教育のデジタル化が進む一方で、従来の手書き学習の重要性を指摘する声も少なくない。紙とペンを使ったほうが、脳の能力を十分に活かして創造性や思考力を育むと考えられるからだ。紙の本と手書きを重視し、紙にプリントして記憶を定着させることの大切さを指摘する、言語脳科学者で東大教授の酒井邦嘉氏に、「脳を創る」学習について聞いた。
――教育現場でAI(人工知能)の導入が危険だと警鐘を鳴らす理由とは?
国は学校教育での生成AIの活用を推進しており、「GIGAスクール構想」では学校の児童・生徒1人に1台のタブレット端末を提供し、広く行き渡った。しかしAIを使うようになるとAIに頼りきりになり、自分の頭で考えようとしなくなる。疑問に対し自分で考え、咀嚼(そしゃく)してより良い答えを導き出す力が必要なのに、AIの回答をうのみにしがちだ。デジタル機器など便利なツールを頼ることで、脳の想像力や思考力が低下する。教育において「便利、楽、得」といった価値観は逆効果と言え、教育の崩壊につながりかねない。
――大学生でもデジタル機器への依存が高まっているのか?
タイパ(タイムパフォーマンス)やコスパ(コストパフォーマンス)の重視で、簡単に調べられるネット検索に依存して、読書や自分の頭で考えることが放棄されている。1カ月に1冊の本も読まない学生が増えているという調査結果もある。ネットやSNS(交流サイト)には中毒性があり、投稿者の意図を吟味することなく安易に受け入れたり、炎上に加担したりしやすい。そのため、偏見や間違った意見を拡散させてしまうことになる。自主的に体を鍛えるトレーニングに取り組む人は多いが、日常的な知的トレーニングを軽視すれば、人間らしい能力を失っていく危険性が高い。
――家庭での教育にデジタル機器は必要?
知識を詰め込むような教育ではなく、子供が自分なりの好奇心を持つ喜びを大切にしてほしい。受験対策を重視する教育が先立つと、読書や芸術にかけるべき時間が削られてしまう。紙とペンを使うだけで、創造性や思考力を十分に身につけることができる。こうした人間力を形成するには、まず家庭でスマートフォンやAIの使用を制限したほうがいい。
――親に求められることは?
子供の能力やその特質を見抜くことが大切で、子供が真剣に「やりたい」と考えるなら、それを受け入れる親の度量も求められる。無理にコーチの代わりをしようとせず、その道のプロに任せよう。優れたコーチは、経験からその子の必要とするトレーニングが分かるからだ。親は経済的サポートに徹して、子供を応援しながら温かく見守ること。「親」という漢字が「木の上に立って見る」と書くように、子供の可能性を常に信じたい。
酒井教授は10月に「デジタル脳クライシス AI時代をどう生きるか」(朝日新聞出版)を出版
――著書「デジタル脳クライシス AI時代をどう生きるか」に「ペンはキーボードより強し!」とある
AIに頼ると文章を書く力はもちろん、思考力も衰えてしまう。例えば会議の内容を手書きでメモするとき、情報を整理して要約することで理解が深まり脳に定着する。手書きは書かれた情報が少ない分、想像力を働かせて記憶を整理することもできる。一方、キーボードを使うときは打ち込みに専念するので内容の理解を後回しにしがちになって、考えたり質問したりしにくくなってしまう。
――紙に書かれた文章を読むことは?
パソコンなどの画面で読むか、紙で読むかという対比では、紙のほうが理解が進んで記憶に残りやすい。私は原稿に赤字を入れるとき、できるだけ紙に印刷して書き込むようにしている。誤りや修正すべきところが自然と目に入ってくるからだ。画面では、スクロールによって見落としが多くなるし、文字を削除したり加筆したりすると位置関係が常に変わってしまう。空間的な手掛かりがなくなれば、全体を把握することも難しい。一方、紙はそうした心配がなく、綴(と)じてあれば簡単に必要なところへ戻って読み返すことができる。想像の手掛かりが豊富であれば、それだけ記憶の定着にも有利だ。
――「脳を創る」学習には手書きと紙が必要!
