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直せない修理工場も今後出てくる...最近のクルマで修理の難しいポイント3選をボッシュカーサービス(BCS)に聞いてみた

提供:ボッシュ株式会社

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最近のクルマで修理の難しいポイントをボッシュカーサービス聞く

ADAS(Advanced Driver-Assistance System)やコネクテッド機能など、最近のクルマはとても高機能で便利です。ですがその反面、システムは複雑で繊細...そのため何かのきっかけで故障した際は修理が困難になります。では実際にはどのような点が困難なのでしょうか。ボッシュカーサービス(BCS)加盟店で長年自動車整備をおこなっているTK自動車さんにお答えいただきます。

高機能化するクルマ...その反面、修理が難しくなってきた

便利で安全なADAS機能だが、調整が狂えば危険なものにもなりえる

昨今のクルマは、コネクテッド機能やADAS機能、ハイブリッド・EV化など、ひと昔前のクルマにはなかった技術が次々と搭載され高機能化しています。
高機能化し便利になっていく反面、事故や故障などの際に発生する修理は、システムの複雑化などにより困難なものになっていきます。
例えばADAS機能は、事故を減らすために有効なものですが、整備次第では逆に危険をもたらす可能性も出てきます。
DIYでバンパーやフロントグリルを交換しようとすれば、カメラ・レーダーのゼロ地点を正しく認識させる「エーミング」という作業が必要で、それをやらなければ本来の性能を発揮することは難しくなります。
きちんとした整備環境でしっかりと対応しなければ、ユーザーは痛い目を見る可能性が高まってしまうでしょう。
今回はこれらのような、「最近のクルマの修理の難しい点」について紹介します。

お答えいただくのはBCS加盟店のTK自動車さん

昭和33年3月3日創業の株式会社TK自動車にお伺いした

今回「最近のクルマで修理の難しい点」ついて教えてくれるのは、昭和33年3月3日創業の株式会社TK自動車(宮城県東松島市)でCEOを務める竹内勝弘氏。
TK自動車は、「お客様に感動を与える整備を提供すること」をモットーにしてきた会社で、高い技術力を維持するために、人材育成にはお金を惜しまない姿勢を貫いています。
そんなTK自動車はボッシュカーサービス(以下BCS)加盟店。
ボッシュといえば車両側に搭載する先進運転支援システムはもちろん、最新鋭の診断機をラインアップするメーカーです。その診断機を備える独立系修理工場ネットワークがボッシュカーサービスです。
世界150カ国に1万5000店舗を備え、日本には約200店舗が存在しています。

最近のクルマで修理が難しいポイントその1「カメラ・レーダー」

最近のクルマにはさまざまな場所に取り付けられている「カメラ・レーダー」

まずご紹介する最近のクルマで修理が難しいポイントは「カメラ・レーダー」です。
ここでいうカメラ・レーダーは、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシスト、自動ブレーキなどが搭載されているクルマに使用されているもので、ADAS機能に関係します。
前述の通り、カメラが装着されているフロントガラスやレーダーが取り付けられているバンパー・グリルなどを修理する際に、カメラ・レーダーのゼロ地点を正しく認識させる「エーミング」という作業が必要となります。
このエーミングには高度な施設と技術が必要です。

グリルやバンパーなど至る所にレーダーが装備され、フロントガラスにはカメラが付けられていることも

竹内氏:エーミングはカメラが装着されているガラスを交換した時はもちろん、レーダーを備えるエンブレムやバンパーを脱着した際には必要になってきます。これをしなければ本来の性能は発揮しません。
竹内氏:例えばレーダーが1°ずれたとすれば、高速道路で100m進んだ時に1.7m横にずれてしまいます。それが200m、300mと進めば隣の車線に入ってしまい、他のクルマに追従してしまう恐れもあります。
竹内氏:また、こうしたズレはクルマ酔いの原因になる場合もあります。ADASが誤認識して修正操舵を繰り返した結果、ゆらゆらと走るという事例があるんです。きちんとしたエーミングを行えばそのような不具合が無くなります。
ADAS使用時にしっくり来ない場合にも、BCSでエーミングをトライしてみるのも良いかもしれません。

バンパー下部を駐車場の輪留めにひっかけてしまうというありがちな事故でも再調整が必要なことも(写真はイメージ)

竹内氏:エーミングが必要なのは主にぶつけた時なのですが、最近で多いのはバンパー下部を駐車場の輪留めにひっかけてしまい、近距離レーダーがズレてしまうことです。バンパー下部をこすりながら輪留めに入り、そこからバックした時にバンパーを引っ掛けるパターンですね。やりがちな事故で軽微なものと捉えがちですが、このような時にもしっかりとエーミング作業を行うべきだと思います。
日常ユースにも意外な落とし穴があることをこれからのクルマでは覚えておかなくてはなりません。

