岡料理と旬の味 福扇華|福岡
東京都千代田区麴町1-12-1住友不動産ふくおか半蔵門ビル1階
東京メトロ半蔵門線「半蔵門」駅3a・4出口より徒歩3分 定休日:土日祝、お盆、年末年始
室数:全席/76席 ※個室ご希望の際には、ご予約時にお伝えください。個室ご利用は、夜の部のみ10%サービス料がかかります。ご予約、お問い合わせ:03-3288-2170
平日 昼の部:11時30分~15時(L.O.14時)。旬の魚や上質な肉などが逸品の週替わり御膳1,380円、水たき御膳1,800円などのランチメニューが味わえます。夜の部:17時~22時(L.O.21時)四季の宴コース8,000円~、水炊きコース7,000円~。※コースは昼の部でも予約を受け付けています。※新型コロナウイルス感染症の影響により、営業時間が異なる場合があります。
プロフィール
ツレヅレハナコ
食と酒と旅を愛する編集者。著書に「女ひとりの夜つまみ」(幻冬舎)、「ツレヅレハナコのじぶん弁当」(小学館)、「ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖」(PHP研究所)、「食いしん坊な台所」「女ひとり、家を建てる」(河出書房新社)、「ツレヅレハナコのお取り寄せ」(立東舎)など。
福岡の秋の旬に出会いに
――今日はとても楽しみに伺いました。どうぞよろしくお願いします。9月から始まった、秋の時期の「四季の宴・扇コース」(10,000円※税込み)をいただきます。旬のお魚がたくさん味わえるそうですね。
前菜三種
前菜は、博多がめ煮、県産きのこの菊花和え、玄界灘産真サバのしめさば
――まずは、前菜の盛り合わせですね。「県産きのこの菊花和(あ)え」は、真っ白なエノキにパッと明るい黄色の菊花が目を引きます。しっかりとだしが効いていて、シャキシャキしたエノキの歯ごたえがたまりません。
料理長:「菊花和え」に使っているエノキは、九州一のきのこの産地である福岡県大木町のものなんですよ。「福岡といえば」の代表格「がめ煮」も小鉢でお出ししています。本州では「筑前煮」と呼ばれる鶏肉と根菜の煮ものですね。最大の特徴は、九州の甘口醤油(しょうゆ)を使っていることです。
――醤油の独特の甘みが、野菜の味わいを引き出していますね。九州の方が「地元の醤油でなければ物足りない」とおっしゃる理由がよくわかるなあ。そういえば、「がめ煮」は福岡のお正月には欠かせない料理。実家でも、お正月になると母が大鉢いっぱいの「がめ煮」を作ってくれました。ストーブの上にのせられた「がめ煮」の鍋から、つまみ食いするのが楽しみだったなあ。もう一皿は、サバですか。すりごま入りの醤油で漬けにする「ごまさば」が福岡名物として有名ですが、今日のサバはごまさばではなく「玄界灘産真サバのしめさば」!?
料理長:しめサバに大根おろしも添えてあるので、脂ののった秋のサバをさっぱりと召し上がっていただけます。
東京でこんなに新鮮なお魚が味わえるなんて
向付・長浜漁港直送鮮魚三種盛
――向付(むこうづけ)は、「長浜漁港直送鮮魚三種盛」。どれも見るからに質が良いのがわかります。天然物のヒラマサは良く脂がのっているし、数日寝かせた鯛(たい)はうまみたっぷり。私の大好物のイカも、鮮度が良いうちにいったん冷凍して甘みが増すようにしているとは......。ああ、このもっちりとした食感も最高です。
料理長:福岡の海は、まさに魚介類の宝庫。私自身、年に2度ほど現地を訪れ、市場はもちろん漁師さんたちとも直接お話をします。そんなお付き合いなので、定番の魚のほか、その時だけの珍しい魚が入ったりもするんですよ。
焼八寸
本鰆と天然真鯛に、博多ぶなしめじと博多なすが寄り添う。福岡の秋の味覚がたっぷり
――焼八寸にはお魚が2種も入って豪華。本鰆(ほんざわら)味噌(みそ)漬け焼き、天然真鯛の柚庵(ゆうあん)焼きとも肉厚です。さらに博多なすの田楽、博多ぶなしめじのからすみ焼きも盛り合わされているなんて、このお皿に福岡のおいしいものが集結していますね。
料理長:魚だけでなく野菜もすばらしいのが福岡。生産者さんたちも、我が子のように愛情をかけて野菜を育てているのを知っているので、私自身、食材を扱うときは身が引き締まります。
――「四季の宴コース」では、たくさんの魚が味わえるんですね。そういえば、福岡で前に食べたヒラメのお刺し身もおいしかったなぁ。
料理長:福岡の秋の魚はクエや鯛が特においしいんですよ。その日の仕入れの状況で、お造りでお出ししています。
朝とれた新鮮な食材が、その日のうちに直送
――本当に、魚も野菜も素材の味が濃くておいしいです。 ところで、これほど鮮度のいい食材は、東京までどうやって運んでいるのですか?
