11月23日は「ゲームの日」。新型コロナ感染拡大の影響で、スマートフォンやゲーム機などでゲームを楽しむ人が増えている一方、香川県が昨年4月、ネット・ゲーム依存症対策条例を施行するなど、子どもに対してゲームの利用を規制する動きがみられる。Yahoo!ニュースがコメント欄で意見を求めたところ、2500件を超えるコメントが寄せられた。子どもの頃ファミコンに親しんだ人や、全くゲームをやらせてもらえなかった人など、さまざまな立場の声が集まったが、ゲームの依存性を懸念しつつも、「子どもにとっては重要なコミュニケーションツールの一つ」との意見が多く、「ゲームは悪」といった一昔前の価値観からの変化が感じられた。一方で、オンラインゲームや課金などにどう対応するべきか、危機感を持っている姿も浮かび上がった。(10月29日~11月5日のコメント、計2529件を基に構成)
(監修:臨床心理士・森山沙耶、Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
メリットが大きいと考える意見
多かったのがコミュニケーションの機会になるとの意見。「ポケモンの話で盛り上がる子達とかがいい例。友達が出来て、学校に行くのが楽しくなる」などの声があった。また「コロナ禍で外に遊びに行けない状況。息子は宿題や食事を終わらせた後、ゲームでワイワイ会話をし『家にいながら』友達と遊んでいました」など、コロナ禍での有用性を指摘する声も。「うちの子は軽度知的障害と軽い麻痺が手足にあります。一人で外出などは無理ですが、ゲームは指先や調べ物、友達とのやり取りの訓練になりとても役に立っています」との声もあった。「桃鉄で日本の地名と名産品、信長の野望で戦国時代etc...ゲームがなかったら、これらを知る機会がなかった人は多いでしょうね」「パソコンの扱いに興味が持ててブラインドタッチやネットを介したビジネスに大いに役立った」など、知識やITスキルを得たという人も多かった。
デメリットが大きいと考える意見
ゲームの依存性を指摘する声が目立つ。「去年の3月〜5月。小学校高学年の娘は約束守れずになり、ゲーム漬けに。現在、自律神経を壊し起立性調節障害や過敏性腸症候群をかかえてます。不登校です」とコロナをきっかけにゲームとの付き合い方が変わってしまった人も。「今の小学生を見てると、弱いから課金しようなど直ぐ口にします。実際、課金したくて、息子にお金取られました」と、課金できるゲームについては制限すべきとする意見も多かった。「2.0あった視力が一気に0.5と0.2に落ちました」と視力への影響を気にする声も。「中1のうちの子、もっともっと興味の幅が広かったのに、本もサッパリ読まなくなりました」などゲーム以外に気が向かなくなることへの懸念もあった。「我が家は全くゲームをしません。結局親が、子供を大人しくさせるためにさせることが始まり」など最初からゲームはさせないと決めている人の声もあった。
家庭ごとにどんな工夫をしている?
家庭ごとに試行錯誤している姿が浮かび上がった。「小4の息子はサッカー少年。ゲームする時間が無いので、平日朝早起きしてやってます。21時に就寝して朝6時起床、朝食ができるまで1時間弱ゲーム。我が家にとってはゲームのおかげで早起きできるので、悪ではないし、むしろ良」と生活リズムを整えるために活用しているという声があった。「我が家はゲームは公園に持って行かない。ゲームを持ってない子と遊ぶ時はゲームで遊ばない。家の中ではゲーム禁止。どーしてもゲームしたいなら友達と庭でやってくれ!と」というユニークな案も。「うちの子は小4ですが、一緒にMMO(ネットを介して複数人が同時にプレーできるオンラインゲーム)をやってます。ただ、刺激が強いと言うのも事実だから1人の時はさせない。勝手にできないようにロックする」と必ず親が一緒にやっているという人もいた。
若年層のゲーム利用、実態は?
医療機関の調査では、10~29歳の若年層で、過去12カ月間にゲームをしていたと答えた人は85%。「ゲームをやめなければいけない時に、しばしばゲームをやめられませんでしたか」に「はい」と答えた割合はゲーム時間が長くなるにつれて増え、60分未満の使用でも2割が「はい」と答えた。
子どもとゲーム、取り巻く情勢は?
香川県では昨年4月、ネット・ゲーム依存症対策条例が施行された。条例に罰則はないが、18歳未満のゲーム利用は平日では1日60分、休日は90分を目安とし、各家庭で決めたルールを守らせるよう保護者が努めなければならないとしている。
中国では政府が今年8月、18歳未満を対象に、オンラインゲームをプレーできる時間を週3時間までに制限するゲーム規制を発表。一方、韓国は今年8月、深夜の午前0時から早朝の午前6時まで16歳未満の青少年のオンラインゲーム接続を遮断する制度を年内に廃止すると発表した。
WHO(世界保健機関)は2019年にゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を国際疾病として正式に認定した。2022年1月から適用される。
コロナ禍、若年層のゲームの利用状況に変化
民間企業の調査では、コロナの影響によってゲーム時間が増えた人は約6割(59.8%)だった。年代別では「10代」がトップで、約8割(83.6%)が増えたと回答、続いて「20代(62.0%)」「30代(51.3%)」の順。ゲームの効果については「ストレス解消(66.6%)」がトップで、「外出自粛中の気分転換(66.0%)」が2位。「友人・家族とのコミュニケーション活性(40.8%)」「目標達成による意欲向上(31.7%)」「集中力の向上(17.3%)」が続く。また「世界中の人と繋がれる」といった声も。
ゲームとうまく付き合うには
ネット・ゲーム依存の予防や回復支援を行っている臨床心理士の森山沙耶さんに話を聞いた。
Q.友達と遊ぶのにゲームは必要?
