ほてり、頭痛、だるさなど、仕事や日常生活に支障をきたす更年期障害。ヤフーのデータを見ると、「更年期障害症状」の検索が6月に増加している。
また、「更年期障害」と一緒に「男性」のキーワードが多数検索されており、男性更年期への関心の高さがうかがえた。更年期障害と気象との関係や、データに見られる男性特有の悩みや対策を専門家に聞いた。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/監修:堀江重郎)
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更年期障害症状の関心は6月に高まり、気象病のピーク時と連動している
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女性は男性の更年期障害に「夫婦の危機」を感じている?
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更年期障害を乗り越えるカギ、「テストステロン」とは
男女とも、6月に「更年期障害症状」への関心が高まる
ヤフーにおける過去3年間の検索推移を見ると、「更年期障害症状」の検索は、6月中旬にピークとなり、9月から10月にかけて再び上昇している。「せたがや内科・神経内科クリニック」院長の久手堅司氏によると、気圧や気温、湿度など気象変化によって起こる心身の不調である「気象病」のピーク時と連動しているという。
- 久手堅氏
気象病で頭痛やめまいなどの症状が一番つらくなるのは、梅雨の時期と秋の台風シーズンです。
気圧の変化や季節の変わり目などが要因で自律神経(※)が乱れやすくなり、身体にさまざまな不調が表れます。
更年期障害はホルモンの低下で自律神経に負担がかかることで起こりますが、気象病の症状と重なる部分が多いです。気象病も更年期障害も自律神経の乱れが原因のため、連動して同じ時期に不調になりやすいということですね。
※自分の意志とは関係なく自動的に動く神経。内臓の働きや体温などを調節する
- 久手堅氏
- 気象病と自律神経には密接な関係があります。気象病の症状が多岐にわたるのは、自律神経への影響が大きいからです。自律神経が乱れると、全身にさまざまな症状が起こります。更年期障害も自律神経への影響が大きく、相関性があります。気象病と更年期障害は、自律神経と関係しあっているのです。
「しにたい」「やる気が出ない」男性は更年期障害で希望を失う?
更年期障害の検索データからユーザーの関心事を分析したところ、「更年期障害」と一緒に「男性」が検索されていることがわかった。検索量も多く、「症状」に次いで多い。
また、「男性 更年期障害」を検索した人の、およそ前後2週間の検索推移を見たところ、「やる気が出ない」「寝汗の原因」などのキーワードが見られた。
男性の更年期障害にはどのような特徴があるのだろうか。男性に特化した医療「メンズヘルス外来」を日本で初めて立ち上げた堀江重郎氏に聞いた。
- 堀江氏
男性更年期障害はLOH( Late-Onset Hypogonadism)症候群と呼ばれますが、 Loss of health(不健康)であると同時にLoss of hope(失意、絶望)とも言えるほど、大変恐ろしい病気です。
原因はテストステロンという男性ホルモンの低下です。男性は社会環境に影響を受けることが多く、職場などのストレスが原因でテストステロンが減少します。テストステロンが低いと心身に不調が生じ、うつ病になりやすいです。死にたいと考えることにつながる場合もあると考えられます。
検索推移のなかには、「夫婦の危機」など一見更年期障害と関係が薄そうな言葉も見られる。
- 堀江氏
- 「夫婦の危機」や「熟年離婚」の検索については、女性がパートナーの様子がおかしい時に考えるのだと思います。「しにたい」というキーワードは、女性よりも男性の自殺率が高いこともふまえて、男性がふと漏らしたネガティブな言葉をそのまま検索している可能性があります。調べるうちに男性に更年期があると知り、「症状」や「何科」に行けばいいかなどを探しているのでしょう。
男性はイライラしていることに気づいていない?
