結婚したくないのか、できないのか~揺れるキャリア女子

2016/5/10(火) 16:01 配信

「42.7%」。東京都に住む30代前半の女性の未婚率だ。この年代の女性の半数近くが結婚していない計算になる。その中には、男性と同じように仕事でのキャリアを積む一方で、結婚や出産もしたいと願う女性たちも多数含まれている。仕事と結婚の両立はなぜ、難しいのだろう。この4月に女性活躍推進法が全面施行されるなど女性の社会進出を求める声はあちこちで強まっているが、「仕事と家庭」という古くて新しい問題は、今も根本解決の兆しが見えない。「キャリアも結婚も」を目指す当の女性たちはどんな葛藤を抱えているのか。その思いを聞いた。
(Yahoo!ニュース編集部)

「仕事を選んで後悔しています」

JR東京駅近くで2月末、小さな婚活パーティーがあった。参加者は男女とも約20人ずつで、男性の参加条件は「大卒・年収600万円以上」。女性は職場で中堅となった20代後半から30代が集まった。

サービス業の企業で管理職になった女性は「今は後悔している」と明かした。濃いブルーの上着と真珠色のネックレスが似合っている。

「以前、付き合っていた方と結婚の話が出たときに、仕事が絶頂期を迎えていたのでそっちを選んでしまった。優先順位がそのときは仕事が上だった。今になって後悔しています。休みが合わなくてケンカになったこともありますね、土日も働いていることが多かったので」

彼女はいま、「後々は家庭に入るのも選択肢。両親に子供の顔も見せたいので、潔くやめてもいいのかな」と思っている。

東京都内で催された婚活パーティーでトークする男女(撮影:鈴木麻弓)

30代前半でIT関連企業に勤める女性は「もっと早くに結婚したいと思っていたが、仕事が結構ハードで出会いもなかった」と話す。男性に負けないようにと仕事を続けてきた。前の職場では、夜10時、11時の帰宅は当たり前。土日の出勤も厭わなかったし、会社も男女で差を付けていなかった。「同僚、後輩から見たら怖い女子社員だったかもしれません」。このままだと結婚できないと考え、転職して婚活に乗り出したという。

仕事と結婚の両立をどう考えていますか、と尋ねてみた。

「結婚というより出産を考えた時に休まなければならないし、復職後も希望どおりの部署に戻れるか分からない。技術が進めば、休んでいる間に置いて行かれるから厳しい。子育て中は時間に制約ができると思う。働きたいけど、そこは不安があります」

民間研究所の調査による「退職理由」。仕事と育児の両立は、働く女性にとっての難問だ

婚活パーティーに足を運んだ女性の声をもう1人紹介しよう。30代。仕事中心の生活を送るうち、家と職場の往復だけの生活になってしまったという。

「仕事をしすぎてしまった。気が付くと、周りは結婚してしまっていた」。仕事は充実しているから、もっと頑張りたい。それでも帰宅後には不安に襲われることがある。「我に返ると、ふとさみしくなることがあります。周りに『今仕事が楽しいから頑張っている』と言うと、逆に『強がっていない?』と言われたりもします」。

結婚して家庭に入ると、積み上げてきたキャリアがなくなるかもしれない。それは残念だと思う一方、結婚して違う働き方を模索することもありかもしれない、と考え始めてもいる。

婚活パーティーに参加した女性。開始前に自分のプロフィールを記入する(撮影:鈴木麻弓)

「仕事への理解」を結婚相手に期待

興味深いデータがある。国立社会保障・人口問題研究所の「第14回出生動向基本調査」(2010年)に基づく分析だ。それによると、女性が結婚相手の男性に求める条件は「家事の能力」が、「経済力」や「職業」を上回ったのだ。

家事の能力を「重視する」「考慮する」の合計は96.4%。それに対して、「経済力」はやや少ない93.9%だった。「職業」(85.8%)や「学歴」(53.5%)はさらに低い数字を示した。一方で、「仕事への理解」を結婚相手に期待する女性は9割を超えている。「私の仕事のキャリアをつぶさないで」という女性たちの叫びが聞こえるような数値だ。

国立研究所の調査によると、女性の大半が結婚相手に「家事の能力」や「仕事への理解」を求めている

「仕事のキャリア」と「結婚・出産」。その両立はできるのか、できないのか。東京都内で最近開かれたセミナー「女性リーダー養成コース」の会場で、参加者にマイクを向け、本音を語ってもらった。いずれも管理職やその候補の女性たちだ。

「結婚とキャリアアップを並行して考えられる環境ではまだないと思う。実際に結婚して、お子さんを出産された方は、(出産・育児の)休暇を取っている分、ステップアップが遅れると感じている。産休のブランクを考えずに済む環境づくりを(社会)全体として進めてもらいたい」

「環境が整わなければ(仕事と家庭の)両立は難しい。(自分のことを考えると)家庭を取らなければならないときに仕事を辞めるか、その逆か、真剣に悩んでいるところです」

大手企業で管理職をつとめる30代女性の自宅の本棚。ビジネス書籍がズラッと並んでいた(撮影:鈴木麻弓)

