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"動く電源"は停電時の電力不足を救うか #災害に備える

提供:トヨタ自動車

掲載期間:2024/02/01(木)〜2024/03/15(金)

予測不能な自然災害に対して、日々の備えは必要不可欠だ。では実際に被災し、停電したら、どうすればいいのか。ヤフーの検索データや危機管理の専門家の話から探ると、電気自動車やHEV(ハイブリッド車)などの給電車が鍵の1つであることが見えてきた。その可能性を探る。

当たり前の暮らしが奪われる――被災時の「電源」問題

数多くの地震や台風などに毎年のように襲われる「災害列島・日本」。被災時を想定した非常食や防災キットなどの備えは「常識」になりつつある状況だ。ただし、「もしも」の事態に備えるハードルがひときわ高いのが電力だろう。停電が長引けば日々の電力を賄うことはほぼ不可能となるからだ。さらにその需要は多岐に渡る。ヤフーの検索データをみると停電時、特に求められた情報が浮き彫りとなった。

2018年に北海道全域におよぶ大規模停電に陥った北海道胆振東部地震の発生時、「携帯やパソコンの充電」のほか、「明かりの確保」「冷蔵庫の食料」などのトピックに関心を寄せるユーザーが多く、生活上の不安に襲われたことが想像できる。(上図参照)。

特に災害が長期化した場合は危機的だ。停電時には通常、電力会社による復旧を待たねばならないことが多い。例えば、2019年9月の台風15号による千葉県内の停電は完全復旧までに19日を要した。

復旧のめどが立たないなかで、それまで当たり前だった電気を「奪われた」暮らしを強いられるのは精神・肉体ともに大きな負担となる。大切な家族をそのような状況から守るために、どのような対策ができるのだろうか?

「クルマは防災ツール」になりつつある

災害時の対処法について、危機管理教育研究所代表で、20年以上にわたり防災に関する研究に携わる国崎信江氏は、選択肢のひとつとして「クルマ」を挙げる。

「クルマは『防災ツール』と言ってもいいかもしれません。災害時に停電で起きる様々な問題を解決できるからです」

暗いときは車内灯をつけ、情報がほしいときは車載のナビでラジオやテレビを視聴し、寒暖差にはエアコンで対処できる。

国崎氏は、被災者のニーズが被災からの日数によって変わってくることを指摘する。

「被災後、初日は命の安全や、大切な人の安否確認、住む場所や食事、水の確保が最優先ですが、一段落した2、3日後には被害の詳細に加え、お風呂や温かい食事などの被災者への支援情報が求められるようになるんです。スマホの充電ニーズもより高まりますね」

実際、東日本大震災発災時のYahoo!検索のデータにも、被災者のニーズの変化が表れている。発災から3日ほどたつと、喫緊の災害情報ではなく、給水や炊き出しや入浴といった被災下での生活に必要な情報を求めるようになることが分かる。

災害時、停電に陥ってもクルマがあればこれらのニーズに対処できる。

国崎氏は「最近では、USBで給電できる車種も増えました。特に電気自動車やHEVなら、大容量の非常用電源としても期待できるでしょう」と指摘する。

最近では、ポータブル発電機も入手しやすくなったが、ドライヤーなど消費電力が大きい製品を扱うときは、出力不足になりがちだ。しかしHEVなどの給電車なら、こうした電気製品も使用可能だ。真夏や真冬の電力消費が激しい時期でも、一般家庭の約5日分の電力を賄うことができるという※。 IHヒーターで温かい料理を準備しながら、お湯を沸かして、温かい飲み物をとるようなことも容易だ。
※プリウス2.0Lの場合

「明かりがあって調理ができる、というのは被災地という極限の状況下において、"日常へと戻る最初の一歩"といってもいいかもしれません」(国崎氏)

もし、個人で給電車を所有している場合、一時的に車中泊避難を強いられることもあるかもしれない。その場合は「エコノミークラス症候群にならないよう、こまめな運動をする」 「熱中症や低体温症にならないよう、温度調節をする」などをいくつか注意点を押さえた上で、実施することが重要だ。

とはいえ、そもそもクルマを所有しない世帯も少なくない。所有していても、被災状況によって使用できないケースもあるだろう。

こうした課題を解決すべく、自動車メーカーが動き出している。

電力難民の「ファーストエイド」、トヨタの給電車ネットワーク

例えばトヨタ自動車では、地域の販売店が自治体と協定を結び、災害時にプリウスやアクアなどの試乗車を給電車として被災地に派遣、その場でクルマから電力を供給できる仕組みを構築している。1台1台が「動く電源」となって、被災者の元を訪れ電力供給を進めることができるわけだ。

