Professional2021.02.05

Yahoo!ニュース トピックス編集部員が気象予報士資格を取得――天気予報とビッグデータの融合で目指すものとは?

日頃から災害関連ニュースの発信に、積極的に取り組んでいるYahoo!ニュース トピックス編集部。水害や震災、昨今のコロナ禍など、有事に合わせて人命を守るための情報をいち早く届けるべく、工夫を重ねています。

そんな中、編集部の一員である三宅真太郎さんが、2020年10月に気象予報士資格を取得。合格率5%と言われる難関を見事突破した三宅さんの専門知識は、今後Yahoo!ニュース内でどのように生かされるのでしょうか? ヤフーが持つビッグデータと気象予報士の見識の融合で見えてくる、将来の可能性についてお聞きしました。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

医者志望から記者職へ 災害報道で人命救助への貢献を目指す

――三宅さんが気象予報士に関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

昔から自然が大好きで、大学では社会人山岳会に所属して暇さえあれば登山に勤しんでいました。よく言われるように山の天気は非常に変わりやすく、時にそれが生命の危険にも直結します。そこで自分でもある程度、天候が読めるようになるといいなと、気象予報士の資格を取ろうと考えたのが始まりでした。

ところが、いざ教材を手にしてみると、これが非常に難解で……。当時は大学生活もそれなりに忙しかったですし、これはとても手に負えないなと断念したんです。一念発起して勉強を再開したのは社会人になってから。約4年かけて資格の取得に至りました。

――前職は新聞記者だそうですね。

2014年に産経新聞社に入社して、長野支局を経て社会部配属になりました。社会部では事件取材が中心の警察担当。しかし、もともと災害取材の現場で役に立ちたいという思いが強く、長野時代から自ら手を挙げて被災地取材にも積極的にあたっていました。

例えば、2014年に広島市で発生した土石流災害や2016年の熊本地震など、さまざまな災害の現場を目の当たりにしたことが、気象予報士資格に再挑戦しようというモチベーションにつながっています。特に広島の土石流災害の被災地では、たった3時間の雨で大勢の命や暮らしが失われ、何か自分にできることがしたいと強く感じたのを覚えています。

――記者職を志したのも、災害取材を見据えていたからなのでしょうか?

災害取材というよりも、「人の命に関わる仕事に就きたかった」といったほうが正確だと思います。というのも、私はもともと医師志望で、受験生の時は医学部を目指して勉強していたんです。しかし3浪を経て断念し、21歳で理工学部に進学することになりました。

医師の道は諦めても、人の命に関わる仕事に就きたいという思いが強く、それなら記者として災害報道に携わるのはどうだろうと考えたのが、新聞社を志したきっかけです。災害報道の現場では、きっと理系の知識が生かせるチャンスもあるだろうと思っていました。

仕事と勉強の両立に苦心した4年間

――新聞社で5年の経験を積んだあと、ヤフーに転職した理由は?

新聞記者として経験を積んだことで、あらためて災害報道の重要性は実感しました。私が産経新聞に入社した2014年以降はとりわけ各地で自然災害が頻発した時期。もっと科学やデータの活用で人の命を救う方法があるのではないかと感じ始めたのが転職を考えるきっかけでした。

ヤフーは、毎年3.11の時期には防災関連のコンテンツを作って啓発や募金活動に取り組むなど災害に関する取り組みにも積極的でした。また、災害発生時の検索データなどヤフーの持っているあらゆるビッグデータをひもとけば、被災者が本当に求めている情報が明らかになるはずだと考えました。

そこで、より多くの人々を災害から救うための仕組みづくりを学びたいと考えたんです。

――Yahoo!ニュース トピックス編集部での現在の業務内容を教えてください。

主な業務は、記事を選んで見出しをつけるYahoo!ニュース トピックス編集です。同時に、災害分野担当の1人として災害関連のニュースの施策推進、災害対応の指針づくり、訓練の運営などを担っています。

さらに、2020年10月に気象予報士の資格を取得してからは、ニュース業務に携わるメンバーを対象に気象災害に関する勉強会を開催するなど、組織全体のレベルアップに取り組んだり、災害時の気象情報の解説なども行ったりしています。

――気象予報士試験は合格率5%の狭き門。4年間におよぶ仕事と勉強の両立は苦労も多かったのでは?

