笹島康仁

選挙と政治とその報道——外国人記者が見た不思議

2017/11/10(金) 8:45 配信

日本外国特派員協会(FCCJ)は、東京・有楽町のオフィスビルの20階にある。ガラス扉を抜けると、老舗ホテルのような重厚な空間が広がり、壁一面に著名人たちの写真。FCCJが開いてきた記者会見の様子だ。ここではさまざまな会見が行われ、その情報はここから世界に発信されていく。先の衆院選もそうだった。海外から来た記者たちは衆院選で何を見て、どう報じたのか。日本政治の今とこれからは「外の目」にどう映っているのか。FCCJ会長でシリア出身のカルドン・アズハリさんを皮切りに6人の記者にマイクを向けた。(大矢英代、笹島康仁/Yahoo!ニュース 特集編集部)

コロコロ政党を移る姿に「??」

写真で埋まる壁の扉が開き、小さな部屋に招かれた。アズハリさんは鮮やかなネクタイを結んでいる。日本での取材経験は30年近く。中東メディアの日本特派員として働いた経験を生かし、2006年には中東向けの通信社「パンオリエントニュース」を設立。日本のニュースをアラビア語や英語で配信している。

「衆院選の結果には驚きませんでした。自民党が勝ちましたが、それは他の政党のオウンゴールが原因。野党同士がまるで共食いをしているようでした」

カルドン・アズハリさん。「会長ではなく個人として」取材に応じてくれた(撮影:笹島康仁)

いわゆる「日本通」のアズハリさんにとっても、日本の選挙は「不思議なことばかり」という。それを今回、改めて見せつけられた。

「アラブでは、政治家が政党をコロコロ変えることはありません。政党がない国も、独裁の国もありますが。政党とは政策や理念に基づくもの。一度掲げた旗は、普通は降ろしません。しかし、日本ではある日突然、政治家が他の政党に移る。しかも、その理念が全く同じだったり、正反対だったりする。そんな国は他にありません」

FCCJのインタビュールーム。壁に掛かる写真は、歴代の会長たち(撮影:笹島康仁)

「(政党を渡り歩く政治家はまるで)ディナーについて話し合う人々のようです。誰かが『パスタにする?』と言ったら、別の人が『ノー、天ぷらにしよう』。で、『そうしよう。問題ないよ』と(政党を移る)。どうして有権者はこれを受け入れますか? 私はもうこの激動についていけません。疲れました。正直、興味も失いました」

————先日の衆院選はどこに注目していましたか。

「北朝鮮に絡んだ外交・軍事面での日米同盟です。軍事問題は中東に直接影響しますから。でも、憲法改正も含め、全ては日本国民が決めることです。戦争するのか、しないのか。自衛に限るのか、限らないのか。核兵器は違法か、合法か。それらが日本の選択だと言うならば、いいでしょう。けれど、『私たちのような平和国家になれ』と外国に言えていたチャンスを、日本は失いつつある。アラブの人々は、日本には戦争に加わらないでほしいと思っています」

「日本は報道の自由がある国。記者が殺されない」と話すアズハリさん(撮影:笹島康仁)

「憲法改正は理解できる」

取材に応じてくれた全てのジャーナリストが「野党の貧弱さ」を指摘した。FCCJのロビーに現れた「亞洲週刊」の毛峰(マオ・フェン)さん(60)も「二大政党制がユートピアの夢に終わったことが一番の印象」と言う。亞洲週刊は社会経済の記事を主に扱う国際雑誌。香港を拠点とし、中国共産党とは比較的距離を置いた報道で知られている。

「日本が完璧な民主主義になるためには二大政党制を輸入した方がいいです。一つの党が支配すると、腐敗や傲慢が出ますから。中国ですか? 日本とは国情が違い、単純に比べることは難しいです」

毛峰さん。総選挙の記事も担当した(撮影:笹島康仁)

————選挙の結果、与党は憲法改正の議論を進めそうです。

「今の憲法もいいと思いますが、時代に合わせた憲法をつくることは理解できます。中国も世界も、日本の民主主義の力を冷静に見ています。大切なのは方向性です。日中の互恵関係がないと、アジアの未来はありません。与党は(改憲の)方向性を、国民に対しても、外国に対しても丁寧に説明する必要があると思います」

「憲法改正は理解できる」という毛さん(撮影:笹島康仁)

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