「男性 更年期障害」と一緒に検索されたワードを見ると、男性と女性の検索傾向に違いがある。
男性の検索割合が多いのは「めまい」「不眠」「寝汗」などの身体的な症状で、女性は「イライラ」「怒りっぽい」といった精神的な症状を検索している。
- 堀江氏
- イライラしたり怒りっぽくなったりするのは男性更年期障害の典型的な症状ですが、男性はなかなかそのことに気がつきません。イライラの初期段階では何事もおっくうに感じる、笑わなくなるといったことがありますね。
男性の更年期、気がつくには
男性更年期障害で表れる症状には、身体的なものと精神的なものがあるという。当てはまる症状がないか、下記のチェックリストで確認できる。
堀江氏は、性欲の低下と勃起力が弱くなったことの両方に当てはまるか、3つ以上の項目に該当する場合は、男性更年期障害の疑いがあると指摘する。
更年期障害の症状に関わる「テストステロン」とは
男性ホルモンであるテストステロンは、心身にどのような影響を及ぼすのか。
- 堀江氏
- テストステロンは、健康を保つのに欠かせないことに加えて、意欲や社会性などメンタル面にも大きく関わっているホルモンです。テストステロン値が高い人は元気でエネルギッシュです。筋肉や骨格がしっかりしていることもありますが、仕事への意欲や積極性が高いなど、社会性と大きく関わっていることがわかっています。
検索データでは、「テストステロン」と一緒に「増やす」というキーワードが、「サプリ」「食べ物」「筋トレ」「女性」などとセットで検索されていた。テストステロンとの関係について堀江氏に聞いた。
- 堀江氏
テストステロンは、筋肉を鍛えたり、食事やサプリを摂取したりして増やすことが期待できます。食べ物ではビタミンDが豊富なシャケや亜鉛を含む貝などを摂取するといいでしょう。
男性の代表的なホルモンですが、女性でもテストステロンは作られます。女性の血液中のテストステロン濃度は、女性ホルモンのエストロゲンより10倍も多いのです。
自分がどのくらいのテストステロン値なのか、検査キットで手軽に測定することも可能です。
テストステロンによる男女の更年期の違い
- 堀江氏
女性は閉経後に例外なくエストロゲンが低下しますが、テストステロンは必ずしも低下しません。
福井県で地域健診に来られた約3000人の男女の唾液に含まれるテストステロン値を調べたところ、男性は年齢とともに低下したのに対し、女性は加齢とともに上がっていました。
更年期以降の女性は、テストステロンの作用で社交的になり、気持ちがより外に向いていく傾向がありますが、男性は加齢や環境の変化にストレスを感じやすく、テストステロンが下がりやすくなります。
男性更年期障害を乗り越えるには 周囲はどう声をかけるべき?
つらい症状を乗り越えるため、日常でできる対策を聞いた。これは男性だけでなく女性にも有効だという。
- 堀江氏
夢中になれる趣味、親しい友達との交流、しっかり運動すること、感謝されることでテストステロンが上がります。
メガネを替えるなどファッションに気を使うことも効果的です。 周りから注目されるポイントを作り、自分を出していくことが大切です。
家族やパートナーの「更年期じゃない?」という言葉は禁句です。
男性の多くは、更年期イコール「男性として終わり」「隠居」という発想があるため、カチンときてそこでコミュニケーションが終わってしまいます。「大丈夫?」と心配するよりも、「ありがとう」と伝えるのが一番です。
最後に、更年期障害に悩む男性に向けて、堀江氏は次のようなメッセージをおくる。
- 堀江氏
社会環境が変化して、例えば役職定年で役割が変わった時などにつらい思いをする方もいるでしょう。
ただその時に、またはその次の人生に対して、学び直したり体調を良くしたりしていくことが大事だと思います。
気になる症状がある方は、泌尿器科の受診をおすすめします。 思い切って治療を受けることで、その後の人生がガラリと変わるかもしれません。
「#性のギモン」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。人間関係やからだの悩みなど、さまざまな視点から「性」について、そして性教育について取り上げます。子どもから大人まで関わる性のこと、一緒に考えてみませんか。