ボッシュの最新鋭の機器を使って、エーミングを行なっていく

さて、ここで実際のエーミング作業をみてみます。
ボッシュといえば輸入車のイメージが強いが、実は国産車に対してもしっかりと対応しているといいます。
グリーンの床になっているところが計測場所。

計測結果に応じて、車両側のカメラやレーダーの位置を微調整して行く

実はこの場所、レーザーを使ってボッシュが監査しており、2年に一度はチェックを行い、きちんと水平が保たれています。
エーミングをする場合は4輪ホイールアライメントを終えた後に入庫します。
その後はレーザーなどを使い計測器とクルマとの位置出しを行い、車両データを計測器にセットした上で、OBD2コネクターに計測器を繋ぎ、車両側のカメラやレーダーの位置を微調整して行きます。

最近のクルマで修理の難しいポイントその2「搭載コンピュータ増加による故障原因究明の困難さ」

コンピュータの搭載個数は年々増加しています。何気なく使っているエアコンももちろんコンピュータで制御されている

さらに近年の整備で難しくなっているのが、コンピュータが故障原因の診断の難しさです。
コンピュータの搭載個数は年々増加しており、エアコン、エンジン、ミッション、シャシー制御、イモビライザー、室内の電装品など、何十個と搭載されているものも珍しくありません。
その各々が常に通信を行い、イグニッションをオンにした段階で異常が無いかをチェックした上でエンジンが始動されます。
ですが、一度異常が起きた場合、警告灯が点いたり、診断機をセットすれば異常コードが検出されますが、例えば燃料ポンプに異常があるとコードが出たとしても、本当に燃料ポンプの異常か否かは、なかなか判定しにくいのだといいます。
竹内氏:最近あった事例なのですが、新車の燃料ポンプが異常と出たのですが、普通に考えたらそうとは思えないですよね。
竹内氏:簡単に言うとコンピュータから直接電源を入れて、コントロールユニットを介してポンプのモーターを作動させるというシステムなんですが、この場合、我々はコンピュータ自体も疑いますし、コントロールユニットについても診断を行います。
竹内氏:このシステムすべてを診断するための膨大なデータをボッシュでは持っていますし、そのデータを見ながら点検項目を独自に決めて診断する技術がBCSには存在します。
結果的に無駄なパーツを発注することなく、効率的に質の高い整備が可能になるんです。

診断機の波形を見ながら細かく診断していくことで本当に故障している部分がどこなのかを探る

故障診断コードだけに頼っていた場合、燃料ポンプを交換したが治らず、コントロールユニットを続いて交換......、というように、無駄な部品を発注することになる。ボッシュカーサービスでは効率的に質の高い整備が可能となります。
竹内氏:我々は工場と事務所で同時に整備を進めて行きます。本当の故障個所に辿り着くまでに、正しい手順を辿っているかを確認するためです。手順を間違えれば全く違う結果になってしまう場合もありますので。
竹内氏:データをきちんと持ち、それを読めるようになるか否かが重要なんです。よく聞く故障診断コードというものは、ゼロか100でしか見ておらず、本当に壊れるまで結果が出てきません。我々は数値を読み込むことで、故障に近づいていることを事前に把握することができます。
竹内氏:例えばタイミングベルトが切れる寸前の状況でも把握することが可能です。実際、お客様にそろそろ切れると思いますよと告知したことがありますが、「次の機会にします」と店を後にしてすぐにタイミングベルトが切れて再入庫したことだってあるほどなんですよ。

最近のクルマで修理の難しいポイントその3「サイバーセキュリティー」

故障原因究明の要である診断機、ボッシュの診断機では診断できるが、サイバーセキュリティのレベルが上がった最近のクルマでは、通常の診断機では診断すらできないことも

さらにこれからの整備を難しくさせるのがサイバーセキュリティ。
もしもハッカーが自動運転搭載車のコンピュータに進入したら、クルマを暴走させることだって可能かもしれません。
それを防ぐために、近年、クルマにサイバーセキュリティ対策を行うことが日本を含め世界的な基準となりました。
サイバーセキュリティ対策がされているクルマは、従来の故障診断機をつないだとしても車両側にブロックされて診断することすらできません。
ですが、そこをクリアできるのがBCS。ボッシュの診断機にはセキュアダイアグノスティックアクセス(SDA)という機能が搭載されていて、各カーメーカーの承認を取っているので車両側のサイバーセキュリティ対策をクリアして診断することが出来るのです。
これにより今後も同様の質の高い整備を可能としています。こうした背景があるからこそ、BCSになるための審査基準が厳しいという背景もあるのでしょう。

BCS加盟店なら幅広い修理対応可能。その秘密やいかに

BCSの看板を掲げるためにはさまざまな試練が...

