Media Watch2018.07.05

テレビとの付き合い方はどう変わる?――フジテレビが目指す「ニュースの新時代」

フジテレビ系列28局で構成されるフジニュースネットワーク(FNN)が、今春から新しいウェブメディア「FNN.jpプライムオンライン」をスタート。立ち上げに関わった立役者の一人、清水俊宏さんは「ホウドウキョク」の運営責任者も務め、フジテレビで唯一、そして初めての「チーフビジョナリスト」のポストに就任した人物です。ニュースからバラエティまで、あらゆるコンテンツを題材に「テレビとの新しい付き合い方」を提案するというFNN.jpプライムオンライン。その戦略と課題を清水さんに聞きました。

取材・文/友清 哲
編集/ノオト

「ホウドウキョク」で培った“攻めるコンテンツ”のノウハウを活用

――フジテレビではこれまで、「ホウドウキョク」というニュースメディアを運営してきましたが、「FNN.jpプライムオンライン」との違いは何でしょう?

「ホウドウキョク」がフジテレビ1局で展開しているメディアであるのに対し、「FNN.jpプライムオンライン」は北海道から沖縄まで全国のフジテレビ系列28局による取り組みであることが最大の違いです。

全28局のスケールメリットとわれわれが「ホウドウキョク」を通して培ってきた“攻め”のコンテンツづくりのノウハウを生かした新しいメディアをつくろうという着想から生まれたのが「FNN.jpプライムオンライン」です。

今後は「FNN.jpプライムオンライン」を大きく育てていく方針ではあるのですが、ありがたいことに「ホウドウキョク」のファンも大勢いるので、当面は並行してコンテンツの配信を続けていくことになります。

――「ホウドウキョク」で実践してきた“攻め”のコンテンツづくりとは、どのようなものしょうか。

<チーフビジョナリスト 清水俊宏さんのプロフィール>
1979年生まれ。2002年に報道局配属後、政治部で小泉首相番や国会担当、新報道2001ディレクター、選挙特番の総合演出など。『ホウドウキョク』などニュースメディア戦略の構築担当を経て、2018年より現職。

FNNではかなり前から、テレビコンテンツの二次利用を中心にした「FNN-News.com」というメディアを運営してきました。例えば、ニュース番組でアナウンサーの言葉を部分的に切り出してテキスト化したり、ニュースの一部をそのまま掲載したりするのが主なコンテンツでした。しかし、ネットユーザーにはネットユーザーならではのニーズがあるはずで、コンテンツの作り方として消極的であったのは否めません。そこで、ネットユーザーのニーズに応えようとフジテレビが始めたのが「ホウドウキョク」でした。

「ホウドウキョク」では、動画内の言葉をそのまま使うのではなく、単体のテキスト記事としても読めるようにアレンジしたり、最近ではYahoo!ニュースと連携して動画コンテンツを配信したり、ネットメディアならではの取り組みに注力してきました。

「FNN.jpプライムオンライン」でもそうしたノウハウを踏襲しながら、ニュースの枠を越えてドラマやバラエティなど幅広いジャンルに題材を求め、“人気番組を読む”という新しいユーザー体験を提供していくつもりです。

――局内における「FNN.jpプライムオンライン」の運営体制は?

現状では、「ホウドウキョク」のスタッフと新たに専属で加わったメンバーで「FNN.jpプライムオンライン」の運営をしています。報道担当の専属スタッフがおよそ20人。このほか、ジャンルごとに解説委員や専門の記者を起用するなど、コンテンツによってさまざまな人材が動いています。

この体制で、テレビ番組を元に記事を作成するほか、取材に基づいて制作したオリジナル記事を10~20本、速報重視の動画コンテンツを30~40本を毎日24時間配信しています。

「FNN.jpプライムオンライン」のマネタイズ戦略

――「FNN.jpプライムオンライン」のページには、広告の類いはほとんど見当たりません。マネタイズ戦略はどのように考えられているのでしょうか。

会社としてマネタイズを重視していないわけではないのですが、一方で僕らはまず報道機関なので、大もうけする必要はないとも考えています。それよりも1人でも多くのユーザーに見てもらうことが重要です。そのためアクセス数を追うのではなく、少なくとも「1週間に1度はFNNを思い出してアクセスしてくれるユーザー」の増加を目指しています。

その結果、コンテンツビュー(オリジナルサイトおよび配信先メディアでの閲覧総計)やマンスリーアクティブユーザーといった数字がついてくれば、タイアップ記事やイベントとのコラボレーションなどが行えます。実際にすでに問い合わせも多数あり、自ずとメディアからの収益も生まれていくでしょう。

ターゲット層も、「ホウドウキョク」では“田園都市線沿線在住の30代既婚男性”といったペルソナを設定していました。「FNN.jpプライムオンライン」では、異なるペルソナ”東京の大学を卒業して、現在は実家のある愛媛県に在住の40代既婚男性”を設けています。このペルソナにニュースを伝えるにはどうしたらいいのか?などを考えながら、さらに幅広い読者を取り込む工夫をしていきます。

――まだ開設して間もない時期ではありますが、現時点ではどのような反響が得られていますか?

