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防犯カメラ映像、ネット「だだ漏れ」のリスク

2016/01/22(金) 19:14 配信

オリジナル

街頭や飲食店、オフィスなどさまざまな場所に設置されている防犯カメラの映像が、海外のサイトで「だだ漏れ」になっている。日本国内の約6000カ所が誰でも閲覧可能な状況になっており、サイトの存在が話題になった1月中旬から、実際に閲覧したことを報告するネット上の書き込みも数多くみられる。背景には、設置業者や設置者の知識不足などがあり、国内に数百万台以上が設置されているとされる防犯カメラのセキュリティの穴が浮き彫りになっている。(Yahoo!ニュース編集部)

「認識はまったくなかった」

「何かよくわからなかったですね。(映像がネットに出ている認識は)まったくなかったです」。

首都圏にある理容室チェーンの店長は困惑した表情で話す。カメラがあることは把握していたが、設定を変更したことはないという。今月21日にオーナーから防犯カメラの電源を切るように連絡があった。電源を切るまでは店内の様子がサイトで閲覧できるようになっていたが、事態に気付いた本社が各店舗に指示したという。

サイトには、診療所のような場所で男性が診察を受けている様子や、ネイルサロンのような場所で複数の女性が座っている様子、一般の集合住宅のエントランスホールなどが映し出されていた。スーパーやコンビニ、飲食店などの映像も多数あり、従業員や客の顔がはっきりわかるようなものもある。

※画像は加工しています。

サイト自体は2014年にもメディアで報じられ存在が知られていたが、今年1月中旬になって、まとめサイトが取り上げるなどしてネット上で再び大きな注目を集めた。

なぜ閲覧できてしまうのか

なぜ設置者が意図しないのに、防犯カメラの映像が誰でも閲覧可能な状態になっているのか。年間数千台の防犯カメラを販売する秋葉原の販売店によると、防犯カメラにはインターネットへの配信機能がついているものがあるが、パスワードが初期設定のままだったり、適切に設定されていなかったりすると、外部から閲覧することは難しくないという。「購入者には、パスワードを変更することはもちろん、できれば閲覧専用の回線を引くように勧めている」と話す。

防犯カメラの国内シェア1位のパナソニックは、取り付け業者向けに資料を配布したり、不正アクセスへの注意文をサイトに掲載したりしている。「ネットへの公開の際にはパスワード設定と定期的な変更を呼びかけている」とする。

防犯カメラの取り付けを行う日本防犯設備の担当者は「設置業者によってはメーカーの初期設定のパスワードを伝えるだけのケースや、そもそも知識がなく設置者が設定の必要性自体を知らないケースもあるのではないか」と推測する。同社では設置者が初期設定とは別のパスワードを設定したことを確認してから工事を終えることにしているという。

日本の法整備は遅れている

日弁連情報問題対策委員会の清水勉弁護士は「いったん拡散すると削除が難しいネット社会では、本来望まないのに撮影すること自体が権利侵害の危険性をはらんでいると考えるべき。管理者は、利用目的と保存期間を限定するなどして、設置の理由を説明できる使い方をする必要がある」と強調する。

防犯カメラとプライバシーの問題に詳しい早稲田大学社会科学総合学術院の西原博史教授は「カメラに映った顔情報は個人情報。不正に利用されないように管理する責任がある」と警鐘を鳴らす。「日本の法整備は諸外国に比べ遅れている。撮影目的を明示した看板の設置などのガイドラインを整備し、適切に運用していく制度作りが必要だ」と話す。

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