解説8年間台湾のかじ取りを担ってきた蔡英文総統が退任する。前任者の馬英九前総統,陳水扁元総統は2期目で支持率を大きく下げ,政権運営の困難さが増す中で任期を終えた。それに対し蔡総統は1期目こそ支持率はパッとしなかったが,2期目は再選と初期のコロナ対策で勢いをつけ支持率を上げて,それをほぼ維持することに成功した。 陳水扁氏も馬英九氏も政権交代を招いたが,蔡英文氏は民進党政権を継続させることができた。その要因は,記事にあるように,蔡氏が一定の支持を得ていたことがある。 蔡総統は,中国の統一圧力が増す中で,台湾の国際的プレゼンスを高めることに尽力した。冷静さと予測可能性のある蔡氏に対し国際メディア(親中派メディアを除く)の評価は概して高い。 将来,日米の外交筋とかメディア界から蔡英文時代を懐かしむ声が出るかもしれない。頼清徳氏はそれも意識しながら慎重な政権運営を心がけていくであろう。
コメンテータープロフィール
専門は台湾政治,台湾総統選挙,中台関係。東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授を経て同大名誉教授。著書に『台湾総統選挙』(晃洋書房),共著に『蔡英文再選―2020年台湾総統選挙と第2期蔡政権の課題』(IDE-JETROアジア経済研究所)など。2020年に「アジア・太平洋賞」特別賞および「樫山純三賞」学術書賞を受賞。
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