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伊勢丹新宿店が時計売場をリフレッシュオープン。面積を拡大した「ブランパン」から読み解く顧客を飽きさせない新戦略とは?

提供:ブランパン

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伊勢丹新宿店 本館5階 時計コーナーのリフレッシュオープンを機に誕生した「ブランパン ブティック 伊勢丹新宿店」。ブランパンは「ファインウォッチメーカー」の一角として従来よりも展開スペースを拡大。テーブルを配置するなど、これまで以上にゆっくりと時計選びが楽しめるようになった。

ここ数年の金融緩和政策や株式市場の高騰もあり、いま高級時計が世界中で売れている。時計の本場、スイスの時計協会FHの発表によると、2023年の輸出総額は前年比で7.6%も上回り、267億スイスフランに達して3年連続で過去最高を記録。コロナ禍を経て価値観の変化が起きたことも影響し、新たにミレニアル世代(1980年代前半から1990年代半ばまでに生まれた人々)への浸透もみられる。日本においても時計マーケットは依然活発だ。そうした反響を受け、百貨店売上トップの伊勢丹新宿店では2024年3月27日に本館5階 時計コーナーのリフレッシュオープンを実施した。売場面積を大幅に拡張しただけでなく、新規ブランドの導入やブランド哲学に則した新しいアプローチに基づく店舗レイアウトを行うなど、注目を集めている。

ハイウオッチメイキングを売りにするステータスブランドがブティック同等の規模へと増強

伊勢丹新宿店は、国内屈指のファッション性の高い百貨店として知られている。高級時計についても数々の名品を取り揃えるなど、早くから注力してきた。その甲斐あって売上は年々上昇。時計コーナーの2001年と2023年の売上比較では、実に4倍以上もアップしたという。このような背景や外商顧客の要望を受け、今回の大規模なリフレッシュオープンへと至ったわけだ。

ニーズの高いハイブランドに注力した独立ブースの展開のほか、日本が誇る技術を生かした最高峰の国産時計のセレクト、時計修理コーナーの見直しなど、プロダクトからサービスまで充実の時計売場が伊勢丹新宿店に誕生した。

リフレッシュオープン後の時計コーナーで大幅に規模を拡大したブランドが、「ブランパン」だ。1735年にスイスで創業された現存する世界最古の時計ブランドとして知る人ぞ知る存在でありながら、近年の意欲的なニューモデルの展開や、モダン ダイバーズ ウオッチのルーツ的モデルである「フィフティ ファゾムス」が2023年に70周年を迎えて再評価されるなど、百貨店や時計専門店で確実に存在感を高めている。

ブランパン「フィフティ ファゾムス オートマティック」 Ref.5015-1130-52A 232万1000円/現在のダイバーズ ウオッチを定義したシンボルは現行モデルで第3世代。風防と逆回転防止ベゼルがサファイアクリスタルでできており、超硬質でクリアなため高い視認性を誇る。直径45mmのステンレススチールケースは重厚な作りだが、ラグの絶妙な設計や上質なファブリックストラップにより快適な装着感を実現。5日間のロングパワーリザーブを確保する自動巻きムーブメント(自社製Cal.1315)を搭載。

伊勢丹新宿店では15年以上にわたって取り扱うブランパンを、同じくスイス発祥の名門であるパテック フィリップやブレゲと並べて専用コーナーで展開。「ブランパン ブティック 伊勢丹新宿店」として新たにスタートが切られた。いわゆるショップ・イン・ショップの体裁が採られており、間口を広く設けて入りやすさと回遊性を求めたという店内には、ブランパンの世界観を演出した路面ブティックと遜色ない規模の装飾が施されている。

「ブランパン ブティック 伊勢丹新宿店」には、ブランパンの故郷ジュウ渓谷のヴィルレにある本社兼アトリエを彷彿とさせる時計職人用ワークベンチを模した木製の什器やインテリア、ブランドの魅力を凝縮したムービーを映し出すディスプレイが設置されている。

伊勢丹新宿店のバイヤーは、ブランパンを主要ブランドとして選んだ理由について次のように話す。「時計コーナーのリフレッシュオープンに伴い、取り扱う舶来ブランドをファインウォッチメーカーとクリエイティブウォッチメーカーに概略的にカテゴリー分けしました。ファインウォッチメーカーとは、ハイエンドのコンプリケーションウオッチを製造できる高度な技術や極上のクラフトマンシップを保有するブランドを指し、お客様へのサービスにおいてはエクスクルーシブ性やプライベート性に重点を置いています。ブランパンのほか、パテック フィリップ、ブレゲ、ヴァシュロン・コンスタンタン、A.ランゲ&ゾーネ、ジャガー・ルクルトらがこちらに属します」

軍用時計として認められ、ラグジュアリー ダイバーズ ウオッチの時代を切り拓いた「フィフティ ファゾムス」。そこから派生したモダン ダイバーズ ウオッチ「フィフティ ファゾムス バチスカーフ」。アメリカ空軍向けとして開発された由緒ある「エアコマンド」。トラディショナルで不変的価値を持つ「ヴィルレ」。タイムレスに女性を魅了する「レディバード」。同店ではブランパンのコレクションをフルラインナップしている。