最近のクルマは修理が難しい点を紹介してきましたが、そんな最近のクルマもBCS加盟店なら修理が可能です。
BCS加盟店は最新鋭の機器をラインナップするだけでなく、常に厳しい監査を受けています。
整備技術レベルはもちろん、接客、電話対応、そして見積もりの出し方までボッシュ側からの監査があり、それに通過しなければBCSを名乗ることは出来ないといいます。

BCS加盟店であるためには整備技術レベルはもちろん、接客、電話対応、そして見積もりの出し方までチェックされる

その監査には一般ユーザーになりすましたミステリーショッパーチェックもあるというから驚きです。
ボッシュ株式会社の遠藤成樹氏曰く「SQT(サービスクオリティテスト)と呼ばれるそのテストの一つとして、何カ所か不具合のあるクルマを入庫します。そして、そのすべてを解決できるかも評価した後に、整備工場のオーナー様に結果をご連絡しています。」
こうしてすべてにおいて高いクオリティをお客様に提供しようという姿勢が貫かれています。
竹内氏はその監査の模様を次のように振り返ります。
竹内氏:BCSになれるかどうかはドイツ本国のボッシュが決裁する厳しいものです。クリアする項目は分厚いマニュアルくらいあって、SQT以外にも丸一日かけて行うものもあります。輸入車ディーラー以上であることが求められるほどです。
BCSになってからも切磋琢磨を続けなくてはなりません。

進化し続ける時代はシステムにお金をかけただけではダメ。人材にお金をかけ新車の知識を常に習得しなければ修理はできないと語る竹内氏

竹内氏:ボッシュではソフトウエアやトレーニングの提供、ドイツでの研修なども行っていますが、それを継続的に行う必要があります。現在、私はボッシュシステムテクニシャンを取得していますが、それはシャシーやエンジンシステムをはじめとした5つの項目の講習と試験をクリアしなければ取得できないものです。
竹内氏:有効期限があり更新する必要がありますが、私だけでなく従業員であるメカニックにもそれを取得するように努力しています。
竹内氏:進化し続ける時代はシステムにお金をかけただけではダメ。人材にお金をかけ新車の知識を常に習得しなければ修理はできないと考えています。だからこそボッシュシステムテクニシャンを受ける必要があります。
クルマの進化に真摯に立ち向かう姿勢があるからこそ、BCSの看板を掲げ続けていられるのです。

ボッシュが保有する膨大なデータを参考に修理の方針を考えていくことも

加えて竹内氏はBCSの利点をこう語ります。
竹内氏:BCSのメリットは150カ国にも及ぶ拠点から出てくる修理箇所のビッグデータがあることなんです。そのクルマの「どこが壊れやすいか?」ということが一目瞭然であり、それを参考にしながらクルマを診断することも可能になります。
竹内氏:逆にこちらからこんな壊れ方をしたとデータを上げ、本国のボッシュが有意義だと判断すればそれがビッグデータに蓄積されます。
ボッシュシステムテクニシャンという一定レベル以上の人材がアップしてくる整備データは、かなりの信頼度があり、とても有効な情報となるのです。
一方BCS加盟店はワランティ(保証)業務も行っています。ボッシュ製品に何かしらの不具合が出た場合、ディーラーでは有償であると判断が下ったものであったとしても、ボッシュの製品であれば無償で交換してくれる可能性があるということです。
これはケースバイケースではあるのですが、セカンドオピニオン的にBCS加盟店に依頼すれば、もしかしたら無償交換が可能というケースもあるそうです。
修理で困った場合、ダメ元でBCS加盟店の門をたたいてみるのも悪くはありません。

日進月歩のクルマたち...安全のためにもきちんとした整備を

今のクルマは精密機器の塊、きちんと安全に乗り続けるには正しい整備が必要

自動車は日々進化し、ADASをはじめ次々に性能を向上させて行きます。
そうなった時に必要なのはやはりきちんとした整備であるということがご理解頂けたかと思います。
だからこそ、しっかりとした知識と経験、そして設備を備えた上で厳しい監査にクリアしたBCSが必要になってくるというわけ。
少しでもクルマの動きに疑問を感じたのなら、BCSを訪れてみることをオススメします。