単純なユーザー数でいえば、「FNN-News.com」と比べて、5倍以上のペースで増えています。また、「ホウドウキョク」では他のウェブメディアや動画配信サービスと積極的にコラボしてきましたが、同様の引き合いをすでに多数いただいています。実際に形になるのは少し先の話ですが、メディアとして期待していただいていることをありがたく思っています。

――その点ではやはり、FNNというブランドが大きなアドバンテージになっていると言えそうですね。

そうですね。「ホウドウキョク」はあえて局の名前を前面に出さない方針でしたから、「え、ホウドウキョクってフジテレビのメディアだったんですか?」と言われることも多かったんです。「FNN.jpプライムオンライン」では逆に、FNNのブランドを生かしていこうと考えています。

僕がフジテレビに入社して最初に言われたのは、「テレビはどう頑張っても24時間しか売る物がない」ということでした。だから、他に売る物を考えていかなければならないのだ、と。そこで映画やイベントなど、僕らの仕事は多岐にわたっていくわけですが、ネットへの取り組みもその延長線上にあるものです。その意味で、80年代からフジテレビが発信してきた“楽しくなければテレビじゃない”というモットーは今も生きていて、こうした新たなことにチャレンジしやすい土壌は、「FNN.jpプライムオンライン」においても大きな強みになると思います。

全国各地の系列28局にもチャンスが生まれる

――こうした取り組みは、全国の系列28列局にどのような影響を及ぼすでしょうか。

少子高齢化などに伴う視聴率の変化に悩む地域も多い中、こうしてFNNが連携してスケールメリットを生かすことは、地方の系列局にとってこそ大きなチャンスにつながると僕は考えています。

各地の新聞社やラジオ局がインターネットに活路を見出しているように、ローカル局も「FNN.jpプライムオンライン」の取り組みによって、視聴者をもう一度テレビに呼び戻したり、あるいはテレビではないところで新たなつながりをつくったり、多くの可能性があるはずです。

例えば、ある地域で知事選が行われても、なかなか他の地域では関心を集められません。しかし何らか国政と絡む話題があれば、東京でも盛り上がり、その反響が地方に逆輸入されるようなことも起こり得るでしょう。あるいはその地域単体ではバリューが生まれにくいニュースでも、他の地域の話題と組み合わせで、大きな反響をもたらすこともあります。

僕が以前に地上波の夕方ニュース番組の演出を手掛けていた頃、各地域のICカード事情をそれぞれ現地のアナウンサーに方言でレポートしてもらったところ、非常に高い視聴率をマークしたことがありました。全国の28局が連携することで、こうした反響を呼ぶコンテンツが作れるのではないかと考えています。

――局の垣根を越えることで、コンテンツにさまざまな可能性が生まれる、と。

その通りです。実は僕たちの構想には「FNN.jp」だけでなく、イギリス版で「FNN.uk」やフランス版の「FNN.fr」といった世界戦略まで早くもイメージされているんです。

もともと関東地方のテレビでしか見られなかったフジテレビの番組が、系列28局のネットワークが作られたことによって全国各地で見られるようになりました。そして今度はインターネットを使って、世界市場を視野に入れることができるようになったわけです。

ユーザーとテレビの新しい付き合い方を研究するメディアへ

――その一方で、こうしたネットメディアの活用によって、視聴率を取り戻す狙いは?

それはやはり考えています。昨今は若者のテレビ離れや、テレビ番組の質の低下が盛んに指摘されますが、こうした批判は今に始まったことではなく、僕が子どもの頃から言われていたことです。もちろんデバイスの多様化をはじめとする外部環境の急激な変化もあり、テレビはメディアとして安泰なわけではありません。

しかしまだまだTwitterでバズったネタよりも、テレビで報道された内容のほうが、老若男女に広く波及するのは事実です。「最近のテレビはつまらない」と思っている人にこそ、「FNN.jpプライムオンライン」でテレビの面白さをもう一度伝えられれば理想的ですね。

――そのために、現在感じている課題はありますか。

コンテンツとして、「これぞFNN.jpプライムオンライン」と思わせられるようなものが、まだつくれていないことでしょう。「ホウドウキョク」であれば、「『LivePicks』の動画、見たよ」とか、「『北斗の拳でわかるニュース』、面白いね」などと言っていただく機会が多々ありましたが、これからそういった看板になるコンテンツをつくっていかなければなりません。またVRやARを使った新しい表現についても、積極的に着手してきたいと思っています。

――最後に、「FNN.jpプライムオンライン」を今後どのように育てていきたいか、抱負をお聞かせください。

自戒を込めて思うことですが、ネットメディアはどうしても、伸び盛りの時期ほどPV至上主義に陥りがちな一面があると思います。PVが稼げたなら素直にそれを喜べばいいのですが、本来の目的を見失ってはいけません。自分たちが本当は何を伝えたいのかを、現場は常に意識しておく必要があります。

単にアクセス数がほしいだけなら、旬の話題だけを取り上げ続ければいいでしょう。しかし、「FNN.jpプライムオンライン」は、ユーザーとテレビの新しい付き合い方を研究するメディアです。現状、フジテレビは視聴率で苦戦中です。しかし昔から、批判されながらも新しいことに挑み続けてきた会社でもある。「FNN.jpプライムオンライン」は、そうした逆境を跳ね返す原動力になり得ると思っています。

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