特に小学生は脳を創り始める時期なので、「紙に手書き」という習慣が身に付くかどうかが、その後の学習を左右する。ノートやプリントを使って手書きで問題を解くこと、画面で文字を見るより紙の本の活字を読むこと、電卓ではなく自分の頭と手で計算して解くことが基本だ。デジタル機器やキーボードに頼ることは、学力低下をもたらす危険がある。たとえば、かな漢字変換や予測変換に頼れば、漢字も文章も自力で書けなくなるかもしれないからだ。
楽をして脳を働かせないと、怠け癖が定着してしまう。鍛錬を続ける限り、人間の創造力に限界はない。
キヤノンのプリンター「PIXUS XK130」、家庭の学習環境を充実させる機能を搭載
印刷して紙に手書きすると理解が進みやすいという。それだけに家庭学習にもプリンターは欠かせない存在だ。こうした中、キヤノンからうってつけのインクジェットプリンターが発売された。多様化する印刷用途に応える使い勝手の良さと低ランニングコストを兼ね備えた「PIXUS XK130」だ。
家庭用インクジェットプリンター「PIXUS XK130」
広がるプリンターの使用用途と機能
家庭用プリンターの用途といえば年賀状の印刷が主流だった。しかし今では子供の学習や親の在宅ワーク、リスキリング(学び直し)における文書印刷、推し活といった趣味や日常生活の写真印刷などさまざまだ。
低ランニングコストと5色インク搭載で高画質をセールスポイントにするPIXUS XK130はまさに、子供から大人までそれぞれの印刷ニーズに的確に応えるために製品化された。「コストがお得、機能に納得」というキャッチフレーズが示すように、「家庭で気軽に複数の用途に使えるプリンター」とキヤノンマーケティングジャパンの片山裕太氏はアピールする。初搭載した機能もあり、家庭の学習環境をより一層充実させる。
キヤノンマーケティングジャパンの片山裕太氏
1つは「カラー消去コピー」で、原稿のカラー部分のみを消去し、ブラック部分だけを残す。児童・生徒らの問題集や未就学児の塗り絵などの繰り返し学習に便利だ。子供は繰り返し問題を解くことで「できた」という達成感を味わうことができ、モチベーションが向上。勉強への意欲も増す。親は子供の成長を実感できる。それだけにカラー消去コピーは家庭学習に不可欠な機能といえる。
2つ目は「冊子コピー」。冊子を見開いて片ページずつコピーする際、通常なら上下が逆になる出力物の向きをそろえながらコピーするというもの。図書館で借りた本の必要な部分を何枚もコピーするときに便利だ。「互い違いに出てくる出力物をそろえるのは面倒なこと。この手間がなくなるので非常に便利な機能」と片山氏は確信する。
コストがお得! 機能に納得! 家族みんなで気軽に使えるプレミアムモデル
気軽に印刷してもらうため、低コスト化にも注力。L版写真は1枚約10.0円(税込み)。A4普通紙はカラー約4.1円(同)、モノクロ約1.6円(同)。インクタンクを1色ずつ交換できるので、各インクを無駄なく使えて経済的という。片山氏は「ランニングコストであるインク代が高いというプリンターへの不満を解消した」と言い切る。
機能面も充実させた。文字印刷と写真印刷という両方のニーズに対応するため、写真に強い染料インクと文字に強い顔料インクを搭載。文字用のブラック(顔料)は濃度とコントラストが高く細かな文字もにじみにくく、くっきりと描き出せる。これにより、あざやかな写真とくっきりした文字の印刷を実現した。
PIXUS XK130は今年9月に発売した。片山氏は「子供も親も気軽に使えるプリンターを求める家庭をターゲット層に、PIXUS XK130を主力モデルとして提案していく」と意気込む。
プリンターに求められる機能といえばコピー。特に国が進める「GIGAスクール構想」にあわせて、プリンターは家庭の必需品といえる存在になった。知識の定着に欠かせない反復学習が可能なうえ、印刷した紙にペンで書き込むこともできるからだ。高い学習効果が見込めるプリンターは、もはや一家に1台はなくてはならない。これからも家庭での学習においてプリンターの出番はますます増えそうだ。