Inside2017.10.11

編集との「壁」は超えられたのか?――Yahoo!ニュースのエンジニアが見た編集

(画像:アフロ)

名前も顔も知らない、一緒に仕事をしたこともない――Yahoo!ニュースにはかつて、エンジニアと編集の間に大きな「壁」がありました。その壁を意識的に取除く努力をはじめて数年。編集は編集の仕事だけをやるという「聖域化」をやめた今、エンジニアはどのように編集を見ているのでしょうか。アンケート調査から見えたものとは。

Yahoo!ニュースの編集にはかつて「壁」があった

Yahoo!ニュースには、エンジニアのほか、企画、編集、デザイナー、営業とさまざまな職種がありますが、全体の構成でみると、エンジニアが39%と最多。一方で、編集は22%。意外に思われるかもしれませんが、実は「編集」という職種はヤフーの中でも希少な存在。ヤフー全体で見ても「編集」は数%で、社員のほとんどがエンジニアやデザイナーなどのクリエイターをはじめとした他職種の社員です。

「とにかく先の見えない状況でした」。
エンジニアに限らず他の職種と編集が関わるきっかけを作った、前編集部長・山本芳郎は当時をこう振り返ります。Yahoo!ニュースの組織は「アプリ」や「コメント」「SNS」など担当領域ごとにプロジェクトが分かれています。現在では編集がプロジェクトをかけもちし、さまざまな場面で編集の知見を反映させていますが、当時は編集がいないのが当たり前。編集出身者がアナリストや企画職となり、ほかの業務で活躍する例も増えましたが、それも考えられないことでした。

「社外的にはソーシャルメディアの急成長やAIによる編成の勃興で、人力での編成を改めて考え直す時期に来ていました。社内的には、編集はYahoo!ニュース トピックスの更新だけをやるという『聖域化』で、閉塞感が漂っていたということもあります」。

山本が実績のないYahoo!ニュースの編集が他職種と協業する上で強みになると考えたのは「コンテンツの価値判断」という点。この強みこそサービス全体を設計する中心的な存在になれる可能性があると考え、編集職と企画職を兼務にするところからはじめました。

「最初は頼み込んで編集を参加させてもらいました。メンバーの志向やプロジェクト側の事情があるので突破口を開くまでに時間はかかりましたが、実績ができてからは早かった。編集は他職種との業務を経験してサービス全体への視座ができ、プロジェクト自体も編集が入ることでクオリティがアップするという実感もありました。何よりも新卒の若い人間が編集職に対してポジティブになったというのは重要なことだと感じています」。

エンジニアからみた「編集」とは?


(画像:アフロ)

今回、Yahoo!ニュースのエンジニアにアンケート調査し、編集をどう見ているのか聞きました。戸惑った、困った、驚いたこととはあったかとの問いに、意外?にもほとんどが「ない」とのこと。一方で、「あった」という事例の回答を抜粋してご紹介します。

◆マインドやこうするべきという考えは説明をしてもらうと分かるが、具体的にどうサービスの仕様にするかという結論が分からないことがあった。

◆編集が行う記事の品質判断の基準が非常に複雑で言語化できない。システム実装にどう落とし込むかで困った。

◆システム的に判断してほしいと言われた内容の判断基準が「時と場合による」「ニュアンスによる」だったりで、機械はニュアンスが読み取れないから難しいということに納得してもらうのが大変だった。

◆紙媒体から転職してきたばかりの人にwebページの構成を理解してもらうのが難しい。

「おもしろい」と感じた点については、編集との視点やマインドの違いをあげるエンジニアが多くいました。

◆編集がスポーツ中継で盛り上がっているのを見て、公平な価値判断に努めている編集もそこはやはり人なんだなと感じて面白かった。

◆エンジニアは良くも悪くも記事をただのデータとして見ていることが多いが、編集は中身のコンテキストで記事を評価しており、職種によって着目観点が全く違って面白いなと常々思っています。

