Technology2021.10.05

備えができる災害・台風、適切な情報提供のタイミングは? ヤフー検索で見えてきたニーズ

いつおこるか分からない自然災害。Yahoo!ニュース トピックス編集部では365日24時間体制で災害の発生に対応して情報が提供できる体制を整えています。

今は台風シーズンの真っただ中ですが、台風は日本への接近や上陸で被害が大きくなるまでに事前に備えができる災害です。台風が発生してから接近するまでの数日間、人々はどんな情報を求めていて、トピックスではどんな情報を提供しているのか。ヤフーの検索データから見えてきた傾向と合わせてご紹介します。

取材・文/三宅真太郎(Yahoo!ニュース トピックス編集部)

危険性を自分事化? 台風接近とともに変わる検索行動

今回、取り上げるのは2020年9月、気象庁が「特別警報級」として警戒を呼びかける中、日本に接近した台風10号です。検索の分析などを行う検索統括本部クオリティ部の鶴飼昭人さんに、Yahoo!ニュース トピックス編集部員で気象予報士の三宅真太郎がお話を伺いしました。

台風が日本に近づくと、気象庁が進路や勢力の見通し、警戒するべき雨風の強さなどの台風情報を発表し、メディアが報道します。台風10号は、9月6日から7日にかけて、大型で非常に強い勢力のまま、奄美地方から九州に接近しました。結果的に本州に上陸はしませんでしたが、人的被害や住家被害が発生しました。

分析は、9月3日から7日の期間における、九州地方と沖縄、山口、高知の3県のスマホ・携帯電話ユーザーが行った、ヤフー検索のデータを対象に行いました。これらの地域で検索された上位5万ワードのうち、災害やインフラと関連するキーワードと一致するものを自動で分類。ワードごとのPV(ページビュー)数で集計しています。

鶴飼さんによると、人々の検索行動は、台風の位置が日本に近づくにつれて変わっていくそうです。接近・上陸予想の3~4日前、台風がまだ日本から離れているうちは「台風10号」といった天気そのものの情報収集など漠然としたワードが検索されるそうですが、台風が近づくにつれて、台風対策のための具体的なワードが検索されるようになってくるといいます。

例えば、上陸2~3日前になると、窓ガラスの飛散防止策の「養生テープ」、スマートフォンなどの充電用の「モバイルバッテリー」など台風に備えようとするワードが目立つようになり、上陸直前には、「テープの貼り方」「植木鉢」「瓦」「網戸」と、より具体的なワードが検索されました。その中でも、養生テープは報道やSNSで話題になり、多くの人が買い求めて品薄になったとみられます。上陸直前には「養生テープの代わり」「窓ガラス 台風対策 段ボール」などと代替手段を検索する人も多くいたそうです。

台風が近づくと、雨や風の影響はどんどん強まります。窓ガラスの飛散防止や植木鉢を片付けるといった鉄板の備えは、余裕をもって取り組めるように準備を呼びかけておく必要がありそうです。

「(台風の接近に伴い)危険性を自分事化できるようになるから検索行動が起きている」と鶴飼さんは分析します。私たち情報を届ける側は、「備えや避難に何が必要なのか、過去の事例から学びながら先んじて届けるように心がける」ことが必要になりそうです。

手遅れの可能性も 最接近時に「ハザードマップ」検索

ちなみに、台風が最も近づいた時に多く検索されたのが「ハザードマップ」でした。ハザードマップでは、土砂災害や洪水の危険性が地図上に示され、自分がいる場所のリスクが確認できますが、台風が接近や上陸する直前の地域では雨風すでに強まっていることも少なくなく、災害がすでに発生していることもあります。直前にハザードマップを確認するのでは手遅れになることがあります。

避難に関するワードの検索数がピークとなったのは6日、すなわち最接近のタイミングでした。雨や風で危険な状況になってから避難先を確認したのでは、遅すぎます。鶴飼さんによると、台風10号以外の大雨災害時の検索ワードの分析においても、大雨特別警報の発表後に、避難に関するワードの検索数が多くなったそうです。ニュースを提供する側にとっては、情報を受け取った人に、迫る危機を自分事化してもらうタイミングをいかに早めるかの工夫が必要です。

最接近の5日前から注意喚起 Yahoo!ニュースのトピックス

Yahoo!ニュース トピックス編集部では、台風10号の上陸前後、どのような情報を届けていたのでしょうか。

台風10号に関連するトピックスで最初に掲出されたのは、本州に最接近する5日ほど前、9月1日の「10号発生へ 列島向かう恐れ」でした。その後、気象庁が「特別警報級の勢力で接近する見込み」と発表したことを受けて、「台風10号 特別警報級の勢力か」「台風10号 最悪を想定し備えを」といった台風自体の勢力の強さや、警戒の温度感の高さを伝えるトピックスを掲出しました。

その後、台風接近までまだ数日の猶予がある9月3~4日にかけて、「気象庁 4日までに備え完了を」「台風10号備え 今やるべきこと」「台風10号 停電時の熱中症対策」といった避難や対策を呼びかけるトピックスを掲出しました。

九州に最接近した6~7日には「経験のない暴風や大雨 警戒を」「台風が九州へ 最大級の警戒を」といった台風自体への警戒を呼びかけつつ、「長靴での避難は『絶対ダメ』」「台風 就寝前に身の安全確保を」など、避難時の具体的な行動や注意を促す見出しをつけて情報を届けました。

トピックスの見出しの移り変わりを見ても、台風の発生から接近までの数日間で、届ける情報の種類がだんだんと移り変わっていることが分かります。台風10号に関連したトピックスは、9月1~8日の間に計135本作成しました。トピックスの総作成数は1日平均100本なので、この8日間で作成したトピックスのうち約15%(135/800)が台風に関するものだったことになります。

Yahoo!ニュース トピックス編集部では365日24時間体制で災害の発生に対応し、地震や津波、噴火、大雨や台風などの災害に関する情報を発信しています。編集部では、適切な情報を適切なタイミングで出せていたかどうか、災害ごとに振り返りを行って次に生かしていきます。

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