料理長:魚も野菜も、朝とれたものが夕方には東京に着くよう流通が整っています。おもしろいのは、地元ブランドの「博多万能ねぎ」。JALの航空便で空輸されていて、通称「空飛ぶねぎ」と呼ばれています。包装の袋にはJALのマークも入っているんですよ。
――鮮魚盛りの仕入れ場所である長浜漁港(博多漁港)には、県内でも最大規模の水揚げ市場があるそうですね。
料理長:博多湾北部にある玄界灘など、福岡には豊かな漁場があります。今回のコースでも使われている真サバやカマスも玄界灘のもの。それらを含めた豊富な水産物が長浜漁港に集まるんですよ。
――福岡県内には観光客も買い物を楽しめる朝市・夕市がいくつもあると聞きました。私も行ってみたいです。 市場が身近にある町ってあこがれるなあ......。子供のころ、おばあちゃんの家に行くと、買い物かごをもって近くの市場へ魚を買いに行ったのを思い出します。
こんな贅沢な食べ方、初めてです......
博多和牛の八女茶しゃぶしゃぶ
透き通る八女茶のだし、そして香ばしいお茶の香り
――「八女茶(やめちゃ)」といえば高級なお茶ですが、そのお茶で博多和牛をしゃぶしゃぶ? こんな贅沢(ぜいたく)な食べ方、初めてです。
料理長:「八女茶」は、全国茶品評会の玉露の部で最高位を受賞したことのあるお茶です。玉露の中でも最高級品である「八女伝統本玉露」は、茶葉を手摘みしてから天然わらを一定期間かぶせておくなど、厳しい基準があることでも知られているんですよ。お肉も、県内でとれた稲わらを食べさせて育てた「博多和牛」のロース肉だけを使用しています。
――うわー、お肉が甘くてやわらかい。でも、お茶の効果か、まったくくどくないですね。ひとりで何枚でもいただけそうです。一枚食べるたびに、ふんわりお茶の香りがしてさわやか。
料理長:だしも入れず八女茶だけでしゃぶしゃぶするので、素材の味わいがダイレクトに伝わりますよね。お茶もお肉も素材が良いので、シンプルにいただくのが一番おいしいと思います。
博多和牛のステーキ
秋メニュー期間中の「四季の宴・扇コース」では、しゃぶしゃぶかステーキのいずれかを選択できる
料理長:やわらかい博多和牛はステーキもおすすめ。お好みの調理法でどうぞ。
訪れたタイミングで変わる、旬の果物
県産果実の八女茶チョコレートフォンデュ
料理長:福岡は果物もたくさん採れます。福岡で秋に旬を迎えるのは柿といちじくですが、秋メニューの期間中に何度か果物が変わります。来店いただいたそのとき旬のものを召し上がっていただいています。今回は、いずれも県産のキウイ、いちじくは「とよみつひめ」、ぶどう、梅ヶ枝餅(うめがえもち)です。八女茶でつくったチョコレートフォンデュでお召し上がりください。
――こちらも初めての食べ方です。どれも果物自体の甘さと酸味のバランスがいいですね。そこにチョコレートとさわやかな八女茶が加わると、新たなおいしさの出会いが生まれます。季節ごとにいただいてみたい。
今回食したその他のコースメニュー
椀(わん)物・玄界灘産カマスの沢煮仕立て
おしのぎ・鐘崎漁港直送 穴子と白菜の重ね蒸し
季節のごはん、味噌汁、香の物
福岡に行かずして、旅気分に
ああ、どれもこれもおいしかった。こちらのレストランでは、現地の食を存分に味わえて大満足。さらに博多織など地元の伝統工芸品もたくさん飾ってあり、まるで福岡に旅したような気分になれました。あごだしや福岡の醬油、水炊きのだしなどの食材が買えるお土産コーナーもありましたよ。また、福岡県は酒どころでもあり、福扇華のドリンクメニューではそれぞれの料理に合うお酒がそろっているのですが、今は緊急事態宣言中のためご提供が難しいとのこと(2021年9月21日時点)。酒類提供が再開したら、お酒と料理とのペアリングを楽しんでみたいです。
さて、次はいつ現地へ行けるかな? タイミングが来たら必ず現地にも訪れて、おいしいものだらけの福岡を食べ歩いてみたいと思います。
エントランスを入ってすぐ頭上にある「八女手漉(すき)和紙」の照明。店内の建具やテーブル、柱には県産材の「京築(けいちく)ヒノキ」「栴檀(せんだん)」が使われ、木のぬくもりに包まれてホッとする上質な空間がひろがっている
個室の名前には「糸島」「久留米」など、福岡の地名が。予約時に部屋の指定もできる
カラフルな「柳川まり」が迎えてくれる
「博多人形」のアマビエがかわいくこちらを見つめる