そうですね。当初は通信講座を受講していたのですが、課題の提出などになかなか対応できずやめてしまい……。その後、自分で参考書を集め、仕事の合間に過去問をひとつずつ独学で解いていく日々でした。理系の下地があるとはいえ、やはり難しかったですね。

また、警察担当の記者だった頃は、そもそも1日のうち数時間しか家にいられない生活だったので、勉強時間を捻出するのも大変でした。移動するタクシーの中はもちろん、夜間の張り込み中も街灯の下で参考書を開いたりして……。

ヤフーに転職してからは時間的にはだいぶ楽になりましたね。ただ、ちょうど子供が生まれたので、片手で寝かしつけながら、もう片手で参考書を開くような生活を送っていました(笑)

水害は事前準備ができる災害

――そうした苦労の末、見事に合格。資格と知識を得たことで、天気予報や空の見え方に変化はありますか?

雲の種類や名前がわかるので、空を見上げた際、以前よりも気象学的な見方をするようになりました。また、天気図が読めるので、自分なりに明日の天気を予想したりすることもあります。

ただ気象予報は気象庁による許可制なので、気象予報士の資格を取ったからといって私がYahoo!ニュースのどこかで天気予報を公開することはできません。

その分、今は社内勉強会などを通して、気象や災害に関する編集部全体のリテラシー向上に貢献できればと思っています。

――気象や災害をテーマとした勉強会は、社内の反響も大きいのでは?

2020年12月に水害をテーマにオンライン勉強会を開催した際には、60人ほどが参加してくれました。予想以上に希望者が多くて驚きましたが、トピックスなどを通してニュースをより的確に届けるために、専門的な知識を持っておくことの意義を感じてくれたようです。

大雨や台風などの水害は、事前にある程度の準備ができる災害です。だからこそ、あらかじめ編集部内の知識を底上げしておくことで、結果的にYahoo!ニュース トピックスを通して情報を得るユーザーの皆さんのお役にも立てると思っています。

――Yahoo!ニュースに限らず、現状の災害報道に感じている課題は?

今は災害が発生すると、SNS上などでさまざまなニュースが拡散される時代です。その中にはソースの曖昧な情報や単なるうわさ話も多くあります。しかし、正しい情報を得ることが、身の安全につながることもあるでしょう。だからこそメディア側の課題としては、発信する情報の信ぴょう性、信頼性をいかに担保するかに尽きると思います。

例えば地震が起きた時、テレビでNHKをチェックするのがこれまでの定番でした。これからはYahoo!ニュース トピックスも定番となれるように、信頼のあるメディアにしていく一助になればうれしいですね。そのために現在、ニュースの配信元である民間の予報会社と連携し、編集的な観点でより効果的な情報発信の手法を議論したりもしています。

実は、ヤフー社内には現在、私を含めて数名の気象予報士が在籍しているんです。それぞれ所属するチームは異なりますが、この知見を有効に活用すれば、まだまだできることはたくさんあるでしょう。

空の写真を撮るのは三宅さんの日課だそう

――ビッグデータの活用も含め、災害報道には今後どのような可能性があるでしょうか。最後に将来展望を聞かせてください。

私が最も実現したいのは、位置情報などを元に、パーソナライズされた防災情報を個人個人に届けることです。

災害発生時の対応は本来、同じ地域に住んでいても個々に異なります。現在は逃げる必要のない人まで一様に避難指示や勧告が出ているケースもあり、そのうち危険が迫っている時でも、避難を怠ってしまうことだってあるかもしれません。

これはまだ私の想像レベルの話ですが、近い将来にはユーザーそれぞれの年齢や性別、行動履歴、住環境をはじめあらゆるビッグデータと災害情報をひも付け、よりパーソナライズされた防災情報をスマホで受け取ることが可能になるかもしれません。

住環境や過去の災害履歴を踏まえて、その人が本当に避難する必要があるのかをより正確に判断できるようになれば、混乱も抑えられるでしょう。

本当に逃げる必要がある人に的確な情報を直接届けられるのは、IT企業ならではだと思います。1人でも多くの方の命を守るために、これからもできるかぎりのことに取り組んでいきたいですね。

お問い合わせ先

このブログに関するお問い合わせについてはこちらへお願いいたします。