A.ゲームを通じて子ども同士がコミュニケーションを取れるというメリットはあります。ゲームを与えるか与えないかは親の価値観によると思いますが、親がゲームに対して不安や不信を強く持っていると、結果的に子どもを縛ったり、ゲームをしている姿を否定的に見てしまったりするかもしれません。すると子どもが親に隠れてゲームをするようになり、ルールを決める話し合いができない場合も。
Q.制限していると、反動で執着する?
A.一方的に厳しく制限されることで子どもが親に対して反抗的になり、ゲームができなくて暴れたり、親の目が届かないところでゲームをやったりするという事例は多いですね。子どもの頃にできなかった反動で、大人になってから執着するというケースに関しては、長期的に調査した例がまだ少ないため、因果関係があるとはいえません。
Q.年齢によって与えてもよいゲームは違う?
A.基本的に、各ゲームの年齢別レーティングが目安です。匿名でコミュニケーションでき、暴力的なものや興奮しやすいもの、課金が必要なものには注意。なお、WHOによる「子どもの身体活動、睡眠に関するガイドライン」に、5歳未満について、ゲームのほか、テレビやスマホも含めたスクリーンタイムは、1日の推奨時間が記されています。1歳以下には推奨せず、2〜4歳は1時間以内です。
Q.どの程度から「依存」に当てはまる?
A.長時間の利用が必ずしも依存に当たるわけではなく、コントロールできているかどうかが重要です。ゲーム障害の主な診断基準としては、「ゲームをする時間や頻度を自分でコントロールできない」「日常生活でゲームを他の何よりも優先させる」「生活に支障が出てもゲームを続け、エスカレートさせる」の三つに当てはまる状態が1年以上続くことです。
Q.視力は低下する?
A.視力が落ちた、眼精疲労があるという相談は実際によく受けます。ただ、現状では、ゲームをすることが視力の低下につながるという明確なエビデンスはありません。
子どもが心配な時、親はどうかかわる?
大切なのは、家庭でルールを作ること。ルール設定は、小さなことから始めます。例えば、夜遅くまでゲームをしていて、翌朝学校に遅刻してしまうのなら、夜の終了時間を設定する。支障が出ているところからルールを設けます。ゲーム以外に他の楽しい活動にも目を向けられるようにするとよいでしょう。
ルールを守るためには、肯定的なコミュニケーションを取ることが重要です。ゲームに夢中な子どもを「困った子で手に負えない」と思い、叱責(しっせき)することが増えると、子どもは「親は自分を認めてくれない」という思いを抱くかもしれません。ゲームをするなかでは、友達から頼りにされたり、自分の役割を感じられたりしますから、いっそうゲームに傾倒してしまいます。
そこから抜け出すためにはまず、子どもの状態を客観的に観察すること。例えば、自分からやめている時もあるかもしれません。その際、子どもができていることを見つけ、褒める。すると、子どもも親の言うことを受け入れやすくなるでしょう。
ゲームをやめられないのは「駄目な子」だからではなく、自分でゲームをやめるというスキルをまだ持っていないだけ。「何時間まで」と約束しても、すぐには守れないかもしれませんが、声を掛けたりしながら、ルールを守ることが自分にとってもプラスだと感じられるように親がかかわっていく。ペアレンタルコントロール(子どもの利用を制限する機能)などを活用したうえで、根気強く寄り添いましょう。
ゲーム業界は子どものゲーム依存、どう考えている?
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会の担当者によれば、ゲームを安心・安全に楽しむために必要な取り組みは、
・適正な利用時間の設定
・年齢に合ったソフトの選択
・インターネット接続の制限
・有料コンテンツ利用によるトラブル防止
の四つ。そのために、ゲーム機やスマートフォンのペアレンタルコントロール機能を有効活用してほしいと語る。ただ、これらの機能の認知度が高くないこと、設定方法が分かりづらいという指摘があることについて、現状の課題として認識しているという。課金などを強制的に制限する仕組みを作ることに関しては、子どもにもゲームをする権利があり、その権利を侵すことになると説明した。
大切なことは「家庭内でしっかりルールを決めてもらうこと」で、業界として、制限機能の活用やゲーム利用の健全化に関する啓発活動を進めていくという。
記事作成の基となった記事はこちら。【みんなで考えよう】未成年にとって、スマートフォンやゲーム機などのゲームはメリットとデメリットどちらが大きいと思いますか?
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