さらに、こんな声もあった。

「仕事を持っていたら家事を1人でやることは難しい。パートナー選びのとき、(自分の仕事を)理解してくれる方というのは大きなウエイトになってくる」

「出産となると、休まなければならない。戻った時に受け入れてもらえる環境を作っておかなければならないけど、中小企業だと難しい部分もあります。そこが課題です」

オフィスが集中する東京都心の光景。仕事帰りと思われる女性たちが慌ただしく行き来していた(撮影:鈴木麻弓)

結婚を「新たな苦労」と考える女性たち

働く女性の取材経験が豊富なライターの北条かやさんに「女性たちは何を考えているのか」を聞いてみた。北条さんには『本当は結婚したくないのだ症候群』という著書がある。

「結婚するのは当たり前というのは、なんとなく理解できるんですよね、今の女性たちも。そこから『しなきゃっ』という義務感まで行かない。大きなジャンプするところが、確実に昔と違っている」

北条さんによると、結婚への決め手となるのは「子供ぐらいしかないのではないか」という。子供ができたとか、子供がほしいと女性が強く望まない限り、「結婚しなきゃっ」とジャンプするところまでいかないのだ、と。

「結婚すると、基本的には自由がある程度制限されますよね? いま、ある程度働いて、ある程度時間とお金もあって、衣食住が満ち足りている。その状況で、新たな苦労に飛び込んでいくことに意義を感じない、と」

30代の独身女性のキッチン。結婚すれば、夫婦で家事をどう分担するかも問題になる(撮影:鈴木麻弓)

前職の外資系企業でのマーケティングや取材を通して、多くの若年女性にヒアリングしてきたライターのトイアンナさんに話を聞くと、現代において結婚は「プロジェクト化」している、という。

「納得のいく結婚を望むのであれば、能動的、戦略的に動く必要がある。それにも関わらず認識が薄く、『いい人がいれば』と漠然と考えて、具体的な戦略を立てられていない女性も多いのではないでしょうか」

SNSが普及したことで、結婚に対する「世間体」が可視化されていることも大きいとトイアンナさんは言う。

「友人やメディアからの情報が多すぎて、タイムラインに『素敵なラブストーリー』があふれ、理想の結婚相手の条件が細かくイメージできてしまいます。実際の相手が条件に当てはまらないと『妥協』と感じられることが多くなった」

小さな子供を抱いて歩く女性。働きながら育児をどうこなすかが、多くの女性の課題となっている(撮影:鈴木麻弓)

『「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?』の著書があるジャーナリストの中野円佳さんにも話を聞いてみた。企業社会の中で「勝つ」ことを目指す女性が多くなってきた、と中野さんは言う。

「キャリア志向が強い女性は、もともと競争意識みたいなものが強いので、企業社会の中で勝っていくことにコミットしている」

このように指摘した上で、中野さんは次のように続けた。

「自分が勝っていくこともそうだし、結婚相手になる男性に対しても高いスペックを求める傾向があって、結果的に自分よりも忙しい夫と結婚してしまう。そうすると、(男性は)育児に協力してくれなくて、(女性が仕事を)辞めていってしまう。そういう現象は起こっていると思います」

会社での競争に勝っていくために、仕事に役立つ勉強は欠かせない(撮影:鈴木麻弓)

仕事と家庭の両立「女性だけでは無理」

この分野に詳しい研究者は、どんな見方をしているのだろうか。東京大学大学院総合文化研究科の瀬地山角教授の研究室に足を運んだ。瀬地山教授は、「3高」から「3平」になったと言われる理想の男性像について、こう言った。

「その平凡な年収が600万円とか言うんですね。600万円以上稼ぐ男性は25歳から30代前半くらいだと5%くらいしかいない。それを平凡と勘違いし、ほとんどいない層に群がって、いい男がいない、と言っている。それが婚活市場の現実だと思います」

「そんなことを考えるより、夫婦2人で400万円ずつ稼いだ方がいい。そのときに400万円の彼がちゃんと家事育児に参加してくれることが、重要なんです。400万+400万、地方都市なら300万+300万でもいい。その方が実はよっぽど豊かな暮らしができます」

多数の人々が行き交う東京都内の駅。理想の相手との出会いは、すぐそこにあるのかもしれない(撮影:鈴木麻弓)

そうした話の上で、瀬地山教授は家事や育児に対する「男性参加」の重要性を強調した。

「仕事と家庭の両立は女性だけがやるものではなくて、男性も含めて考えるべきもの。(女性が)仕事をしていこうと思ったとき、それをきちんと支えてくれるパートナーがいるのかどうか。今の女性はそこをすごく重視しています」

※冒頭と同じ動画

[制作協力]
オルタスジャパン
[写真]
撮影:鈴木麻弓
写真監修:リマインダーズ・プロジェクト 後藤勝

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