8月2日、東京エリアで使用率ピーク時の電力使用の見通しが一時96%に達した。猛暑が続くなか、家庭での節電が呼びかけられている。Yahoo!ニュースがコメント欄で暑さ対策や節電についてアイデアを募集したところ、1100件を超えるコメントが寄せられた。冷房の使い方など暮らしの知恵が集まった一方で、節電要請に懐疑的な声も目立った。家庭で効果のある対策について、私たちはどう考えればいいのだろうか。(6月17日~7月4日のコメント、計1173件を基に構成)
(Yahoo!ニュースオリジナル特集編集部、監修:消費生活アドバイザー・和田由貴)
夏の暑さ、どう乗り切る?
夏の暑さ対策で目立ったのは、冷房の使い方に関するコメントだった。フィルターの定期的な掃除や、サーキュレーターや扇風機との併用の効果を実感する人も。カーテンや雨戸、グリーンカーテンなどで日中の日差しを遮る工夫も目立った。熱帯夜には竹製のすだれやアイス枕、入浴後に体に塗るクールジェルといったグッズを活用しているという声も。また、暑さの感じ方は気温だけではなく湿度も影響するとされるが、その対策として「台所で長時間の煮炊きものをしない」などのアイデアもあった。
電気代削減に効果も 節電の工夫は
住宅の断熱性能を改善した家庭では「夏は涼しく、冬は暖かい」「電気代が劇的に下がった」など、節電効果や過ごしやすさに驚く声が見られた。太陽光パネルや蓄電池、家庭用燃料電池などの自家発電をすでに導入していたり、興味を持っていたりする人も少なくなかった。また、「葬儀では暑くても喪服で、倒れる人もいる。その一方で、冷房は20度。節電のためには、社会の変化にあわせてこれまでの慣習やライフスタイルを変える必要があるのでは」という意見も見られた。
「節電は無理」「要請の前に対策を」など、意見や批判も
猛暑下での節電の呼びかけについては、「火力に頼らない発電手段の検討が必要」など、国のエネルギー対策への意見が目立った。「電力の供給量を上げるために、何もしてこなかったのではないか」など、国や電力会社の対応を批判する声も見られた。「乳児がいるなか、節電は無理。家庭よりも商業施設などに呼びかけるべき」と、方向性に懐疑の目を向ける人も。物価の上昇が続くなか、さらに国民に負担を強いることへの疑問や、停電になった際の対策のほうが大事ではないかという声もあった。
昨年比で電気代は約2000円上昇......原因は? 電力がひっ迫するとどうなる?
電気代は昨年から上昇を続けている。東京電力管内では今年8月の平均モデルは9118円となっており、昨年比で2000円以上上がるとされている。
原因は複合的だ。日本のエネルギー供給は火力発電に依存していたが、世界的な脱・炭素の流れで縮小傾向にあったこと。震災の影響で、発電施設の稼働状況に影響が出ていること。ウクライナ情勢がエネルギーの輸入価格の高騰を招いていること。さらに、コロナ禍で人々の生活スタイルが変化し、エネルギー需要の予測が以前よりしづらくなっていることなどが挙げられる。
電力の安定供給には、最低でも3%の予備率(※)が必要とされる。予備率を下回り、電力がひっ迫すれば、生活に大きな影響が出る大規模停電にもつながりかねない。
※電力需要のピークに対し、供給力にどの程度の余裕があるかを示すもの。
冷房の使い方には誤解も多い? 家庭で効果のある節電方法は
夏季の電力消費割合を家電製品別に見たとき、34.2%と最も大きいのがエアコンだ。最近よく耳にするのが、冷房の推奨温度の問題だ。政府の節電要請では「28度」を推奨しているが、これは機器の設定温度ではなく室温を指す。
節電に詳しい消費生活アドバイザーの和田由貴さんによれば、これ以外にも、冷房の節電方法についてはさまざまな誤解があるという。
消費生活アドバイザーの立場から製品安全や消費者問題、環境教育などに携わり、日常生活に密着したアドバイスを得意とする。環境カウンセラー、家電製品アドバイザー、3R推進マイスター(環境省第一期国推薦委嘱)などの資格・経歴も持つ。
エアコンに続いて高い割合を占めるのが、冷蔵庫と照明だ。それぞれどのように注意すればいいのか。
17~20時の時間帯は「消費電力が大きい家電」に注意
電力ひっ迫を回避するためには、時間帯を意識して家電を利用することも重要だという。例えば電気ケトルには保温機能がないため1日あたりの消費電力量は少なく、保温機能のある電気ポットと比べると電気代は安く済む。しかし瞬間的な消費電力は大きいため、時間帯によっては注意が必要だ。
国が家庭での節電を呼びかけているのは、17~20時。太陽光の発電量が大きく低下する一方、家庭での電力消費量が上昇するタイミングだからだ。この時間帯について、和田さんは消費電力が大きい家電の使い方に注意を促す。
みんなのギモンに専門家が回答
コメント欄の投稿から、多くの人が抱いていることがうかがえた節電への疑問。和田さんに回答してもらった。
Q:すでに自宅でいろいろ節電しています。これ以上何をやればいいのでしょう?
A:昔から知られる節電方法のなかには、いまや効果の薄いものも含まれています。例えば最近の家電製品は待機電力を使用しないものが多いので、電源プラグをこまめに抜くことは、節電対策としては効果が薄いです。こうした知識をアップデートすることも、節電のひとつといえます。
Q:家庭に節電を呼びかけることに、意味はあるのでしょうか?
A:電力消費の割合が事業者と比べると少ない家庭への節電要請に疑問を抱く方も多いと思います。夏の電力需要のピークは昼のため、従来は昼の時間帯の節電が重要視されていました。しかし脱・炭素の流れから太陽光発電が普及したことで、日中の太陽光の発電量が増えた一方、発電量が下がる夕方のひっ迫が懸念されるようになりました。夕方は事業者ではなく、家庭の電力需要が高まる時間帯です。このため、家庭に対しても節電が呼びかけられているのです。
Q:リモートワークのため、夏の電気代が心配です。
A:仕事に使用する一般的なパソコンの消費電力量は、それほど大きくないので気にしなくても大丈夫でしょう。家族の複数人がリモートワークをしている場合、可能であれば一つの部屋に集まって冷房を使うようにしましょう。また、夏場は冷蔵庫から冷たい飲み物を頻繁に出し入れしますが、開閉回数が多いと庫内の冷気を逃がしてしまいます。大きなサイズの真空断熱の水筒や保冷カップを使えば、氷も解けにくく長時間冷たい飲み物が楽しめます。
電力不足は今冬が本番? 長期化するエネルギー問題にどう備える
電力不足が懸念されるのは、今夏だけではない。今冬には北海道と沖縄を除くエリアの広範囲で電力の予備率が低下し、さらに厳しい状況となることが予測されている。
国や自治体は、節電以外に家庭でとれるエネルギー対策として、太陽光発電や蓄電池を活用した自家発電のシステムを推奨し、補助金も設けている。また一部の電力会社では、節電要請と実施に応じたポイント付与を行うデマンドレスポンスサービス導入の動きがあり、政府も参加者に対してポイント付与をするあらたな枠組みを決定した。さらに岸田首相は、冬の安定的な電力供給のため、最大9基の原子力発電所の稼働を進めることも表明している。
今夏、そして冬に備えて私たちが今からできることは?
記事作成の基となった記事はこちら。
【みんなで考えよう】今夏の電力不足に備え、あなたが考える「節電」と「暑さ対策」は?
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