「一方のクリエイティブウォッチメーカーは、トレンドや人気デザインを創出しており、エンターテインメント性を求められるお客様の期待に応えることを得意としています。ファッションやカルチャーに敏感で、ご自身のライフスタイルを確立していらっしゃる時計愛好家の方に好まれるウブロやゼニス、ブライトリング、チューダー、タグ・ホイヤー、ロンジンなどがこちらに該当します」
伊勢丹新宿店が取り扱う時計ブランドの中でも、揺るぎない歴史があり、古来の伝統的な機械式時計作りを邁進するブランパンは、生粋の「ファインウォッチメーカー」。伊勢丹新宿店が重点ブランドとしてセレクトした理由も頷ける。

ブランパン「ヴィルレ トラディショナル チャイニーズ カレンダー」 Ref.00888-3632C-55B 1157万2000円/創業地の名を冠する旗艦コレクションの最新作。段差をつけたステップベゼルやリーフ針といったエレガントなスタイルに、グレゴリオ暦と中国暦、ムーンフェイズを組み合わせ、各種表示を特許取得のアンダーラグコレクターで調整できる利便性も魅力。干支がデザインテーマで、深みのあるグリーン文字盤は最高品質のグラン・フー エナメル。自動巻き(自社製Cal.3638)。世界限定50本。

趣向が凝らされた戦略的なブランド配置や新サービスが時計好きを惹きつける

リフレッシュオープンがもたらしたメリットはまだまだある。前記の「ファインウォッチメーカー」&「クリエイティブウォッチメーカー」で売場のエリアが分けられているが、これらに加えて「ジャパンゾーン」を展開。ここに日本を代表する「セイコー」や「G-SHOCK」をコンセプトショップとしてアイランド型の独立コーナーに集め、人気が高まる国産時計を回遊のメイン導線に置く新しい試みが始まった。なおこれらのブランドからは、日本らしい上質なモノ作りが実感できるハイクラスのコレクションがセレクトされる。

百貨店にある一般的な時計売場では、国産ブランドはどちらかといえばメインから外れた位置に並べられる傾向が強い。しかしリフレッシュオープン後の伊勢丹新宿店の時計コーナーでは、入口付近のポジションに位置し、誰もが気軽に立ち寄りたくなる雰囲気を生み出した。また同店で最も手に取りやすいG-SHOCKは、毎月中旬にリリースされるニューモデルがいち早く並べられる。

こうした職人気質が生み出す珠玉のタイムピースが一堂に会する店舗は、ブティック化の波が顕著な都市部において貴重な存在である。とりわけ、熟練の職人が手作業で仕上げるため年間生産本数が限られる「ファインウォッチメーカー」たるハイブランドが、これほど集められている売場も少ない。奥深い機械式時計への理解を深め、そして広めることにも貢献してくれるに違いない。

ブランパン「フィフティ ファゾムス バチスカーフ コンプリートカレンダー」 Ref.5054-3640-O52B 501万6000円/素材やサイズ、搭載機能で種類豊富なバチスカーフに、月・日付・曜日の表示とアイコニックな顔付きムーンフェイズを融合。ブランパンの哲学と高度な技術に基づき、繊細な18Kレッドゴールドケースながらダイバーズ スペックである30気圧防水を確保している。ブランドカラーの深いブルーを用いたサンバースト仕上げの文字盤をセット。自動巻き(自社製Cal.6654.P.)。

また顧客サービスに対する飽くなき追求から、時間がかからない修理や精度チェック、電池やストラップの交換が行えるメンテナンスコーナーの位置を変更し、訪問客がガラス越しに時計修理技能士の作業風景を見物できるようになった点も特徴のひとつだ。これを機にメンテナンスの相談を持ちかけてみるのも良いだろう。さらに三越伊勢丹グループが用意しているクレジットカード「エムアイカード」に紐付く会員向けの新保険サービスもスタートした。時計代金(税抜)の5%を保証サービス料としてエムアイカード決済またはエムアイポイント払いすることで、最大10万円(税込)までの修理代金カバーやオーバーホール代金20%オフなど、アフターサービスにおけるあらゆる優待や特典が受けられる。一部ブランドはサービス対象外だが、購入時計を末長く愛用したい者にとって大きなメリットである。

これまで以上にリペアやメンテナンスに関する相談を持ちかけやすくなった伊勢丹新宿店の修理コーナーには、安心して任せられる担当スタッフが常駐している。時計の状態が気になった際、気軽に購入店へ問い合わせられることも時計を長持ちさせるコツ。

ここまで「ファインウォッチメーカー」として選ばれたブランパンを代表例に、リフレッシュオープンしたばかりの伊勢丹新宿店 時計コーナーについて解説してきた。ここ数年続く高級時計ブームに応えるべく、ユニークな手法とアイデアで新たな百貨店の時計売場像を構築し、アフターサービス面でも長期的に顧客と繋がるためのシステムのアップデートに成功した。日本国内における高級時計の流行発信地といえば、名立たるブランドのブティックが軒を連ねる東京・銀座もしくは大阪・心斎橋がイメージされるが、百貨店一店舗ながら売場編集力やサービスで引けを取らない魅力が伊勢丹新宿店にはある。時計マーケットに新風を巻き起こす存在として、今後の動向にも注目だ。