Inside2023.07.06

子どもからお年寄り すべての方の身を守るため――社会とともにアップデートし続けるヤフーの防災サービス

今年も大雨による被害が各地で発生し、Yahoo!ニュースでは災害関連のニュースを届けることにも注力しています。もし、あなたの暮らしている場所で災害が起きたら――。出水期が続く中、私たち一人一人が「自分ごと」として備えていくことが必要です。内閣府の「防災に関する世論調査」(2022年)によると、自然災害への対処などを家族や身近な人と話し合ったことについて、「ない」と回答した人が 36.9%でした。災害から命を守るため、備えをうながすYahoo!天気・災害の2つの機能をご紹介します。(取材・文:Yahoo!ニュース)

災害リスクを未然に知らせる 防災タイムライン

ヤフーは「Yahoo!防災速報」で、ユーザーが登録した自宅周辺の水害や地震・津波の想定危険度や、世帯構成の情報に応じた災害時の行動を確認できる「防災タイムライン」というサービスを提供しています。さらにYahoo!防災速報のアプリ上では、大雨危険度などの災害危険度が上昇したタイミングで、ユーザーにとって必要な行動をサポートするプッシュ通知を送信します。サービス開発の経緯をYahoo!天気・災害 プロジェクトマネージャーの竹内美尋に聞きました。

情報を受け取ったユーザーの「どうすればいいか」を手助け

――「防災タイムライン」開発の経緯を教えてください

竹内:「Yahoo!防災速報」は防災情報や災害情報をお知らせするアプリです。情報を受け取った後、ユーザーがどう行動すればよいか。この点も合わせてサポートできたらという思いで企画が立ち上がりました。河川に近い場所や地盤の弱い場所、あるいは海に近いなど、ユーザーが暮らしている環境はさまざまでみんな同じではありません。どんな行動を取るかは最終的には個人の判断に委ねられるのですが、それぞれの状況に合った情報を提供することで、正しい判断や行動につなげてほしいと考えました。

――当初「水害」に対象を絞っていたのはなぜでしょうか

竹内:大雨や台風の場合、ある程度危険が予測される状況で「身を守る準備をしてください」という呼びかけができるためです。2022年には地震と津波にも対応しました。

国土交通省が普及を目指す、住民一人一人の防災行動計画「マイ・タイムライン」(外部サイト)のデジタル版として民間企業で初めてリリースできたこともよかったです。

開発に際しては、広島県や京都府の災害対策担当の方々との意見交換も行いました。広島県は独自のマイ・タイムラインをウェブ版で提供していたり、京都府はバリアフリーの充実やペット同行OKといった避難所の属性情報を整理したりするなど、先進的な取り組みをされています。そうした自治体からの意見をいただけたことは大変ありがたかったです。実際に防災タイムラインのチェック項目の表記について、「近くに谷がある」としていたところを「広島県民には谷や崖という言い方のほうが伝わりやすい」とご意見をいただいて「近くに谷や崖がある」と修正しました。

災害・防災系のサービスは子どもからお年寄りまですべての方の身を守るために提供するものであるため、特定の人物像を想定する「ペルソナ」を立てた機能設計が非常に難しいです。なるべく汎用的な機能を開発して提供できるように共通項を意識しつつ、個別の状況に対応していけるようなサービスを目指す必要があります。

どうすれば行動につながりやすいのか、ほかのプッシュ通知も飛んできているなか、開いてもらうためにはどういった文言がいいのか。そうした微調整を何度も重ねたりもしています。最終的にはその時、その場所にいる、ユーザー向けにパーソナライズされた支援をできることが理想です。防災の必要性を少しでも感じた時にはぜひ使っていただきたいと思います。

「今日は何の災害があった日?」がわかる「災害カレンダー」

災害の恐ろしいところは、人が忘れた頃に牙を向く点にあります。被害の歴史を風化させることなく、いまを生きる私たちへ警鐘を鳴らし続けるサービスがあります。

ヤフーが2017年から提供している「災害カレンダー」は、過去に起きた災害をカレンダー形式で記録したものです。企画に携わったYahoo!天気・災害サービスマネージャーの田中真司、瀬川浩司、橋本奈緒子はこう語ります。

田中:災害カレンダーは過去の大きな災害をまとめて、今日は何の災害があった日なのかがわかるサービスです。日本だけでなく海外の歴史的な災害について、当時の記録写真や新聞記事と合わせて掲載しています。河北新報社さんから創刊120周年の節目に災害を伝えるコンテンツをつくりたいというお話があり、ヤフーから災害カレンダーのアイデアを出し、河北新報社さんには当時の新聞記事のデータをご提供いただく形で実現しました。

瀬川:カレンダー形式にしたのは、今日この日は過去にこんな災害があったんだと、日常生活の中で防災意識を高める仕掛けになると思ったからです。

「1年を通じて、災害のない日はない」。そう実感することで日々の平穏の尊さを実感し、それを脅かす災害に対する備えの気持ちが強くなります。災害の記憶の風化を、毎日見るカレンダーでつなぎとめるというアプローチは「ウェブメディアの特性を活かした、優れた防災・減災の情報発信のあり方」として2017年のグッドデザイン賞にも選ばれました。

瀬川:(見た目のデザインでなく)「防災意識を啓発するユーザー体験の仕組み」を評価いただけたことは すごく嬉しかったです。

田中:災害は被害が大きくて、「記憶」にも「記録」にも残っているものという基準で選定しました。特にそこから教訓が導き出されたもの、例えば阪神・淡路大震災をきっかけに1995年が「ボランティア元年」と呼ばれるようになったことなど、人々の考えや行動に大きな変化をもたらしたものは網羅しようという方針で動いていました。

橋本:防災専門図書館や国会図書館などさまざまな文献をあたりながら、概況の部分は株式会社レスキューナウさんにご協力いただきました。一番古いものだと西暦79年のヴェスヴィオ火山噴火です。ちなみに、Yahoo!天気・災害に届くユーザーの反響は普段、予報が外れたことによるお叱りがほとんどだったりするのですが、災害カレンダーのリリース後には「まとめていただいてありがとうございます」といったお声もいただけて嬉しかったです。

田中:今後のアップデートにつきましては年単位になるかとは思いますが、更新し続けます。

田中:最後に「災害カレンダーについて」というページのメッセージをご覧いただきたいです。これは河北新報社さんに書いていただいたものなのですが、新聞社とネット企業、立場は違えど課題意識は共通です。災害に対して何かできないか、過去の教訓を未来につなぐことで救える命があるんじゃないかという思いでやってきました。

日本に「大震災」と名がつく地震は三つしかないのですが、それぞれ起きたことは全く異なります。多くの方が亡くなられた原因として関東大震災は火災ですし、阪神・淡路大震災は建物崩壊による圧死、東日本大震災では津波でした。大震災一つ取っても、得られる教訓も変わってくるので常に社会とともにアップデートし続けていきたいと思います。

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