ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から3カ月。当初は首都キーウの陥落を目指したロシアでしたが、ウクライナの抵抗によって4月に入ると撤退。その後は東部ドンバス地方などの制圧に向け兵力を集中しましたが、ウクライナも強く抵抗。戦闘が長期化する可能性が指摘され始めました。ここでは侵攻開始からの動きと要点をわかりやすく解説します。
注目集めたプーチン大統領演説
旧ソ連の対ナチス・ドイツ戦勝記念日である5月9日、ロシアのプーチン大統領の演説が注目を集めました。実際の演説では、ドンバス地方などの「併合」や「戦争宣言」への言及はなく、ウクライナ侵攻について、クリミア半島への「侵略」やウクライナの核保有を阻止する先制攻撃だと正当化しました。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は声明を発表し「一片の土地、一片の歴史であっても与えるつもりはない」と領土面で一切譲歩しない姿勢を強調しました。
ウクライナ侵攻 戦況の推移①
軍事侵攻は2月24日に始まりました。ロシアは首都キーウ陥落を目指し、北部・東部・南部の3方向から進軍。ウクライナ第2の都市ハルキウなど東部地方などに激しい攻撃を加え、3月上旬には南東部の港湾都市マリウポリも包囲しました。しかし、ウクライナの抵抗とともに、前線への補給体制の不備や戦力の喪失といった事態に陥るなど戦況はこう着状態に。4月に入ると、ロシアは首都キーウからの撤退を余儀なくされました。
ウクライナ侵攻 戦況の推移②
首都キーウからの撤退後、ロシアは戦力を再編成し、東部ドンバス地方に集中させ、南部も含めて制圧を目指しました。5月9日の戦勝記念日に向け、ロシアが攻撃を激化するとの観測も浮上しました。一方で、ウクライナも各国からの軍事支援などを受けてロシアに徹底抗戦。しかしマリウポリでは、ロシアがアゾフスタリ製鉄所と周辺地区の支配を拡大。兵士と民間人が立てこもる製鉄所を攻め続け、5月17日に事実上制圧したとみられています。
戦争犯罪が疑われるロシア軍の行為
ウクライナへの軍事侵攻の開始以降、東部のハルキウなどでは住宅地が激しい砲撃を受けました。国際刑事裁判所(ICC)は3月上旬、ロシア軍による戦争犯罪の捜査を開始しました。その後も原子力発電所への攻撃をはじめ、病院や避難民が集まる劇場などの爆撃が続き、4月上旬に解放されたキーウ近郊のブチャでは、ロシア兵による民間人への拷問や殺害などの疑いが出ています。
国際社会の反応
軍事侵攻直後から、G7(主要7カ国)など国際社会はロシアを厳しく非難するとともに、経済制裁などの措置について協議を開始。国連安全保障理事会でもロシアに即時撤退を求めるなど、主に米欧の理事国からロシアの孤立化を狙う動きがありました。一方で中国、インドなどはロシアへの明確な非難を避ける立場を取っています。
米欧日が対ロシア金融制裁を発動
ロシアのウクライナ侵攻を受け、米国や欧州連合(EU)、日本は対ロシア金融・経済制裁に踏み切りました。主な内容は、世界の銀行決済取引網「国際銀行間通信協会」(SWIFT)からのロシア排除やロシア中央銀行の資産凍結のほか、半導体などのハイテク製品の輸出規制などです。
ロシア産エネルギー禁輸も拡大
対ロシア経済制裁は、エネルギー分野にも拡大しています。ウクライナ侵攻後、米国が早々とロシア産の石炭、原油、天然ガスの輸入禁止を打ち出した一方で、エネルギー供給のロシア依存が強い欧州では石炭こそ輸入禁止で合意したものの、原油は輸入禁止を議論している最中で、天然ガスでは早期制裁の見通しは立っていません。日本は石炭と原油は段階的削減・輸入禁止の方針を打ち出していますが、天然ガスについては権益を維持するとしています。
原油や小麦価格高騰...家庭への影響も
ウクライナ危機の影響は、家庭にも出始めています。ロシアは原油輸出量が世界2位、小麦は世界1位、ウクライナは小麦の輸出量が世界5位のともに農業大国で、供給不足などへの懸念からこうした資源や穀物の相場が高騰しているのです。ガソリンや電気料金、パンなどの値上げが加速する恐れがあります。
ウクライナからの難民
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、ウクライナから国外に避難した人は600万人を超えました。避難民の受け入れ先となっている周辺国は、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、モルドバなどで、中でもポーランドは320万人超と最も多く受け入れています(UNHCR発表 5月12日時点)。また710万人以上がウクライナ国内で避難を強いられていると推計され、今回の軍事侵攻による総避難者数は1300万人を超えているとみられます。
ウクライナの人々を支援
ウクライナ支援に向けたNPO法人などの募金サイトの検索結果をまとめています。クレジットカードやTポイントで寄付ができます。
6月14日から6月19日まで、ヤフーで「ウクライナ支援」と検索すると、おひとりにつき10円がヤフーからウクライナ避難民支援活動のために寄付されます。
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