◆「数値が極端に下がっても出すべき記事を出せるなら気にしない」という発言がおもしろかった。エンジニアの自分にはユーザーが求めるものを提供するという意識が強く頭にあり、編集の観点を理解していたつもりでも実際に聞いたときは新鮮だった。

「伝わらない」「わからない」モヤモヤを取り除くには

失敗談や編集との「あるある」についても聞いてみました。


(画像:アフロ)

◆忙しそうで声を掛けにくい。編集がシフト勤務のため、ミーティングの予定や飲み会の日程が組めない。

◆ツールの改善要望がどれくらい必要なのか温度感が分からないことがある。

◆エラーの原因などを聞かれたときに技術の細かいところまで説明しすぎてしまう(ので伝わらない)。

上記の困った、戸惑ったことにも通じますが、考え方の違いやこうした失敗談、行き違いにエンジニアの皆さんはどう対応しているのでしょうか?

◆「プッシュ打ちます」などの編集の声掛けを聞き逃さない。

◆説明する際は、文字だけでなく画像を付ける。

◆編集はメディアとしての理想を、エンジニアはその具体策を追求する仕事だと思うので、意識的にその間を埋めてシステムに落とし込むお手伝いをするとスムーズに進む。編集という職種はヤフー独特ですが、こういう具体化の作業はシステム開発ではあるあるでもあります。

◆開発の難易度がイメージできないと思うので、数時間程度で開発できそうな改善案を「難しいですか」と恐る恐る提案されたり、数日はかかりそうな案件を「簡単ですか」と提案される事がたまにある。後者は全然問題ないのですが、前者は提案が引っ込みがちになってしまい、劇的な改善ができる機会を失いかねないので、恐れずどんどん言って欲しい。

◆トラブル時に席が近いのに、直接でなくうかいして回ってくることがある。今やっている編集との取り組みなど普段も関わりを持つことでより敷居が下がればいいと思う。

◆まずはお互いの業務を理解する、興味を持ってもらうようにすることが重要。リリースするものはなるべくシェアする。また「伝わった」と感じるのは、1対1で話したときが多かったです。

Yahoo!ニュースのエンジニアが考える「人×テクノロジー」

アンケートの最後に、Yahoo!ニュースのエンジニアにとっての「人×テクノロジー」とはなにか?を聞くと、さまざまな意見が集まりました。

◆真っ当な進化で人類が貪欲に取り組むべき事。人類を次のステージへ導くために必須のもの。

◆自動化できる領域はどんどん自動化して、残った領域(人がやるべき上澄みされた領域)に集中できる環境を作ること。

◆ベースは人。あくまで人間の知識が基で、テクノロジーによる成果、効果の加速だと思うので、Yahoo!ニュースで言えば基となる編集の知見がとても重要。テクノロジーを使って、そこをどう最大化、そこからどう変異を起こしていくかがエンジニアの仕事。

◆Yahoo!ニュースそのもの。

◆人×テクノロジーというところに、配慮や情緒などが見られることで人の温かみを感じることができ、信頼できる。日本人らしさが出ていると感じる。

編集との関わりは、エンジニア側の発見にもつながりました。この成果の一つが、見出しの「A/Bテストツール」。1つのYahoo!ニュース トピックスに対して複数の見出しを用意し、一部のユーザーに掲出してアクセス数をリアルタイムで比較することができます。これは編集が行った「13.5文字見出しセミナー」に参加したエンジニアのひらめきで開発したものです。

news HACK「Yahoo!ニュースで起こった「ダルビッシュ論争」~編集とデータ活用の現場から」より

また、特定の地域だけに送る「地域別プッシュ」の誕生もそう。編集とエンジニアが「通知を全国向けと地域向けに分け、より細やかな情報提供をしたい」という課題を一緒に考え、解決した例です。

「壁」をなくす過程で、編集側も「もっとこうできないか?」という疑問が簡単に解決されたり、実はすごく難しいと気付く体験をし、自分たちの知見をもっとサービスに還元しないといけないと意識が変化したといいます。編集とエンジニアの違いこそが、新しいものを生み出す可能性を秘めています。

Yahoo!ニュース news HACK編集部

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