2019年9月に関東地方を襲った台風15号の際には、実際に給電車が派遣された。当時現場にいた国崎氏は「避難所の照明の電源などに活用され、役立っていた。なにより、給電車が来ることで、被災者は『自分たちは見捨てられていない』というポジティブな気持ちになったようだ」と明かす。給電車は実際の電気だけでなく、心の電源にもなりうるのだ。

もちろん、せっかくの協定も結んで終わり、では意味がない。「生きた協定にしていくためには、現場の連携強化が欠かせない」と国崎氏も指摘する。

では、どのように連携強化を図っているのか。実際の事例を見ていこう。

1日でも早く電力を届けるために――被災地と給電車を「マッチング」

兵庫県の自治体では停電時に給電車を主要な電源として活用すべく、地元のトヨタ販売店との連携を強化している。具体的には、被災した地域の職員から、各自治体の災害対策本部へ情報を集約、それをもとに近郊のトヨタ販売店へ給電車の派遣が要請される。

こうした取り組みを導入するのに、どのような経緯や苦労があったのだろうか。神戸市役所と神戸トヨペットの担当者に話を聞いた。

神戸市役所 危機管理室 近藤係長

神戸市役所 危機管理室 近藤係長

災害時の避難所における電力確保は重要であると考えており、これまで蓄電池などの非常用電源を配置しています。また、自動車販売店と協定を結ぶことで、給電車を活用した避難所への電力供給体制を構築しています。実際の災害発生時には、可能な限り早い段階で避難所等の電力の確保状況を把握し、支援要請をしたいです。

神戸トヨペット管理本部 庶務G 隅山次長

神戸トヨペット管理本部 庶務G 隅山次長

自治体から情報をいただいて24時間以内に当該の避難所へ給電車を届けることを目指しています。

「クルマは電源になる」ことを知ってほしい――今後の課題と展望

兵庫県内の自治体とトヨタ販売店が一緒になって訓練を繰り返しているのには理由がある。阪神・淡路大震災では街が壊滅し、停電が7日間も続いたという苦い経験があるからだ。その間、真冬の寒さを耐え忍ばなければならなかった。

もし、訓練していなければ、実際にクルマを避難所に運んでも、給電方法や電気製品をつなぐまでの流れが分からず、給電車は巨大な「文鎮」と化してしまう。大災害のときに起きる"まさか"に備えるには、事前に少しでも課題をつぶしていくための訓練が欠かせない。

神戸市役所 危機管理室 近藤係長

神戸市役所 危機管理室 近藤係長

「クルマは電源になる」。これをどうやってもっと知ってもらえるのかが課題です。今後は地域の防災訓練や学校の防災学習に組み込めないか検討を予定しています。大人だけではなく子どもたちにもクルマから電気が取り出せることを周知していきたいです。

神戸トヨペット営業本部 営業企画室 武田課長

神戸トヨペット営業本部 営業企画室 武田課長

確かに、クルマからの給電は簡単な操作でできます。神戸市の避難所では、配電盤などの必要な設備を備えています。もし、設備がない場合でも、直接クルマから電気を取り出すことも可能です。クルマさえあれば避難所に電力が供給できる、というのはもっと理解を広めたいですね。

神戸市役所 危機管理室 近藤係長

神戸市役所 危機管理室 近藤係長

実際、災害時には「公助」だけでなく「自助・共助」を意識してもらわないといけない部分もあります。いざというときにご自身のクルマが給電車として、電源になるかもしれない、という意識を持っていただくだけでも違うと思います。

神戸トヨペット管理本部 庶務G 隅山次長

神戸トヨペット管理本部 庶務G 隅山次長

自治体と民間が連携して訓練していることで、実際に機能する協定になると思います。ただ、いざというときにご自身のクルマから給電できるようにするためにも、電気自動車であればなるべく充電しておく、PHEV(プラグインハイブリッド車)・HEVであればなるべくガソリンは一定量入れておくなど、災害の備えのひとつに加えていただきたいと思います。

徐々に拡大しつつある自治体×トヨタ販売店の取り組み。給電車には様々な活用法が考えられる。クルマに備わる「給電機能」に目を向けて、防災意識を高めるのもいいかもしれない。

(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/監修:国崎信江)