夏から秋のはじめは「出水期」と呼ばれ、台風や線状降水帯による集中豪雨が発生しやすい時期です。気象庁が提供する線状降水帯予測情報やキキクル(危険度分布)、防災タイムラインを利用し水や土砂災害に備えましょう。
気象庁が「線状降水帯予測情報」の提供を開始
「線状降水帯」を原因とした大規模な豪雨災害が近年頻発しています。そこで、気象庁は2022年6月1日から線状降水帯の予測情報の発表を始め、可能な場合は発生が予想される半日前から6時間前に呼びかけることにしました。ひとたび線状降水帯が発生すると、わずか数時間で災害発生の危険度が飛躍的に高まることがあります。予測情報を聞いたら、すぐに避難できるようにハザードマップや避難所、避難経路の確認などを行いましょう。
「線状降水帯発生情報」にも注意
また、気象庁は2021年6月から線状降水帯によって非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている場合に「顕著な大雨に関する気象情報(線状降水帯発生情報)」の運用を始めていますが、2023年5月からは予測技術を活用することで、従来より30分程度早く発生情報を発表できるようになりました。この情報が発表されるときには、すでに大雨が降っていて災害発生の危険度が相当高まっていると考えられますが、さらに大雨が降り続いて危険度が急激に高まることが予想されます。市町村が発令する避難情報などを活用しながら、自分の命を守るための適切な対応をとることが重要です。
警戒レベルと取るべき行動
「避難」「雨」「川」の防災情報を5段階に整理し、色分けして一目でわかるようにしたものが警戒レベルです。最も危険度が高いのは「黒のレベル5」ですが、この段階ではいつ災害に巻き込まれていてもおかしくありません。高齢者、その支援者などは「赤のレベル3」、その他の人も「紫のレベル4」となった段階で安全な場所に避難してください。
避難判断に役立つキキクル(危険度分布)の活用
土砂災害や洪水などが発生する可能性(危険度)を地図上で確認できるのが、気象庁提供のキキクル(危険度分布)です。警戒レベルと同じ色で危険度を表しているので、自分の住んでいる地域が赤や紫で表示されたら、速やかに安全な場所に避難する判断をしてください。キキクルは気象庁のホームページの他、スマホアプリのプッシュ通知などでも確認できます。
洪水キキクルの活用
中小河川では水位が急激に上昇することがあります。また、河川の下流域では雨が降っていなくても、上流で降った雨によって水位が上昇することがあります。キキクルはこうしたことも加味して色分け表示されているので、こまめに確認し、早めに色に応じた行動を取りましょう。
土砂キキクルの活用
浸水害の場合は家の2階などへの垂直避難で命を守れるケースもありますが、規模の大きな土砂災害は家ごとなぎ倒してしまいます。また、過去には自治体の避難指示が間に合わず被害が出たケースも少なくありません。キキクルで危険度を確認したら、避難指示などが発令されていなくても自主的に避難の判断をしましょう。
避難時の服装
持ち出す荷物は必要最小限にして、身軽に動けることを優先します。いざという時に悩んだり、迷ったりしないように、あらかじめ非常用持ち出し袋などを用意し、中身を定期的にチェックするようにしましょう。
基本は安全なうちの水平避難
過去には避難のタイミングが遅かったために、避難途中に被害に遭ったケースも少なくありません。あくまで安全なうちに、安全な場所へ水平避難することが基本ではありますが、自宅の2階や頑丈な建物の上層階などに避難した方が安全な場合は、垂直避難も検討します。
水位が膝を超えると歩けない
浸水の深さが深ければ深いほど歩いて避難することは困難になります。大人の男性であっても、膝の高さ(40〜50センチ)を超えると、水圧の影響などで歩くのが困難になります。小柄な女性や子供になると、さらに浅くても歩けなくなります。また水の流れがあると、膝より浅くても足をすくわれて簡単に流されます。水の力を甘く見ず、浸水前に避難するようにしてください。
冠水下では道の状態がわからない
どうしても浸水後に避難しなければならなくなった場合は、傘や棒などで足元を確認しながら慎重に移動してください。しかし、たとえば真っ暗な夜間、大雨が降る中、安全に気を付けながら行動するといっても限界があります。可能な限り、こうした状況に陥らないようにしてください。
車に乗っていて冠水した場合
車での避難は一見安全そうに思えますが、必ずしもそうではありません。時に車ごと川に落ちてしまったり、土砂災害に巻き込まれたりすることもありますので、車を利用して避難する場合も、徒歩での避難と同様に早め早めを心掛けてください。もし車が冠水した場合は、無理に車を走らせるようなことはせず、早めに車から脱出することも必要です。
水のうで下水の逆流を防ぐ
浸水が始まると、通常の排水が困難となり、反対に下水が逆流することがあります。そのような場合、排水口から水が噴き出るのを防ぐためにビニール袋に水を入れた「水のう」を活用します。
水害のあとは感染症に注意
災害時には感染症の拡大リスクが高まります。予防のためには清掃と乾燥が重要です。ただ、清掃作業中は感染症だけでなく、土ぼこりでのどや肺に炎症を起こすこともあります。軽装で清掃作業に臨まないようにしましょう。
トイレが流せない場合
災害後はトイレが流せなくなることもあります。こうした場合でも、大きめのポリ袋と携帯トイレを備えておくとよいでしょう。トイレを我慢することで、体調が悪化することもあるので、きちんと準備しておくことは実はとても大切です。
り災証明書は生活再建の第一歩
ひとたび水害に遭うと、いったい何をしたら良いのか途方に暮れてしまいがちです。しかし、知識を備えておくと、立て直しも早くなります。特に「り災証明書」は生活再建の第一歩となるものです。後の再調査などに備えて、さまざまな角度から被害状況を写真撮影して、記録に残しておきましょう。
防災タイムラインを使って災害に備える
防災には自分の住むところのリスクを知り、自分や家族の特徴を知った上で、いざという時の行動を考えておくことが大切です。役立つのが「防災タイムライン」を作成しておくことです。作成したものを家族で確認しながら、いろいろと話し合っておくとよいでしょう。
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